第18話 「樹龍アリーセ爆誕!」

次の日もココの実の採取だ、今日は5匹の紫虫を討伐したが、そもそも紫虫の数が少なく後続が来ない。


「あー・・・地竜に食われたな」ガイエスブルクが戦闘痕を見つけて頭を掻く。


「そうなの?地竜って紫虫を食べるの?」


「と言うか食べれる物ならなんでもだ、俺も地竜の時は紫虫を食いまくっていたから気持ちは分かるぜ?」


ちなみにこの紫虫・・・食べて見るとマジウマである。

前に地球から転生して来た女が紫虫を食べた時・・・


「美味っ?!まんま「伊勢エビ」じゃん!!え?!これが無限湧きしてくんの?!

「伊勢エビの食べ放題じゃん!」と驚いていた。


なので味覚が人間とそう大差ない地竜も「うめーうめー」と紫虫を食べるのだ。


人間社会でも紫虫は人気食材で専門料理店もあるくらいだ。

黒虫と言われる同系統に属する魔物も居るが紫虫に比べると一般的に「大味」と評価されている。


しかし大食漢に言わせると黒虫の方が上手い!との事だ。

人それぞれの味の好みやね。


そんな雑魚キャラ&食用魔物の筆頭の紫虫だが「紫虫王」と言う冒険者ギルド評価SSランクの激ヤバな王様魔物も存在している。


昔、どっかのエルフが修行の為に「紫虫王」にタイマンで挑んでボコボコにやられて惨敗した事があるのだ。 


尚、その「紫虫王」は今でも健在で負かしたエルフにウザ絡みされている。

そのエルフの余りのウザさに嫌気が差してどこかに逃亡して「現在の所は行方不明」だ。


「酷いや!私との勝負を放り出してどこに行ったの?!「シイちゃーん?」」


紫虫王が残した『お願いですから探さないで下さい。(特にイリス)』と書かれた手紙を見て叫ぶエルフ。 


ほとんど全部お前のせいじゃねえか!!つーか魔王に置き手紙で拒否られるって。



話しを戻すと、そんな感じで紫虫は食材として売れるのでシーナ達も討伐した紫虫は全て冒険者ギルドに卸している。 


紫虫王も所詮は他所の子供なので紫虫達が人間達に食われまってる現状については特に気にしていない。

弱肉強食が魔物の絶対的なルールなので。


昨日の相場が「一匹1500円(相当)」なので鮭一匹くらいの金額だと思ってくれて良い。

幻夢のメンバー全員が空間魔法収納鞄を持っているので詰め込みたい放題なのだ。


通常の冒険者はそんな超高級魔道具を持っている奴は少ないので食材としての紫虫が市場で余る事は無い。


狩り過ぎの幻夢達だが、その辺りの調整は幻夢のリーダーのオーバンが適量を卸しているので値崩れとかの問題は起きていない。


話しを戻そう。


地竜は進化前の成長期には大量の餌が必要なので何でも食べて良く寝る、旺盛な食べっぷりからして、この付近に進化間近の地竜がいる証だ。


「そっか・・・寝てるのを邪魔しちゃ悪いし今日は帰ろうか?」

エレンがそう言った瞬間!


ドオオオオオン!!


と20m先に大きな土煙が上がり土の中から体長5mほどの緑色の地竜が姿を現す!


「おお?」そしてその地竜はシーナに突進して来た?!

驚いて身構えたシーナの2m手前で止まり、

「「キュウウウウン」」

と可愛い声を上げながら尻尾をブンブンと振った。


「お?お?おー?可愛い?」その地竜は凄く愛嬌がある顔している。

地龍に進化して人化したら美人さん確定である。


「シーナお前、その地竜になつかれたぞ?

