第10話合宿の夜のこと
インターネットでアセクシャル,アロマンティックという指向があると知った.性別を問わず,性的にひかれない人.他者に対して恋愛感情を抱かない人.調べると,そう出てきたが,よく分からない.これまでの少ない経験を思い出して考えてみた.高校時代のこと,先輩のこと,中村くんのこと.先輩は格好よくて,憧れだった.中村くんはいい旦那さんになるだろうモヤモヤした気持ちが残るのはなぜだろう.
そして思い出したのは,高校時代の彼女のことだった.私が彼女に対して抱いていた感情は何になるのだろう.彼女の一番になりたかったけど,それは恋愛なのか.考えてみても時間が過ぎるだけで結論がでない.
ぼんやりと思い出してきた彼女との思い出.それは,高校二年,書道部の合宿のことだった.亜実と私を含めた数人が同部屋で布団を敷いて雑魚寝をすることになった.女子数人であってもその中でグループができる.私は当然の如く,亜実の横に布団を敷いた.テレビをつけると,亜実の好きなダウンタウンの番組をやっていて,当然私も一緒に観ていた.すると,亜実が布団をめくって,『こっち来れば』といつものひょうひょうとした感じで言ってきたのだ.私は一瞬ドキッとしたが,嬉しかったので,同じ布団に入った.ここまで距離が近くなるのは初めてで緊張もあったが,それと同じくらいの安心感があった.他の女子からは,「ふたりめっちゃ仲良いじゃん笑」と突っ込まれたが,亜実も私も「うん」と答えてテレビ鑑賞に戻り,同じ場面で笑ってセリフを真似たりして過ごした.それだけのことを思い出した.
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