挿話 光と闇の四戦士
これで何度目かの地鳴りが聞こえる。
ハイエルフの小娘プリシラは両手で握った杖を胸もとへ抱き寄せたまま、不安そうな面持ちを崩さずに窮屈な洞穴をオレのあとに続いて進む。
パーティーの最後尾を守る
「ヴァイン、この邪悪で強大な闇の力がダ=ズールなのか?」
一行を導くオレに、マルスが
「ああ。だが、大邪神ダ=ズールは〝闇〟そのもの。今ここで感じられる闇の波動をコース料理で例えるなら、調理中のにおいが微かに漂ってきた程度の
そんなオレの答えに、ガルラスがまた舌打ちをしてみせた。
「……ねえマルス、わたしの気のせいかもしれないけど、おんなじ道をさっきから行ったり来たりしてない? もしかして、わたしたちヴァインに騙されているんじゃないかな?」
「それにはワシも同感だ。かれこれ一時間近くは無駄に歩かされ続けているぞ」
「シッ! ふたりともやめろよ、聞こえるだろ。大丈夫さ、ボクは彼を信じている」
「うーん……マルスがそう言うなら、わたしも一応信じてみる……かも」
生暖かい
しかし、それはしかたがないことだった。
仲間になったばかりの敵を──闇の使徒を信頼することなど、決してたやすくはない話だ。
それになによりも、オレは方向音痴で地図が読めない男だった。
ただし、ラストダンジョンは例外で、「オレの庭だから任せてくれ」と、光の勇者たちを誘導したまではよかったのだが……まさか、
「疲れさせてすまないが、これも女神フリーディアとダ=ズールの光と闇の力が反発した結果でもある。多少の不満は我慢してくれ。いや、我慢しろ」
立ち止まって振り向いたそんなオレの言葉に、仲間たちからは、なんの反論も起きなかった。どうやらうまく誤魔化せたようだ。
ゆっくりときびすを返そうとするオレに、
「あの」
プリシラが聞き取れるか聞き取れないかの小さな声をかけた。
「疑ったりして、ごめんなさい」
「…………」
彼女の謝罪の言葉を無言で受け入れ、ふたたび前へ向き直りひとり先へと進む。
早く下へ降りる移動魔法陣を見つけねば──。
これ以上道に迷うのは、もはや洒落にならないレベルに達していた。
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