俺には分からないが多分シーナに何か通じる物が有るんだろうな」


「「キュイキュイキュウン」」「ね?ね?ね?構って構って」アピールが始まった。

この人懐っこさから見ると地竜は女の子だろう。

男の子は縄張り意識が強いので、ここまで初見の他人に懐く事は無い。


「ん?なに?」


「「初めまして」だってよ」


「この子もう地龍への進化の目前だね、進化の眠りの為に栄養補給中ね」

地竜の鼻先をエレンが撫でながら話し掛ける、地竜は気持ち良さそうにエレンに擦り寄って、「「キュイーン」」と鳴いた。


「そっか!あたし達の仲間だね!よろしくね!立派な地龍になるんだよー」


シーナが手を出すと地竜はシーナの手に頭を擦りつけて、

「「キュイキュイキュイーン」」とまた鳴いた。


「シーナ・・・お前がその子の名付け親になれよ」


「えっ?」

シーナがビックリすると地竜は喜んで背中の小さな翼をパタパタし出した。

翼が有るので、この子は「土竜」では無い。

身体の特徴的な緑色から「樹竜」と呼ばれる種族だろう。


樹竜がこの中央大陸中部近辺に居るのは珍しい、中央大陸の西端と西の大陸に住んでいる種族だからだ。


おそらく、地龍王クライルハイムの魔力で自然発生した個体だろう。


「この子もシーナに名前を付けて欲しいって、あっ!この子は女の子ね?」

女の子に権左衛門とか名付けてしまったら大惨事である。


「ええ?!えーと、んーと・・・・!!!!そうだ!「アリーセ」なんてどうかな?」

シーナは名付けのセンスが有るのか咄嗟にだったが可愛らしい名前を思い付く。


「「キュイーンキュイーン」」シーナが付けてくれた名前を承諾するアリーセ。


嬉しそうにアリーセが鳴くとシーナの右目が淡く光りだした?

すると、それに呼応するかの様にアリーセの体も強い光を放つ!


「ええ?!何これ?!」突然の事に唖然とするシーナ。


するとゆっくりと光が収まってキョトンとしてるアリーセを見て・・・

「・・・地龍に進化しちゃった」とエレンが唖然としながら呟いた。


「「「うええええええええーーー??!!!」」」

地龍王の山にシーナ達の絶叫がこだました。


樹龍アリーセの爆誕の瞬間だった・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「進化の眠りも無いのに地龍に進化しちゃった」エレンがまた呆然と呟いた・・・


パッと見、アリーセの身体に変化は無い、しかしエレンの龍眼は先程とは全然違う存在を写し出している


「うええええ??!!」


「マジか?・・・うそだろ?」


「お?おおお・・・」


「本当ですか?!エレン殿!」


上からシーナ、ガイエスブルク、オーバン、マッテオの言葉だ。


誰もが驚愕と言った表情でアリーセを見つめる。


特に外見に変化は無いアリーセは目をぱちぱちさせてからハッとして

「「あっ!言葉しゃべれます!」」と可愛い声で辿々しく言った。


それからが大変だった・・・


こんな急激な進化で体にどんな悪影響があるか解らん!

とエレンがテンパって龍化してアリーセをお姫様抱っこで抱えスカンディッチ伯爵領を目掛けて爆走!


今日はトムソン鍛冶店で地琰龍ノイミュンスターと天舞龍リールの会合があると知っていたので天舞龍リールにアリーセを診察して貰うつもりだ。


人の目の事をテンパって完全に失念してたエレンはスカンディッチ伯爵領領都内を地龍が地龍を抱えて時速100kmで爆走する「スカンディッチ領白い地龍爆走事件」と言う珍事件を起こす。


無論エレンはその後スカンディッチ伯爵に叱られて始末書を書かされた。


他の4人は幻夢の中で1番の俊足のエレン本気の爆走に全然ついて行けずエレン到着の20分後の街への到着だった。


ちなみに高速エレン号の本日の最高速度は時速150kmだった。


トムソン鍛冶店で会合中だったノイミュンスターとリールの2人はアリーセを見て、

「こりゃあ、たまげたのぅ、これは我も初めての事じゃ」

ノイミュンスターも心底驚愕した珍現象だったのでエレンがテンパったのも仕方ないのだ。


「じゃあ!徹底的に診察しよっか!アリーセ」

リールも前代未聞の出来事に興味津々だ。

いそいそとアリーセを工房の方に連れて行く。


例のあの部屋ではアリーセが入り切らなかったからだ。


この後2時間に渡りアリーセの診察が行われた。


そしてその診断内容に更に衝撃を受けた。


「先ずは急激な進化による身体への悪影響ね!

