可愛いインキュバスくんのいる生活
二兎凛
01:ドアの先の可愛い小悪魔
私は鈴代詩音、現在23歳独身のそんな私はフリーライターをやっている一般人です。
今日はお仕事では無く、私用で電車に揺られながらとある場所へと向かっているのですが⋯⋯その私用とはなんと引っ越しなんです。
事の始まりは今から3年前、当時ブラック企業で働いていた私が親友のうめちゃんに唆されて始めた仮想通貨でした。当時1コイン1円だったその通貨は気が付けば1コインがもの凄い値段を付けることに。そして今回、思い切って仕事を辞めてフリーランスへ転向することに。仮想通貨も全部売ってはいませんが持っている分もまだまだ上がっています。税金がちょっと怖いですが、全部売らずに少しずつ売れば税金対策になるんだとか。仕事のお金以外で必要になったら少しずつ換金する日々を送っていたそんなある日、うめちゃんがとある噂を聞きました。
G県にあるとある市では引っ越してきた女性の初年度の市民税が免除になり、その市の人と結婚してそこに住めば住んでいる間税金が免除になる制度がある⋯⋯そんな甘い噂を。
私とうめちゃんは真偽を確かめると、それが真実である事を知りました。そして、デメリットも。
そのデメリット⋯⋯それは——
「この街の住人と結婚する事だったよね?」
「そうそう!詩音ちゃんさ、ショタっ子好きだったでしょ?」
「もちろん大好きだけど⋯⋯」
何を隠そう、私はショタコンです。⋯⋯と言っても、現実のショタに手を出すことはしませんが。
「この街に住んでるの亜人種のインキュバス族らしいんだけど⋯⋯ショタが多いって噂なんだよ」
「インキュバス族?」
「そっ、淫魔って言われる類いの」
「あー、女の淫魔がサキュバスで、男の淫魔がインキュバスだったっけ」
「そうそう!そのインキュバスが現代にまだ生きていたらしいんだけど、それを保護してるのがここ、院久場(いんくじょう)市!」
そう言いながらうめちゃんはもらったパンフレットを指さす。
「うへへへへ⋯⋯どんな子がいるのかなぁ⋯⋯」
「というかまずは1年以内に相手が見つからなかったら意味無いんだから、気を付けないとだよ?」
そう、何も無条件で税金が安くなる訳じゃ無い。
うめちゃんからの情報も入れて考えてみると、インキュバスという種族の人達を受け入れられてかつ、こっちも受け入れてもらい、お互いに家族になっても良い。そう思える、思ってもらえる人だけがこの街の恩恵を受けられると言うのだから。
「女だからってすぐに気に入られるほど甘くはないって事だねー」
「そうそう、結局は私達の中身も大事なんだよ?」
「それもそっか⋯⋯」
「とりあえず、住む予定の場所見にいこ?」
「うん!行こ行こ!」
駅から出てタクシーを乗り、私達は住む予定の場所へと向かいました。
家電とかも全部揃えてくれているとの事で少しの荷物で引っ越せるのは楽で良いですね。
「もしかしてこの広いお家があたしの家?⋯⋯住所も合ってる⋯⋯それじゃあたしはここで降りるね!詩音ちゃんのお家も良いところだと良いね!」
「うん!それじゃまた夜に!」
「気をつけてねー」
うめちゃんはタクシーから降りると、手を振りながら私を見送ってくれた。
「⋯⋯うめちゃんのお家大きいなぁ」
そんな事を呟きながら、私も目的地へ向かいます。
今の私は税金だとかそんなものはどうでも良くて、新しい環境というものが楽しみで仕方がなかったり。
「(可愛い子に出会えたら⋯⋯嬉しいな)」
そんな少しの下心を持ちつつも、私はウキウキとしながら新居へと向かいました。
♢
「お、おぉ⋯⋯」
私の住む予定の家に到着すると、そこは新居の大きなお家でした。どうやらこの街は土地が余っているようで、一軒一軒の家が大きめです。今まで東京に住んでいた私からすればこの広さは驚異的で、思わず変な声が出てしまいました。
「東京なら物凄い金額してもおかしくない広さだ⋯⋯」
今まで1DKの広めのお部屋に住んでいましたが、家賃が高くなかなか厳しいものがありました。
それを考えてもこの家はかなり広く、1階建とはいえ、5LDKは流石に広いです。しかも一部屋一部屋が大きく、生活空間もかなり広いです。
3部屋には何も入っていなく、自由にカスタマイズ出来ますし、一部屋には本棚やデスクのある書斎、大きなベッドのある部屋などすぐに住めるというのも納得の内容。しかも新築だったらしく全てが新品。
「ほ、本当に私が一人で住んでも良いのかな?」
中に誰かがいるわけでも無いですし、問題があるわけもなく。
「⋯⋯えへへ、こんな広いお部屋に住むの夢だったんだ」
趣味の部屋を作っても良いし、最新のシステムキッチンでお料理をするのも良い。やりたいことが出来る、そう確信させられる最高のお家です。
「明日から楽しみだなぁ⋯⋯」
とりあえず今日から住むと言う事もあって、水道や電気、ガスなどの開通をしてもらう予定だけど、まだ約束の時間までは時間があります。
「何も無い中にずっと居ても暇だし、お隣さんに挨拶でも行こうかな?」
隣を見てみると、こちらと比べると少し古いながらも大きなお家があります。どんな人が住んでるかは分かりませんが、お隣さんになるんですから、挨拶はしておくべきでしょう。
「引っ越しそばと、最悪そばアレルギーだといけないからおうどんも用意しておいたしこれで準備もオッケーかな?」
期待と不安を覚えつつお隣さんのお家へ向かうと、私はインターホンを鳴らします。
すると、ピンポーン、とインターホンが鳴ります。
『はーい!どなたですか?』
中性的で可愛げのある声が聞こえてきました。
「隣に引っ越してきたものですが⋯⋯良ければ引っ越しそばを持ってきたのでいかがですか?」
『本当ですか!?ご丁寧にありがとうございます!
今開けるので少し待っててくださいね!』
そう声の主は言うと、少しバタバタと音がするとすぐにドアを開けてくれた。
そしてドアが開いた先にいたのは⋯⋯
「お待たせしました!
どうぞ上がってください!」
エプロンを着た、悪魔の尻尾のようなものが生えた可愛い子でした。
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