05:ハグで子供は出来ません!
「まぁとりあえず、簡単に言えばハグ程度では子供は出来ないってことだけ覚えていてくれるかな?」
「ハグ⋯⋯」
「程度⋯⋯」
「ボク、勇気出したのに⋯⋯」
「私も死ぬほど心臓バクバクしてたのに⋯⋯あれがその程度⋯⋯」
「大丈夫かなこの二人⋯⋯」
私とリンくんがショックを受けていると、うめちゃんはため息を吐きながら手を軽く叩いた。
「はいはい、ショックを受けるのは良いけどそれくらいにね?別に仲が悪くなる訳じゃないんだし、むしろこれからもっと深めていけるんだからむしろお得って思っておいたらどうかな?」
「そ、そっか!ちなみにハグってどれくらいのレベルなの?マックスが10だとすると!」
「た、たしかにボクも気になります!」
私は興味本意で聞いてみると、リンくんも気になるようで私に同調してくれます。
「2」
考える様子もなくうめちゃんはそう答えます。
2、ありえないくらい低い数字です。
「「へっ?」」
「手を繋ぐが1とするとだけど、2くらいかな」
「手を繋ぐのが1!?!?あれ8くらいじゃないの!?」
「むしろそれ以下が気になるんだけど!?」
「いや、二人きりで会うとか⋯⋯」
「一緒にご飯食べに行くとか⋯⋯」
「二人にとってハグはそんなにエッチなの!?!?」
「そうだけど!?」
「そうですけど!?」
「⋯⋯はぁ、そこはいいや。後で調べてね?絶対だよ?」
うめちゃんに念押しされて首を縦に振るしかありません。何故か一緒にリンくんも首を振っています。可愛い。
「幼稚園児でもあるまいし⋯⋯」
「幼稚園児でもハグするの!?」
「もういいよその流れ!?」
「とりあえず二人で夜に街を散策しようって言ってたじゃん?美味しいご飯のお店とかも知りたいし」
「⋯⋯そういえばそうだった」
言われてみれば夜はお出かけする予定だったんだ⋯⋯リンくんとの事が色々と衝撃的すぎて完全に忘れてたよ。
「二人ともお出かけですか?ボクはこの街にずっと住んでますし、ある程度なら案内できますよ?」
「そういえばさっきそんなこと言ってたね⋯⋯でも良いの?あたしがいても」
「それはどういう⋯⋯?」
意味深なことを言ったうめちゃんに対してリンくんは首を傾げながら聞き返します。
「二人でデートとかしたいんじゃないの?」
「「で、でででデート!?!?」」
な、何を言っているのかなうめちゃんは!?
「はよ結婚しろ!お似合いすぎ!」
「したいかしたくないかだったら⋯⋯したいですけど⋯⋯でも、街の案内も大事かなって思って⋯⋯」
リンくんは私とデートをしたいと言ってくれた。顔が赤くなってるから、多分恥ずかしいのかな?可愛い⋯⋯
「デートは今度ゆっくりしよ?
私、こう見えていつでも時間あるよ!」
「ふぇっ!?ゆっくりですか!?」
「うん、だから今日は一旦お出かけってことで。案内お願いしても大丈夫かな?」
「もちろんですっ!
おすすめの場所とかいっぱい教えてあげますね!」
「頼みにしてるね!」
「⋯⋯うーん、やっぱあたしいない方が良いんじゃ」
「そんなことないよ!?」
「そ、そうですよ!」
うめちゃんはそんなに私達を二人きりにしたいのかな⋯⋯?
「まぁ折角案内してくれるって言うんだし、お願いしよっか」
「そ、そうだね⋯⋯」
そして、外へ出るとタクシーが待っていた。
「⋯⋯やばっ、時間かかっちゃったかな」
「そこまで経ってはないと思うけど⋯⋯」
「あっ、タクシーですか?」
「うん、私達まだ車を用意してなくて」
「車を買う予定があるなら車屋さんも案内しましょうか?」
「うーん、優先度は低いけど一応知っておきたいかも」
「了解しました!」
そしてタクシーに乗り込み、運転手さんに遅かったことを謝ると、よくあることだし待機料金ももらってるから気にしないでと言ってくれた。少し気持ちが軽くなったかも。
「まずは何が知りたいですか?」
「うーん、やっぱりスーパーとかお買い物する場所かな?」
「それだったらあそこがおすすめですね!」
リンくんは目星がついていたのか、運転手さんに場所を告げると、タクシーはその場所へと向かい始めた。
そんなこんなで色々と街を巡っていると、気が付けば夜も良い時間。
「とりあえず、お買い物関係はこれくらいで大丈夫だと思います!」
「いやー本当色々知っててくれて助かったよー」
「うん、物知りさんだねリンくんは」
「えへへ、お役に立ててよかったです!」
どんなタイミングでも可愛い反応をしてくれるリンくん。可愛いすぎて生きるのが辛くなってきます。
「それじゃあお礼にご飯でもご馳走しちゃおうかな!
美味しいお店とか知ってる場所あるかな?」
「うーん、普段は自炊をしているので⋯⋯」
「そういえば今日お家に行った時もエプロン着けてたもんね?」
「えっ!?エプロン着けてるの!?かわいー!」
「そ、そうですか⋯⋯?」
「うん、私も可愛いと思うな」
「え、えへへ⋯⋯おねーさんにそう言われるとなんだか嬉しいです」
「きゃ、きゃわいすぎるぅ⋯⋯」
「詩音ちゃんもうメロメロじゃん⋯⋯」
「ぼ、ボクがメロメロにするって言いましたからね!」
「されちゃった⋯⋯」
「それなら!運転手さん、おすすめのお店とかありますか?美味しいなら値段も気にしなくて大丈夫なので!」
うめちゃんが運転手さんにそう聞いてみると、思い当たるお店があるらしく、そこへ乗せて行ってくれることに。
そのお店は少しお値段は張るものの、かなり美味しいパスタを出すお店ということで有名なんだとか。少し楽しみだね。
「そ、そんなところにボクが行っても良いんでしょうか⋯⋯」
「良いの良いの!⋯⋯あんまりひけらかしたくはないけどお金にはそこまで困ってないからお姉さん達に奢られちゃえ!」
「そうそう、私もお仕事はしてるけど趣味みたいなものだから⋯⋯」
「ほぇ⋯⋯おねーさん達すごいんですね⋯⋯」
「ふふっ、そんなことはないよ?」
「そうそう!運が良かっただけ!」
「じゃ、じゃあご馳走になっちゃいますね?」
「うん!」
そうして私達は夜の街に出掛けて行った。
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