002. 憂鬱な日常生活
姉ちゃんと俺が生活する部屋は武田の家の中心であるリビングからかなり離れた位置にある。
冬になると寒々とした廊下を歩くのに部屋までの距離に嫌気がさす。
春だといっても朝と夜中は冷える。
俺は欠伸をしながらキッチンで野菜スープと目玉焼きとトーストを作って部屋に持って行く。
部屋の扉を開け部屋の中にあるテーブルの上に朝食を置いた。
「おーい、起きる時間だよー」
「う、うーん。あと十分」
「姉ちゃん、もう起きないと会社の始業時間に間に合わねぇよ」
「あ~、うーん」
姉ちゃんを起こしながら姉ちゃんの掛布団をはがした。
「う~、ざむい!」
俺は呆れた顔をして腕を組み姉ちゃんを見た。
「姉ちゃん!いい加減にしないとマジで遅刻だよ」
姉ちゃんもやっと布団から起き上がり大きく伸びをした。
「おはよ~」
「はぁ…。早くしてよ、姉ちゃん。飯が冷める」
「
姉ちゃんは仕事をしている時には絶対に使わない口調で間延びした話し方で目が笑っていない顔だった。
「あっ、お、おはよう、ございます」
「うふふふっ」
挨拶をちゃんとしないと恐いほど姉ちゃんに叱られる。
一度挨拶をしなかった時には姉ちゃんに両頬をつままれたり、頭にチョップをくらっていた。
小さい頃は鬼のような顔をした姉ちゃんがチビリそうなくらい恐かった。
もう二度とあんな顔をした姉ちゃんを見たくないと思った。
余計な時間を取っていたら俺まで学校を遅刻してしまう。
朝食を作るついでに弁当も二人分作っていた。
俺はその弁当を朝食の横に置いた。
「姉ちゃん、弁当はここに置いとくよー。…じゃぁ俺、学校行くから」
「うーん、わかった~。ありがとう!いってらぁ~」
寝惚けたままの姉ちゃんが間延びして答えた。
俺は自分の分の弁当をハンカチに包んで教科書を入れたカバンを持つとまだボーッとしている姉ちゃんのいる部屋を出た。
「はぁ~」
家の玄関を出ると俺の心は裏腹に青く晴れた空を見上げた。
学校へ行くことに少し嫌な気持ちになっていた。
そんな顔を姉ちゃんに見せたくなかった俺はため息を
ゆっくりと学校へ向かって歩き出した。
学校に向かう足取りはとても重かった。
姉ちゃんと俺は十五歳の年齢差があった。
十五歳も差があると姉弟というより親子に間違われる。
実際、姉ちゃんは交通事故で亡くなった父さんと母さんの代わりに俺を赤ちゃんの頃から育ててくれた人だ。
自慢の姉ちゃんだ。
「はぁ…」
教室に入って自分の席にドカリと座るとまた溜息を
「おっはよー!どうしたんだよ、溜息なんか
元気に朝の挨拶を俺にしてきたのは
宮原真太郎は高校に入学して同じクラスになった友だちだ。
俺は松井で真太郎は宮原だから出席番号順に並ぶと前後の席となったから授業前のちょっとした時間に話すようになって真太郎と友だちになった。
「あぁ…、真太郎。おはよう」
「元気ないなぁ、何かあったのか?」
「別に…。ただ何となくやる気がないだけだ」
「ふーん、そうか?まぁ、無理に話は聞かないけれど、
「う、うん。真太郎ありがとうな」
「おうよ」
そんな話をしていると他のクラスメイトたちが登校してきて教室に入ってきた。
「おはよー」
「あっ、おはよう」
「はよー」
明るく挨拶をするクラスメイトが次々と席に着いた。
今日もつまらない一日が始まった。
「はぁ…」
やっぱり溜息が出てしまった。
午前中の授業は何とか終了した。
昼休みになると真太郎のほかにもう一人、俺の席の方に近づいた。
クラスメイトである
同じクラスで一緒に授業を受けている弟の雄馬よりほかのクラスの兄の涼真の方と何故か仲良くしている。
「わりぃな…今日は俺、彼女と飯を食う約束をしたんだわ。だからすまん!」
真太郎はサッカー部に入部したからかなり女子に注目されていてモテる。高校に入学してすぐに彼女ができたみたいで最近の真太郎の優先順位は仲の良い男友だちより彼女になったようだ。
「ごめんっ!俺も今日は部活の仲間と夏合宿の話する約束しているから一緒に食べれない」
「そっか…わかった」
高校に入学してから俺と仲良くなった人たちは意外と多かった。
それでも真太郎と涼真以上に仲の良い人はいない。
小学校・中学校からの友だちの中で同じ高校に入学した人は数人いたが少し距離をおいている。
「はぁ~…」
今日、朝から何度目かの深い溜息を
(アイツらとは関わりたくないな…今日はボッチ飯か…)
朝作った弁当を鞄から出すと席から立ち上がった。
教室を出て一階にある購買部へ向かった。
飲み物を買って体育館裏へ行く。
誰にも見られずに体育館裏に着くと座れそうな場所を探した。
入口とは別に直接出入りできる扉があってその扉の外側には階段があった。
その階段の場所は体育館裏なのに日当たりが良くて暖かかった。
俺はそこに座りまた溜息を
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