第15話 候補者発見?

青は両腕を上げ、背伸びをしながらノノカに言った。

「さて、何から始めようか。絵画の説明には“ネットの恐怖 死を選ぼうか悩み泣く中学2年の女生徒”と書いてあったよね。と言うことはあの絵画の子が絶望にかられて自殺とかに踏み切らないよう説得すればいいのかな?」


「説得だけでいいと思う?それだけだったらわざわざ“絶望の廊下”に飾られるかな?」


「それもそうだな。ということはその元を断たなければいけないってことか。待て待て、その前にここはどこなんだろう。」


「まだ説明していなかったね。ここは絵画に関係する最も近い場所だよ。そしてあたしは関係する場所をナビゲートできるのだ!すごいでしょ?」


「へぇ~、なるほど。色々できるんだね。本当に頼もしい。

ではまず絵画の子が通う中学校に行ってみたいな。」


「了解!じゃあまずこの道を真っすぐ進んで、突き当りを左に曲がって。

あ、そうそう、これも言ってなかったわね。私は青にしか見えないし、声も当然他の人には聞こえないの。でも青の声はしっかり他の人にも聞こえちゃうので注意してね!」


「え?僕の声は聞こえちゃうの?なんか独り言言ってる変な高校生になっちゃうじゃん。」


「しょうがないでしょ、サポアニはワニとかサイとかいるんだから逆に見えたら大変でしょ?それにそれが喋ってたらなおさらおかしいでしょうよ。」


「ま、まぁそうだね。できるだけ人気の少ないところで話すしかないか。」


「と思うだろうと思って買ったのよ、“BOSAN”のヘッドフォン。出して出して。これしてれば一人で喋ってても携帯電話で喋ってると思われるわ。気が利くでしょ?ウヒヒ。」


「確かに!なんでこんな高いの買うのかなと思ってたけどこれは買う価値ありだね。おぉ、周りの喧騒も聞こえなくなる!素晴らしい‼」


「じゃー早速中学校へしゅっぱーつ‼」


青はノノカのナビで、ある中学校の校門まで着いた。


「万江北(まえほく)市立駒居(こまい)中学校。ここにあの絵のモデルになった女生徒がいるんだね。」


「そうだよ、ただいきなり中に入っちゃダメだよ、それこそ不審者扱いで警察に通報されちゃうから。」


「わかってるって。まだ下校時間前だね。あの子部活はやってるのかな…。ん?向こうで体育の授業やってるね。行ってみようか?」


門からぐるっと南に回ると、バスケットボールをやっていた。


「バスケかぁ~、僕中学の時やりたかったんだよね。でも少年野球のときの先輩がバレーボール部だったので断りきれずにバレー部に入っちゃったけど。」


「そうなんだ。ねね、コートの外で座ってるあの子、絵画の絵になんとなく似てない?あたしもう少し近くで見てくる。」


ノノカはぴょんっと肩から飛んでその子の近くまで行って色々な方向からじっくり見ていた。

青は

「いいな~僕以外には見えないんだもんな。ん?そうか、だから僕のかわりに情報収集してくれてるのか!さすがサポアニ‼」

と思っていると、ノノカが一直線に戻ってきて


「なにニヤニヤしてるのよ、人がせっかく代わりに見てきてあげてるのに。中学生に見惚れてたの?やらしい。」


「あ、うん、ごめん。中学生じゃなくてノノカにだよ。僕の代わりに行ってくれたんだと思って。」


「あ、えっと…、まぁ結果的にそういうことになるのかな?…パートナーだからさ。アハハ…。」


ノノカ、なんか含みのある言い方だな、と思いながらそこには触れずに訊いてみた。


「どうだった?なにかわかった?」


「そうね、学年は2年生。名前は“綾野あやの”って体操着に書いてあった。そしてずっとぼんやり他のことを考えていそうな感じ。でもそれだけでは断定できないよね。もう少し情報が必要だわ。下校のときに尾行してみよっか。」


「うん、そうしてみよう。本当に頼りになるよ、ノノカ。」


「あ、あたしはサポアニだから当然のことをしただけ。そんな事言われると…照れるじゃない。」


青はかわいいやつだな、と思いながら

「ノノカ、少し寝ていいよ。尾行なら僕だけでもできそうだ。」


「え?いいの?あたし眠そうにしてた?」


「そうじゃない。僕自分の世界でもうさぎ飼ってるんだよ。だから知ってる、うさぎは4時間起きて、1時間寝る、っていうサイクルを。だからリュックの中で少し休みなよ。チモシー敷いておいたから。」


「そ、そう。ありがとう。じゃあ遠慮なく…。」


ノノカがリュックの中に入ると、青は校門から少し離れた場所に移動して、下校時間を待つことにした。

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