003. 中学生時代の俺たち

 中学生時代は普通、だったと思う。


 俺の思っている普通と世間一般の普通がどこまで一致しているかは知らないけれど。




 小学校から中学校になると校区が広がった。

 近くの小学校が三校ほどの地域が中学校の校区だった。

 校区が広がり別の小学校卒業生が一緒に学ぶようになった。

 中学生になったことで新しい友達ができた。

 一番仲良くなった最初の友だちは二人だった。


 一人目は石橋いしばしあおい

 葵は小学生から中学生になり周りの女子が男子を意識するようになる年齢となったのに葵は委縮しないで女子だけではなく男子にも話しかけることができる胆力の持ち主だった。

 最初は俺も数人いる中の友だちの一人だと思っていた。

 そう思っていたのは俺だけだったみたいだ。

 葵とは恋愛関係にならないと思っていた。

 しかし、中学二年生になると葵の方から告白をしてきた。

 でも、俺は告白されても付き合うということの意味が分からなかった。

 様子を見ていると友だちというのと彼氏といるのとそんなに変わりないように思えた。

 それに葵が思っているようにデートなどはできないと言い切り葵の告白を断った。

 けれど葵は諦めなかった。

 葵は何度も懲りもせず俺に告白してきた。

 結局、俺は告白してくる葵に嫌気いやけが差して仕方なく条件付きでO.K.してしまった。

 このことで俺は後悔することになるとは中学生時代の俺には判らなかった。


 中学生くらいの恋愛は小学校を卒業したばかりの年齢だと男子と女子、関係なく仲良く遊ぶということの延長くらいだと思っていた。

 俺としても学校の登下校を一緒にするとか学校で多少仲良するぐらいのことでいいと思っていたから、俺から積極的に何かをする気持ちは全くなかった。


 葵の方からは何度も俺の家に遊びに行きたいと言われた時は絶対に返事をしなかった。

 俺からは葵の家に遊びに行くこともなかったし、葵から誘っても承知しなかった。

 中学三年生になると更に葵からの要求が激しくなった。

 そんなことが続いて俺はうんざりしてきた。

 ちょうどいい言い訳に小学生の時から姉ちゃんの仕事で出張の時にはどういう理由で許可がもらえたのかは分からないが俺も同行していた。

 そういう日常だった俺は姉ちゃんの用事を優先することにしていた。

 高校受験のことを考えるようになると俺の気持ちの中では葵と付き合うことに余裕がなかった。

 中学三年生の夏休みには葵たちから遊びに誘われることばかりだったけれど呆れてしまった。

 受験生なのに肝心な受験勉強をすることよりも遊ぶことを選んでいたからだ。

 だから俺は遊ぶための誘いはすべて断った。

 そういうことを何度も繰り返した所為せいで葵は俺に対して不満を募らせていったようだ。

 けれど直接葵から俺に不満を言うことはなかった。

 ただ自分の意見が通らずに俺が反論すれば葵は眉間にシワを寄せて俺を睨みつけてきた。

 こんなことばかり繰り返していたから俺の葵に対する気持ちは中学校卒業の時点でゼロ…いや、マイナスだった。

 それでも俺は葵との関係をズルズルと高校まで続けた。






 二人目の友だちは杉本すぎもと陸哉りくや

 中学校に入学して同じクラスになったのがきっかけだった。

 陸哉は中学・高校と男子バスケットボール部に所属していた。

 入学式から数日後、中学校の部活動の見学をしようと陸哉から誘ってきた。


 中学時代の運動部は顧問になった先生の影響で左右されるが適当に選ばれた感が否めなかった。

 ただ放課後の活動で事故を起こさないためという理由の顧問が多かった。

 だから下手すると担当になった部活動のスポーツのルールを知らない先生もいた。

 そんな中で時間を作り担当になった部活動のことを知ろうと勉強をする先生と仕方なく割り当てられた部活動場所に活動時間だけいる二通りに分かれた。

 後者ははっきり言って“ハズレ”の部活動顧問だった。


 陸哉が誘ってきた男子バスケットボール部はどちらかと言えば前者の部活動だった。

 顧問になった先生は新田にった聖一郎せいいちろう先生だった。年齢は三十歳だという。

 新田先生は中学校・高校で部活動はバスケットボール部だったらしい。

 だから今のバスケットボール部の活動時間はかなり厳しい練習をしているらしい。

 新田先生が男子バスケットボール部の顧問になってから強くなったという。

 ここ最近いつも県大会上位に学校の名前を連ねていた。

 そのこともあって陸哉はバスケットボール部でレベルアップしていきたいと思っていたようだ。

 陸哉は休日も関係なく練習になることも嫌がることなく参加するだろう。

 だけど俺は家族は姉ちゃんと二人だけ。忙しい姉ちゃんと分担しているとはいえ、家事などのやることが多いから俺は家のことを優先させたい。

 そう考えた俺は陸哉の部活動見学というかバスケットボール部への誘いは断った。

 このことで陸哉との間には一時的にちょっとした気まずさがあったがそれはほんの少しのことだと思っていた。

 そう思っていたのは俺だけだったみたいだがそれが解るのは高校生になってからだった。

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