第3話:プティのちょっとした生い立ちの巻き。

ペットショップから観音さんのところにやって来た「魔女プティ」

昨夜、プティは彼のベッドで一緒に寝た。

観音さんは別々にとも思ったけどプティのほうから普通に布団の中に

入ってきた。


しかたない・・・ベッドから追い出すわけにもいかないし・・・。

で、プティは観音さんの横ですやすや寝てしまった。


思えば可哀想な猫ちゃんなんだよな。

拉致されてはるばる日本に連れてこられちゃったんだから・・・。


猫ちゃんって言うか、なんて言うか・・・。

もう猫ちゃんにはならないのかな・・・あ、いやいや看板猫で

いてもらわないと困るし。


「むにゃむにゃ・・・ん?ん〜〜〜にゃ」


プティは目覚めると、おおあくびして背伸びした。


「起きた?プティ」


「ここどこ?」


「寝ぼけてんの?」


「あ、え〜と・・・」


「僕、観音かのんさん・・・分かる?」


「ああカノンちゃん・・・おはよう〜」


「はい、おはようプティ」


「起きてご飯食べようか?・・・」

「それなんだけどさ・・・プティが猫だったから、キャットフード食べる

もんだと思ってるじゃん」

「キャットフード大袋で買って来ちゃったけど・・・食べないよねやっぱり」


「食べないね・・・猫じゃあるまいし・・・カノンちゃんが食べるもの

と同じ食べ物食べるよ」

「看板猫にはなるけど、その時以外は魔女でいるからね」

「本当なら魔女の姿が本来の私の姿だし・・・」

「向こうだと猫でいたほうがみんな可愛がってくれたからそうしてただけ」


「なんなら猫以外にだってなれるし・・・」


「プティはその、向こうでは野良猫だったのかな?」


「そうね、誰かの家にいたことあるし・・・私は自由だからね」

「いろんな国にもに行ったよ・・・もう慣れてるし・・・」

「私はフランス生まれだからマリー・アントワネットのところにもいた

ことあるよ」

「そこで「プティット・フルール」って名前をもらったの」


「マリー・アントワネットだって?」

「まじで?・・・って言うか、プティいつの時代から生きてるの?」


「何百年も生きてるね」


「魔女ってそんなに長生きなの?」


「そうね、不老長寿だね」


「私はトルコでトルコの猫ちゃんになってたけど、その国ではその国の

猫ちゃんや動物になってたから・・・ここだと三毛猫ちゃんになる

のかな?」


「ややこしいいな」


「長く生きてるといろいろあるの」


「なんだかそう言う話聞くとプティが巡り巡って僕のところに来たってのも

なんだか運命感じるし・・・縁を感じるな・・・」


「だね・・・私ももういろんなところに行くの飽きちゃったし」

「これからはずっとカノンちゃんちにお世話になっちゃおうって思ってる

んだけど・・・?」


「うん、そうだね、僕はそのつもりでいるけど」

「ずっといてくれていいよ・・・じゃ〜今日からよろしくね」

「さ、朝ごはん食べよう」


昨日までは朝食も昼食も夕食もひとりだったけど、これからはふたりで

ご飯を食べるんだと思ったら漢音さんは嬉しかった。


観音さんに家族ができた・・・しかも魔女。


(だけど魔女って言うくらいだから魔法使えるんだよな)

(え?どんな魔法が使えるんだろ?・・・人をカエルに変えちゃうとか?」


「あのさプティ・・・魔法とか使えるんだよね、魔女だから」


「うん、使えるね、いろいろと」


「どんなことができるの?」


「そんなこと言い出したらキリがないから」


「え?そんなにできることがあるの?」


「そうね、これからその都度小出ししていくから・・・」


「小出しって・・・なんだか怖いな」


「大丈夫だよ、カノンちゃんをカエルに変えたりしないから」


「ああ、やっぱりそう言うこともできちゃうんだ?」


「うん・・・だから魔女は毛嫌いされるんだよ」

「魔女ってある意味、犯罪者だからね」


「ああ、なるほど、分かる・・・たとえば、鼻をピクって動かしただけで

一瞬でどこかの銀行からお金盗めたりできちゃう訳だろ?」


「それってなにか魔女が出てくるドラマの見過ぎ」


「それに基本的に泥棒はやらないけどね」

「そんなことしてたら、すぐ堕落しちゃうでしょ」

「なんでも思い通りになっちゃうってのもつまんないよ」


「そうだね・・・たしかにね」

「毎日働きもしないでプラプラしてたら休日のありがたみも楽しみも

分かんなくなるからね」


観音さんはプティは意外としっかりしてるんだなって感心した。


「私、カノンちゃん好きになっちゃったから彼女になってあげても

いいよ」


「え?彼女?・・・まあ僕もプティのこと好きになっちゃったから来て

もらったんだけど・・・でも早くない?」


「遅いよりはいいと思うけど・・・」

「カノンちゃんが嫌だって言っても私は決めたから、彼女になるって」

「私にも目的できたから・・・好きな彼氏のために看板猫がんばるよ」

「ってことで改めてお世話になります、カノンちゃん、いい?」


「あ、うん、こちらこそよろしく」


魔女プティは観音さんのところまで来て自分の彼氏を優しくハグした。


とぅ〜び〜こんて乳。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る