結論から言うと、どこも問題なしの健康優良児!

それからこの子は広い範囲では地龍だけど正確には樹龍だから間違わない様にね」


「やっぱそうか、体の色からそうだと思った」

最初からガイエスブルクはアリーセを樹龍だと思っていた様子だ。


ちなみにシーナとガイエスブルクは「土龍」、エレンは「白銀龍」と言う種族になる。


「次に何で進化の眠り無しに進化したかについては不明ね、天龍でも総力を上げて調べるよ、何せ前代未聞の現象だからね!

そもそも最年長のノイミュンスターが驚く位だから誰にも解らない」


そう言ってアリーセの頭を撫でるリール、アリーセは気持ち良さそうにリールに擦り寄る。


「そうだのぅ、シーナの事でも初の出来事だからのぅ」


「ただね!ノイミュンスターが何かを私に隠しているのは間違い無いから後で2人きりで話し合いだね!」

ノイミュンスターをビシッと指差すリール


「鋭いのぅ・・・

まぁ・・・どうしても隠さなければと言う訳でも無い話しじゃな。

初めてシーナを見た時にシーナからユグドラシルの気配を感じたのじゃ、薄っすらとじゃがな」


「!!!!」ノイミュンスターの突然の告白に驚くシーナ。


ノイミュンスターは、シーナも成長した事だしそろそろ真相を究明しても良い時期だと思い、この機会にリールに明かした。

しかし何となく予想はしていたのかリールに動揺は無い。


「やっぱりね!そうだと思ったよ!そこを踏まえて仮説だよ!

シーナからのユグドラシルの気配とアリーセの樹龍の性質の相性が良かったと思う。

同じ樹属性だからね、それから地龍王様の魔力が相互作用してアリーセの進化を加速させた結果、アリーセは進化の眠り無く龍種へ進化したと私は思うわ」


天舞龍リールの仮説は、ほぼ正解である。


「それでもなんでいきなりシーナと共鳴したんでしょうか?」

エレンが不思議そうに首を傾げる。


「それはシーナがアリーセの名前をつけたからだね!

これが一番大事な話しでアリーセはシーナの眷属、つまりシーナの娘になったよ!」


「ふえ?!」突然自分が親になった話しになり驚くシーナ。


「シーナが名前を付けてアリーセと魂のレベルで繋がった、これは年齢とか関係ない事ね。

上位者から下位者へに能力の譲渡が行われた場合に上位者が親で下位者が子になる、地龍の王様とシーナの関係もそうだね、

つまりアリーセは地龍王様の直系の眷属、「孫」になるね」


「ふええええ??!!」


「「アリーセ、地龍王様の孫?」」


「注意しておくよ?シーナは今後安易に竜達に名付けとかしない様にね!

ドンドン自分の魔力を眷属に吸われて生命に関わる問題が起きるかも知れないからね!

ん?みんなどうしたの?黙り込んで」


「いや・・・さすがに我も話しに驚き過ぎてどう言って良いのか分からんわい」

いやはやこれは・・・どうした物か?と困惑しているノイミュンスター


「アリーセがシーナの娘・・・」

何故か分からないのだが、良く分からんショックを受けるエレン。

多分、シーナを取られた?感覚なのかも知れない。


「私には次元が違い過ぎてどう反応していいのか・・・」

言葉として理解出来ても意味が理解出来ない様子のマッテオだった。


「私もですね・・・でもこの話、魔族の私が聞いて良かったのでしょうか?」

オーバンも困惑している様子だ。


「んー?問題は有るけど君なら多分大丈夫!」

ビシッ!っと親指を出すリール。


「そんないい加減な・・・」思わず苦笑いのオーバン。


「でも身体に悪影響が無くて良かったなアリーセ」


「「はい!・・・わたしシーナ様のむすめ・・・」」アリーセはとても嬉しそうだ。


「私の感想は「親子関係成立おめでとうシーナとアリーセ」だね!

