第5話:ビギナーズラックの巻き。

理髪店カオスはプティのおかげかどうか知らないけど、お客の数が増えたような

気がする。

プティ効果?


散髪屋さんは普通人の顔を剃るのにカミソリなんか使うけど、魔女のプティは

そんなものなくてもお客さんの髭を綺麗に剃れるんだ。

お客の顔を手でなでるだけでお客のヒゲは剃り残しもなく綺麗になった。


観音さんはそんなプティを見て、やっぱり魔法って便利って思った。

それなら誤ってカミソリでお客さんの顔を傷つけることはないからね。


いろんなお客さんが来る中で、プティを怒らせるような出来事が起きた。

お客の顔の髭を剃っていたプティ、なに思ったのかそのまま、お客の頭の

毛まで綺麗に剃っちゃったんだ。


髪を剃られた客は驚くよね。

椅子から飛び起きて目の前の鏡を見て、大慌て・・・パニックになってる。


隣でお客の髪をカットしていた観音さんはその様子を見て驚いた。


「プティ・・・なにやってんの?」


「ない、ない・・・お、俺の髪は?・・・・」


お客は完全にパニック状態。


「ざまあみろってば」


「プティ・・・」


観音さんはなにが起きたのか分からず戸惑っていた。


「こいつ・・・髭剃ってる間中、ずっと私の顔、見てたんだよ」

「ず〜っとだよ、キモくない?」

「セクハラだよ・・・変質者のすることだよ」


「え?ごめんなさい・・・あの君が可愛かったから、つい・・・」


お客はまあ、美少女フェチか変質者か変態のたぐいだったのかな?


お客はプティに失礼なことをしたと思って誤った。

この場合はお客が悪いのか、お客の髪を全部剃っちゃったプティが悪いのか

観音さんには決めかねた。


結局プティはお客の髪を元に戻してやって何事もなく平和に終了した。


とりあえず魔法は便利だよねって思う観音さんだった。


いろんなお客が来るからね。

いつでも髪をセットするとスプレーでガチガチに髪を固めて帰るお客とか・・・

完全に毛が一本も残ってなくてツルツルなのにカットに来るじじいとか、

どこをカットすればいいんだよって観音さんは思ってしまう。


あとは体臭がめちゃひどいお客とか・・・汚れた服のままでやってくるお客とか

髪をカットしてる間中、鼻歌歌ってるお客とか、ずっとしゃべりどうしのお客とか・・・。


たまに観音さんの友人なんかも来たりする。

髪をカットしないでしゃべるだけしゃべってカオスで息抜きして帰っていく。

とうぜんプティとも仲良くなるわけでね。


カオスは毎日のようにそんなお客が、わんさかやってくる。


ある日のカオスがお休みの日、観音さんは気晴らしにプティを連れて

釣りに行った。

観音さんはちょっとした趣味で釣りをするけど、プティはまるっきり興味なし。

なのに観音さんはプティをひとりにしておけず連れて行った。


ミニで釣り場まで行って貸し舟を借りて沖へ・・・本格的。

海に小舟を浮かべてのんびり釣り糸を垂れる。

情報では、このあたりの海は大物のワラサやブリが釣れるってことらしい。


観音さんはある程度ベテランだけど、横で釣り糸を垂れてるプティは

釣りははじめて。


波に揺られながら二時間あまり釣り糸を垂れて反応なし・・・一匹も釣れない。

プティは当然ヒマを持て余すわけで「帰ろうよ」を連発しはじめた。

こんな場所じゃトイレに行きたくてもいけないし・・・。


「釣れないな・・・おかしいな」


「退屈・・・カノンちゃん帰ろうよ・・・お魚に嫌われてるんだよ」

「そうだな・・・しかたない帰るか」


そう言った時だった・・・プティの竿に強い反応が・・・。


「あ、なんか変・・・カノンちゃん急に重くなったよ・・・」


「プティ、かっかてるんだよ魚が・・・けっこう引き強そうだぞ」

「竿しっかり持って・・・魚に持っていかれないようにね」


「私、がんばる」


「見てらんないや・・・プティ僕に釣竿貸して」


「ダメダメ・・・私があげるんだから」


「子供には無理だよ・・・ましてや女の子だし」


「子供扱いしないで!!」


「とにかくいいから、もしバラしちゃったらもったいないだろ」

「だから僕に貸して、貸して」


観音さんは半ば強引にプティから釣竿を奪い取った。

趣味に夢中な人は案外、我を忘れて自己中になったりするもんだ。


結局、それから魚と観音さんの格闘が始まった。


プティは魔法が使えるんだからなんとかできないのかって思うけど、その

時のプティは観音さんに竿を奪われてキレそうになってそれどころじゃなかった。


で、なんとか釣り上げた魚、70センチもある大物のブリ。

その一匹だけで今夜の観音さんの酒のつまみとプティの晩ご飯ができた。


ブリを上げたのは観音さんだったけど、釣ったのはプティ。

これが、まじなビギナーズラックってやつ。


観音さんは上機嫌だったけど、プティはめちゃめちゃ不機嫌だった。

釣竿を奪われたこともそうだけど観音さんに子供扱いされたことが許せなかった。


「見返してやる」・・・そう誓うプティだった。


当然その日の晩ご飯はブリの刺身とブリの煮付けがメインのブリづくし。


とぅ〜び〜こんて乳。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る