異世界転生したけどシリーズ

ロヒー2号

異世界転生したけど、雑魚敵にすら勝てません


 ――この物語は、唐突に始まる。


「あーチミ、死んじゃったから」


「はい?」


 いきなり、訳の分からない事を口走る老人が目の前に立っていた。


 ここは何処だ? 俺はどうしてこんなトコに居るんだ?  


「あれじゃよ、あれあれ。異世界転生って奴じゃよ」


「ああ、なるほど……って、納得出来るかい! 何で、いきなり俺は死んでんだよ!?」


「少年よ、男なら細かい事をいちいち気にするな。ドーンと構えておれ」


 老人はカッカッカッと笑う。おいおい、自分の死を気にするなって……。


 話の流れからして、このじーさんは神様っぽいな。


「いや、いきなり異世界転生とか言われてもね……俺、一般人だよ? RPGで例えるなら、ここは○○の町ですとか言ってるモブキャラみてーな顔してるよ?」


「じゃから、チミは転生するのだ!」


「だから、何で俺が異世界転生せにゃならんわけ!?」


「ええい、とにかくチミは転生しなきゃいけんの!」


「いや、現実世界に生き返らせてもらえないっスかね!?」


「無理。チミ、もう火葬されてるから」


「ノォオオオオオオオオオオオオオオッ!」


 火葬って……現実の俺の葬式終わって、遺体ももう無いってコト!?


 ハァ、あんま乗り気じゃないけど――異世界転生するっきゃないかな。


「あ、そうじゃ。転生の特典として、スキルを与えとくから」


 スキルかぁ……異世界転生物ではよくあるパターンだけど、変なスキルじゃなきゃいいな。


「んじゃ、レッツ異世界転生!」


 じーさん(多分、神様)が杖を取り出して、杖から発する光線が俺の身体を包み込んだ。


 意識が遠のく……これから、異世界に生まれ変わるのか。


「よっしゃー、ノルマ達成! これで、最高神様からボーナスが貰えるぞい!」


 それが目的かいィィィィィィィィィィィ!


 こんのクソジジイ、ボーナス貰う為に俺を転生させたのかよ! 神様の世界にもボーナスなんてあるのかよ!?


 神様という名のクソジジイに文句を言う前に、俺の意識は完全に途絶えた。






「ん……」


 俺は目を覚ました。目の前には大草原が広がっていた。


 おお、本当に異世界転生したみてーだな。周囲に人の気配は無い。


 つーか、赤ん坊からのスタートじゃないな。外見は死んだ時の年齢とほぼ変わらないくらいか?


 それはそうとして、何でいきなり大草原? せめて、どっかの町からスタートさせて欲しいもんだぜ。


 チュートリアルも無しに、いきなり冒険しろってのか?


「ん……?」


 何やらズボンのポケットに手紙らしき物が入ってる。お、あのクソジジイ……神様からの手紙みてーだなぁ。 


 えーと、内容はっと。


『ステータスオープンと言えば、チミの能力とスキルが分かるぞい』


 ……RPGみてぇだなぁ。まぁ、いいや。


「ステータスオープン」


 ブゥンッという音と共に、空間にRPGでよく見るステータス画面が出現する。最初に俺の目に飛び込んできたものは――。


 モブオ、レベル1。


「って、ちょっと待てや!? 誰がモブオだ、コラァ!」


  あんのクソジジイ、いくら俺がモブ顔だからって名前適当に付けやがったなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!


 ふざけんじゃねぇぞ、名前くらい自分で決めさせろや! ったく、あんのクソジジイ……本当に神様かよ。


 そういえば、最高神様からボーナスが貰えるとかほざいてやがったな。あいつ以外にも神様が居るんなら、もっと有能な神様が来てくれよ。


 あっと、そうだ。スキルを与えるとか言ってたな、頼むからスキルはまともであってくれよ。


 サーチ

 敵のレベルや能力、経験値、所持金が分かる。


 ……まともなスキルだけど地味だな~。こういうスキルってRPGとかじゃ攻略サイトや攻略本見ればいらないタイプなんだよなぁ。


 ガサガサっ!


「うお、まさかモンスターか!?」


 身構える俺の前に出現したモンスターはスライムだった。何だ、楽勝じゃん!


 流石にいきなり強敵モンスターとかは出ないよな。スライム相手ならレベル1でも大丈夫だろ。


 あ、そうだ……スキル使ってみるか。


「サーチ!」


 スライムにサーチを使ってみた。おお、スライムの情報が開示されたぞ!


 スライム、レベル1

 HP3、経験値1、所持金2、要注意攻撃――波●砲。


 雑魚敵だけあって、大したことは……ん、ちょっと待った? 要注意攻撃の波●砲って何だ?


 何か、宇宙戦艦とかに搭載されてる主砲みてーな名前……はっ!?


 第六感、虫の知らせとでも言えばいいのか。途轍もなく嫌な予感がした。


 スライムが大きく口を開いていた。キュイイイイイイイインという、甲高い音が聞こえてきた。そして、大きく開いたその口から極太のレーザーが発射された。


「ぬぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 正に間一髪のところで、俺は回避に成功した。極太のレーザーは俺の遥か後方に聳え立つ山脈を一撃で粉砕した。


 え、待って。ちょ、何コレ……あ、あれ、スライムだろ? 山脈を吹っ飛ばすような攻撃してくるスライムってどういうこと!?


「さ、サーチ!」


 もう一度、サーチしてみる。


 スライム、レベル1

 HP3、経験値1、所持金2、要注意攻撃――波●砲。

 世界各地に生息する最下級モンスター。但し、極稀に凶悪な個体が生まれる。


 あ、何か情報が更新されてる。つーか、待て待て!


 極稀に凶悪な個体が生まれるって!? じゃ、俺の目の前で波●砲かましてきたスライムが正にそれ!!?


 ステータスは最弱なのに、攻撃だけが最凶ってことか!?


 キュイイイイイイイイン。


「ぬわぁあああああああ、また来るぅうううううう!」


 再びスライムの口から放たれた極太レーザーを何とか回避する。い、いかん、とにかく今は撤退だ!


 雑魚敵とはいえ、あんなんが相手じゃ命がいくつあっても足りねぇ!


 俺は凶悪スライムから全力で逃走する――はっ、前方にも数体のスライムが!


「流石に全部があんな凶悪なスライムばっかじゃねぇだろ!」


 踏み潰して逃げてやるぜ――と、そんな甘い考えは即座に打ち砕かれる。


 キュイイイイイイイイン。


「ちょ……待て待て待て待て待てェェェェェェェェェェェ!? ここは凶悪スライムの生息地かァァァァァァァァァ!!?」


 新たに出現した凶悪スライム達も口から波●砲を発射して来た。


 ああ……元の世界の親父、お袋、御元気ですか? 俺、異世界に転生しちゃいましたよ。


 普通だったら、ワクワクドキドキな冒険を期待したいところなんですが――雑魚敵にすら勝てません。


 波●砲をぶちかましてくるスライム達から命懸けで逃げる俺。果たして、生き延びることは出来るのか……?





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