花粉症の彼女
須堂さくら
春から夏のふたり
『春』
「春は嫌い」
真っ赤になった目とガサガサの鼻の私が言うと、あなたは困った顔をして、瞼にそれぞれキスをくれた。
熱を持った瞼に、少し冷たい唇が気持ちいい。
それから、ほんのり赤くなって唇にも一つ。
恥ずかしがりのあなたからのスキンシップが増えたから、嫌いな春が少しだけ好きになった。
(2022/03/27)
『触れる理由』
「腫れも引いたかなぁ」
鏡を見ながら君が言う。花粉症の時期も過ぎ、痛々しかった君の肌は、随分綺麗になった。同時に君に触れてもいい理由が無くなった気がして、少しだけ残念だ。
ふと鏡から顔を上げた君が僕を見て、笑ってくっついてくる。察しの良すぎる君に赤くなりながら、僕は君を抱きしめた。
(2022/04/26)
『蛍』
急に蛍が見たくなって、夜のお散歩と洒落込んだ。
ぬかるんだ地面が危ないからって手を差し出してくれたあなたは、いつもと同じ赤い顔かな。
ふわ、ふわ、瞬きながら光が揺れる。一匹があなたの肩に止まって、ほんの少しの間柔らかく横顔を照らした。
ゆっくりと幸せをかみしめる。また来ようね。
(2022/05/14)
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