ただアリーセをここに置いておくのは反対だね。

魔族や「はぐれ者」に攫って下さいって言ってる様な物だからね。

すぐにでも地龍の地下都市に保護するべきだよ?

ノイミュンスターはどう思う?すぐにでも決断が必要だよ?」


「そうだのぅ、人化も出来ないアリーセは危険過ぎてスカンディッチに置けんな。

母子を引き離すのは気がひけるが直ちに本国で保護して貰い学園で色々と学ばねばならんのぅ」


アリーセの龍都への移送決定である。


「「アリーセはママと一緒すめない?」」アリーセは泣きそうだ。


「ちゃんと魔力の使い方とか人化の方法とかの勉強しないとダメね。

ママと住む為に頑張ろうね」エレンはアリーセを撫でながら励ます。


「「はい!ママとすむ為にがんばります!」」

すぐさまの方針転換の速さは流石は地龍だ!


「母親と違い素直だな、頑張れよ、様子を見に行くからな」

ガイエスブルクもアリーセの頭を撫でる。


「いえあのちょっと!何でみんなアリーセとあたしが親子になったって簡単に納得してるの?!」シーナが両手を開いて前に出してブンブンと振る。


「「ママ・・・アリーセの事が嫌い?」」悲しそうにシーナに擦り寄るアリーセ


「いや好きだよ?!可愛いよ!でも親子って」 

だってあたしまだ未婚?なのに子供って・・・と思っているシーナ。


「「アリーセもママがすき」」

そう言いながらアリーセは頭をシーナの胸元に擦り付ける。


「ううっ可愛い・・・」

擦り寄る娘に母性に近い何かが芽生えたシーナであった・・・

まだ完全な母性はないのだがシーナ14歳、母になった日である。



ーーーーーーーーーーーーーーー




「おっちゃん!新しい義手が欲しい!」


突然シーナがノイミュンスターにおねだりを始めた。


「義手の新造じゃと?」いきなり店に飛び込んで来て興奮気味に話すシーナにキョトンとするノイミュンスター。


「うん!」


これまでの実戦訓練で自分の未熟さを痛感していたシーナは訓練の続行の他に何かこう・・・もう一つ二つ引き出しを増やしたい!


そう悩んでいたらフッと自分の右腕に目が行きこれだ!と思い立ちノイミュンスターに相談しに来ていた。


「ふむ・・・具体的にどんな物が欲しいのじゃ?」

無論可愛い娘の願いだ、可能な限り叶えてやりたいノイミュンスター。


「んーと、先ずは「ろけっとぱんち」自分の拳を打ち出して敵に当てる。

次に魔導榴弾砲で敵を砲撃する。

防御は腕にスモールシールド、肩にショルダーシールドが欲しい。

もちろん自爆機能も欲しいかな」指折りシーナが要望を伝えて行くと、


「具体的な内容が物騒過ぎる?!」

横でノイミュンスターの仕事を手伝っていたガイエスブルクは顔を引きつらせる。


「なるほどのぅ「ろけっとぱんち」にはかなり興味が湧くわい。

どれ?詳しく聞かせて見い?」


今日は冒険者パーティーの幻夢はおやすみなので他のメンバーはそれぞれがお出掛け中だ、ガイエスブルクも店の手伝いが終われば少し遠場に出掛けようとしていた所を突然シーナが来て今の話しになったのだ。


