番外編

番外編 オニロ先生の闇

ある日の夜のこと・・・

      「オニロ先生ってどんな子供時代を過ごしたんですか?」

オニロ先生 「・・・聞く・・・?ちょっとグロテスクっぽくなっちゃうけどいい?」

      「そうですか・・・でも、どんなことになっていようと、何とか受け流します。」

             ~27年前~

僕は、生まれたころから悪夢にうなされてたと思う。僕の元母は僕のことを『望んだ子供じゃない』って言って、僕と父さんを残してどこかへと消えてしまった。

父さんはいつも周りから「シングルファザー」と呼ばれていた。僕の父さんは、仕事の合間を縫っては僕の面倒も見てくれた。でも、そんな安泰な日はそうは続かなかった。

             ~20年前~

僕のお父さんは「ひき逃げ」に遭ってしまい、死んでしまった。僕の胸はぽかんと穴が開いた気がした。僕には何もなくなっちゃった。これからどうしたら良いんだろう・・・?そんなことが頭に溜まっていき、しばらくは「生きていけないかも」っていう恐怖が僕の心を蝕んでいった。しばらくして、僕は親戚の家で育ててもらうこととなった。親戚の家に行って、少しはマシになるかと思ったけど違った。

おじさん  「カンジ、お前ってやつは男のくせに使えないやつだ!もっと、ハルを可愛がってやれ!」

おばさん  「そうよ、そうよ!だから、あんたのような子供を受け入れるんじゃなかった!」

この通り、僕のことをバカにしてきた。僕はその時、自分ってバカで何もできないやつだって責め続けた。そして、だんだんと自分に自信を持てなくなってしまった。そして、僕の愛情はすべて、いとこのハルへとやっていた。僕と同い年ぐらいなのに、なんか腹が立つ。でも、僕は我慢して家の手伝いやハルの機嫌取りをしていた。ガミガミとおじ・おばに叱られてうっとうしくなった。

             ~17年前~

僕はそのような家庭に耐えられなくなった。僕は、熱帯夜の中、急いで支度を整えて家出をした。そして、じいちゃん、ばあちゃんの家へと走って向かっていた。以外にもいい運動になるぐらいの距離だったよ。のろまでも頑張って走った僕は、ようやくじいちゃん、ばあちゃんの家に着くことができた。ついた僕は何度もインターホンを鳴らしまくった。そして、何回か押していくうちに、ようやくその音に気が付いたじいちゃんがドアを開けてくれた。

じいちゃん 「えっ、カンジ?!どうしてここへ?」

カンジ   「じいちゃん、僕、あのおじさんちにはいられないよ・・・」

僕は泣き崩れてその場に縮こまった。

ばあちゃん 「どうしたの、おじさんちにいられないって、どういうことなの?とりあえず、中に入って。」

そうやってじいちゃんたちは僕を中に入れてくれた。そして涼しい部屋の中、事の隅から隅まで話した。しかもちゃんと証拠を押さえられるように、あの声が入ったボイスレコーダーも一緒に渡した。すると、じいちゃんは、

じいちゃん 「そうか、そうか、カンジ。辛かったなぁ・・・」

ばあちゃん 「やっぱり、タクトたちに任せたのが間違いだったわね。あの子、あんなにお願いしてたのに、結局は自分の駒にしかしてなかったわ・・・」

じいちゃん 「よし、あとはじいちゃんたちに任せて、カンジは早く寝なさい。疲れただろう。」

そうやって僕は今まで初めて安心して眠りにつくことができた。

そして、翌日。じいちゃんちに電話がかかってきた。それで

カンジ   「もしもし・・・?」

おじさん  「おい、カンジ!どこ行ってんだ!今すぐ帰ってこい!」

カンジ   「ヒッ!」

僕は恐ろしくなって急いで切った。

じいちゃん 「誰からだった?」

カンジ   「・・・おじさんから・・・」

そう言っているとまた、電話がかかってきた。

じいちゃん 「待って、今度はじいちゃんに変わって。」

そういうと、じいちゃんは僕の代わりに電話に出てくれた。

おじさん  「あ、父さん。俺のカンジ、そっちに行っているらしいな。すぐ迎えに行くよ。」

じいちゃん 「お前はもう来なくていい。」

じいちゃんは今までより鬼の面になっていった。

おじさん  「えっ?」

じいちゃん 「カンジから事情は聴いた。お前、ろくにカンジの世話をしていなかったようだな?!」

おじさん  「えぇっと、それは、カンジのでたらめです!」

じいちゃん 「ちゃんと証拠もあるんだが?!」

そういうと、じいちゃんは僕が昨日持っていったボイスレコーダーの音声を流した。

      「カンジ、お前ってやつは男のくせに使えないやつだ!もっと、ハルを可愛がってやれ!」

      「そうよ、そうよ!だから、あんたのような子供を受け入れるんじゃなかった!」

おじさん  「あっ・・・」

じいちゃん 「これでも、でたらめっていうか?!」

おじさん  「ごめんなさ~い!もうしませんので、ゆるしてくださ~い!」

じいちゃん 「もう遅い!」

おじさん  「・・・は?」

じいちゃん 「もう役所に手続し終えた。もうすぐ家庭裁判所で親権のことについて話し合うつもりだ。」

おじさん  「父さん!それはやりすぎだって~!お願いします!心改めますんで、取り消してくださ~い!」

じいちゃん 「もういい。」

そうして、じいちゃんとの電話が終わった。そして、後日、親権のことについて話し合い、見事、じいちゃんたちの家に住めるようになったのだ。

オニロ先生 「ってことがあって、僕の今があるってこと。今の僕は1人立ちをして、ちゃんと生活しているよ。」

      「へぇ・・・でも、良かったですね!」

オニロ先生 「うん、本当に良かった。」

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