第9話拗らせ女子大生

 映画を観て,帰りにミスドでドーナツを食べながら,ここが面白かったとか,あれはびっくりしたとか映画の感想を語り合った.帰りも車でアパートまで送ってもらった.道中,次の遊びの話になった.イルミネーションが奇麗なところがあるから一緒にどうかというのだ.場所は車で二時間ほどかかる.その場で「行きたい!」と返事をすれば,可愛いのだが,私はまた考えてしまった.イルミネーションということは夜なわけで,車で往復四時間二人きり.いくら気を張らない友人とはいえ,不安にはなる.

「楽しそう.また予定調整するね.」

『うん,ありがとう.楽しみにしてる』

濁す言い方をして話題を変えてしまった.アパートに着いて,楽しかったねと言い合って少し話して解散した.


後日,加奈や優希にデートの報告をした.「中村くん合うと思う.優しいし」と優希は言った.加奈も優希と同じ意見らしい.

私はというと,彼と恋人関係になる想像をしてみたものの,上手く想像できないでいた.付き合うということは,体の関係になるということだけど,それが全く想像できないどころか嫌悪すら感じるのだ.彼は私にとって貴重な友人で,これからも友人でいたい.でも相手はそうではない.恋愛関係になることを望んでいるのだ.ラインで「好きかも」と送ってきたり,通話しようと言ってきたり,どんどん積極的になっている.私と彼の気持ちは等号ではない.ふとした瞬間そう思った.一度そう思うと,中村くんは悪くないのに,気持ち悪く感じてしまって,そっけない返信をするようになってしまった.そして,とうとう「ごめんなさい,あなたを恋愛的にみれない」と送ってしまった.返事はこなくて,学校で話しかけられることもなくなった.前は目が合うと,何かしら話していたのに,もう目が合うこともなくなった.私は恋愛に向いていないのかと落ち込んだ.


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