ノイミュンスターは走り書きでサラサラと設計図を書き始めて。

「よしっ早速作って見よう2人共手伝ってくれるな?」

お前ら材料持って来いや!とノリノリだ。


「うん!」


「こっちの方が面白そうだしいいよ」

少し引き気味だが、ガイエスブルクも協力してくれる様子だ。

こうして新たなシーナの義手作りが始まったのだ。


「そう言えばお前って義手だったんだな全然気が付かなかったよ」


町の外の平原の土から砂鉄を集めながらガイエスブルクが笑う。

義手の精度が良過ぎて2年以上もシーナの義手が分からなかったのだ。

そりゃシーナ本人が義手の存在を忘れていたので気が付かなくても無理はない。


「そうなんだ、凄いよねこれ」まるで他人事の様に義手を眺めるシーナ。

こんな感じなのでシーナは自分が義手な事へのコンプレックスなども無い。


成長不良だった本来の右腕は色々な面で危険が大きいので、シーナを引き取ってすぐにノイミュンスターが切って治療したので切り口は綺麗に皮膚状態になっている。

シーナも痛みはおろか何の違和感も無いのですぐに義手の存在を忘れる。


現在のシーナの義手は8代目でシーナの成長に合わせて作り直している。

確かに今の義手は戦闘訓練を始めてから少し損傷が目立って来ているし、日々向上しているシーナの運動能力に駆動用の魔力回路がついて行けてない部分もあるのだ。


この際、それら全てを改良するとの事だ。


そうこうしている間に50cm真っ角の木箱に砂鉄が満載になる。

ちなみに街中と周囲1km圏内での砂鉄集めは禁止されている。

ほっとくと街中の砂鉄があっという間に無くなるからだ。


まだ上手く砂鉄を集められないシーナはガイエスブルクが集める砂鉄をせっせと木箱に入れる役目だ。


「こんなモンか?」


「えーと?木箱二つ分・・・だって」


ノイミュンスターに渡されたメモを読むシーナ、まだ足りないらしい。


「よっしゃ!任せろ!」


こうして3時間かけて1m角の木箱に二つ砂鉄を集め終わる。

それをガイエスブルクが鍛冶屋に転送する、シーナは転移魔法と空間魔法もまだ苦手なので全部彼任せだ。


「次はすず、ニッケル、銅、を2kgづつ、これはあたしが得意ね」

ノイミュンスターから渡されたメモを見て、次はシーナが地中に探索魔法をかけて、お目当ての物があったら土操作の魔法を使って掘り返して行く。


掘り返した土を元に戻さないとスカンディッチ伯爵にお仕置きされる。

昔、町に住む地龍が色々とやらかしたせいである。


「お前、白銀まで見つけたのかよ」

1kgくらいの白銀の塊を3つほど見つかったので回収しておく。


シーナも地龍らしく貴金属を収集する癖がある。

現在のシーナは孤児院を出て街外れの大きい古い一軒家を中古で買い取ってエレンと一緒に住んでいるのだ。


そして地龍らしく地下ダンジョンを構築して200畳ほどの大きな地下室は2人で採取した貴金属でいっぱいだ。


その価値は日本円で換算すると30億円以上にもなる・・・ヤバ過ぎるお宝だ。

そして約100坪の一軒家・・・かなりの資産家になっているシーナ。


地下室は上屋の面積以上に拡充するとやはり伯爵にお仕置きされる。

なので下へ下へと伸びていくのだ。

シーナ達の家もお宝が多過ぎてそろそろ6階の作成をしなければならない。


ちなみに地龍は宝石類にはそこまで執着しない。

宝石類が大好きなのは天龍だ。

採取した宝石類は天龍達にプレゼントしている。

もし龍種の宝石類と貴金属が市場に流通したら世界経済が大混乱になるだろう。


シーナは銀が好きでエレンは金が好きだガイエスブルクは銅や鉄が好きと個人で好きな鉱物が違うのも面白い。


あっという間に義手作成に必要な物が集まったので一旦鍛冶店に帰る。


鍛冶屋に戻るとノイミュンスターが店にストックしていた素材を使い試作品の義手を完成させていた。


