ナズナの3夜目 美しいって・・・?

「・・・美しいってなんだろ?」私は最近こんなことで悩むようになった。何でかって?それは・・・

             ~四時間前~

 学校で美術の授業が始まった。自分は、全然その才能を小学校で伸ばせななかった。・・・ううん、そもそもそんな感覚センスなんて私にはない。だから、小学校の図工と同じとってもつまんない教科。そして、一番来てほしくない教科なんだ。どうせ、私のくだらない作り物をみてクラスメートは

「ナニコレ?意味わかんないんですけどw」

「もう少しマシにできなかったわけ?」

「全然美しくないし、芸術作品じゃなくて、もはやゴミなんですけどw」

 なんてクレームを言ってくるに違いない。自分が生み出したゴミは黒歴史としか残せるところがない。あぁ、もう嫌だ、もう嫌だ。そんな時、頭が真っ白と、そして視界は真っ暗になった。

 美術の先生「な、ナズナさん?!」

 その場にいたクラスメートの協力もあって、急遽保健室へ。そして、意識が戻った時、そばにいた一人のクラスメートが

 クラスメート「先生、ズっちゃん、起きました!」

 養護教諭  「ナズナさん、家の人に連絡しておいたので今日は家に帰って休んでください。」

 先生の話によると美術の授業が終わって次の授業まで起きなかったという。

 そうして、ばあちゃんが車で迎えに来てくれた。そして、私は今日、学校を早退した。


 そうして今、こうしてコンプレックスとか美しいって何のことか分からなくなってきてる。そう考えるとやっぱり頭がぐちゃぐちゃして、絵の具を色々混ぜ合わせたみたいに自分の心が何色か分からなくなってきた。そう思うとまた、あの場所が思い浮かぶ。思い浮かぶだけじゃない、行きたい。あの場所へ。

                ☾

 夜の身支度が終わって、布団に入った。そして、あの場所へ、心のコンパへと向かった。そして、ある違和感に気づいた。部屋の番号はいろんなマークやイラストに切り替わっていた。スタッフによれば、番号よりマークの方が分かりやすいからだという。今回私は「ランダム」を選んだ。すると、逆三角形の割には歪んでるようなマークがついている部屋に案内された。

    「どうも、いらっしゃい。」

 ちょっとやけに暗そうな人が第一に話しかけてくれた。この人はコウキさんという美大生らしい。でもその割には質素だな・・・

    「どうも、私はアイカって言います。高校生で、家は中華屋さんやってます。どうぞよろしく~」

    「俺はナオキ。ゲームとパソコンが好きなんだ。よろしくな。」

 ナズナ 「ど、どうも・・・私は、ナズナって言います。よろしく・・・」

 ナオキ 「で、ナズナちゃん、話したいことがあるからここに来たんでしょ?」

 アイカ 「私たちでよかったら話聞かせて。」

 ナズナ 「あ、はい。実は・・・」

 私は語りたい分、語れる分だけめいっぱい吐き出した。

 アイカ 「なるほどね・・・本当の美しさが分からなくなってきてるってことか。」

 ナズナ 「はい・・・こんなこと、美大生のコウキさんが聞いても無意味ですよね・・・」

 そうやって苦笑していると、思いもよらない言葉が返ってきた。

 コウキ 「そんなことないよ。」

 ナズナ 「えっ?」

 コウキ 「実はとある有名な画家は最初、変な絵だって酷評を受けていたんだ。誰だと思う?」

 ナオキ 「そうだな・・・ピカソとか?」

 コウキ 「そう!その人も言われていたみたいだよ。ほかにもいるんだけど誰だと思う?」

 ナズナ 「う~ん、ダリとか?」

 コウキ 「そう!その他にもルソーとかなんか世界一下手な画家なんて言われてたみたいなんだよ。あと、ムンクの叫びで有名なムンクも、その絵は最初、酷評ばっかだったみたい。」

 アイカ 「つまり、画家の中にも絵下手なことで売れた人もいるってこと?」

 コウキ 「そう!まさしくその通り!芸術や美術っていうのは、見たものをそのまま絵にするだけじゃないんだよ。自分が思ったようなそのイメージを自分が飽きるまでどんどんぶつけていく。これが僕が思う美術や芸術なんだと思う。」

 ナズナ 「は、はぁ・・・?」

 コウキ 「つまり、美しさっていうのは誰かからの評価だけじゃなく、自分の評価も合わさって美しいって感じるんだよ。だから、周りから汚いとか、ごみクズとか言われたとしても、誰かが美しいって思えれば、美術品、芸術品に命が吹き込まれていくんだ。だから、美術に対して考え方が変わればうっとうしくなくなるんじゃない?」

 ナズナ 「なるほど・・・自分の価値で決まるのか・・・なんか自信持ってきたかも!」

 コウキ 「そうそう!芸術は爆発っていうし、とっさにアイディアが浮かんだらすぐ描きだす、それが芸術家なんだよ。」

 アイカ 「私も絵が上手じゃなくってみんなから笑われたことはあったけど、唯一、美術の先生は自分のことを認めてくれて、手直しに協力してくれた。だから、ある意味、心を開放する教科なのかもね。」

 ナオキ 「心を開くか・・・俺の場合、最初は引きこもりで誰とも信じ会えなかった。でも、唯一話せたのは、小さいころから近所に住んでた幼なじみ。その子を通じて今、ここにいるのかもね。ナズナちゃん、最初は難しいかもしれない。でも、次第にその価値を認めてくれる人がいるってことだよ。だから、自分に自信をもってみな?」

 ナズナ 「自分に自信を持つ・・・そうか、憂鬱になってた原因ってこれだったんだね!なんか、すっきりした感じがする。本当にありがとうございました!」

 そろそろお帰りの時間・・・名残惜しい気持ちは十分あるけど、目的は果たせたし、大丈夫!そうして、私は現実の世界へ戻った。

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