あれ?素材調達必要なくね?と思ったら自分の魔力で調達した素材の方が身体に馴染む義手が作れるので今回からそうしたのだそうな。


「よしっシーナよ!付けて見よ!」

珍しくノイミュンスターのテンションが高い。


シーナの義手は魔法で結束されているので取り外しはワンタッチ式だ。

交換には5秒と掛からない。


カチッ・・・カチッ・・・って感じだ。


「んー??違和感はないよ」手をグーパーさせるシーナ。


「ふむ、ではあの的に向けて拳を握って突き出して撃って見よ。

発射は魔力を拳の一点に集める感覚じゃ」


「うん!」


シーナは的に拳を突き出して、「えいや!」と魔力を込めると・・・

ドン!!!ヒュン!!ドゴオオオンンン!!!!

拳は木の的を粉砕して後ろの厚さ20cmの鉄板にめり込んで貫通していた!

いや!木の的の意味は?


「凄い!あたしの右腕超カッコイイ!!」

飛び跳ねて大喜びのシーナ、ロケットパンチ大成功だ!


「マジかよ・・・これヤバくね?」

ロケットパンチの想像以上の威力にガイエスブルクは少し顔色が悪い。


「うむ、威力がマダマダだな、これは改良の余地有りじゃな」


「え?!そっち?」コレでもまだダメなの?!と言った感じのガイエスブルク。


「撃ち出した拳を呼び戻して再装着させる機能も欲しいのぅ、榴弾砲は弾は3発は装填させたいのぅ・・・

シーナよ?義手は見た目重視か?実用性重視か?」


「実用性重視で!」即答するシーナ。


「では、相手に対して威圧感がある意匠が良いな」


なんだか相当ヤバい物が着々と出来上がって行ってる予感がしているガイエスブルクあった。





それから2ヶ月後に遂にノイミュンスター渾身の義手が完成したのだった


「ジャーン♪♪♪」珍しくハイテンションのシーナ。


「凄い!カッコイイよ!シーナ」

なんか凄く感動してるエレン、こう言う兵器が好きらしい。


「これは?」


「いやはやなんとも??」


明らかに困惑してるマッテオとオーバンの男2人。


「・・・」

これのヤバさを知っているガイエスブルク黙っている、沈黙は金なり状態だ。


先ず新しい義手の見た目は「武骨で重そう」だ。

実際は合金と樹脂加工などで軽量化を図り、重力操作魔法の術式を彫り込んでるので普通の義手と感じる重さは変わらない。


しかし肩と腕の盾が「ザッ鉄製」と言った感じで重そうだ。

それがシーナの水色のワンピース姿と言う可憐な印象とミスマッチして異様に武骨さが際立っている。


「シーナよ、次は新しい戦斧じゃ」


渡された武骨な意匠の戦斧は長さが70cmの片刃のショートアックスだ、それが加わると更に異様な姿に見える。


「意匠のコンセプトは「隻腕の龍戦士」じゃ」

ドヤァとノイミュンスターがシーナに告げる。


「隻腕の龍戦士?!なにそれ?!カッコイイ!」


「凄い!カッコイイ!」エレンも大興奮だ。


「「「・・・・・・・」」」

キャッキャッはしゃぐ女子二人に何とも言えない感じの男三人・・・


「自爆機能だけが質量不足と誘爆の危険が大きくて装備出来なかったのが残念じゃが良い出来じゃろ?」


「うん!ありがとう!凄い嬉しいよノイミュンスター!」義手に頬擦りするシーナ。


「あっ自爆機能は無理だったんだ」と少し安心したガイエスブルクであった。

「でもやっぱりアレの中に魔道榴弾砲は内臓されてんだよな」

やっぱり不安になったガイエスブルクであった。


ちなみに榴弾砲は腕の盾の中に小型が二発、腕の中に中型が二発装備されている、徹甲弾に変更も可能だ。


「早く実戦で試したいな♪」もう大喜びのシーナであった。


それから数日間は地龍王の山の紫虫達の災難の日々が続いた。

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