127話 3-37 エピソード リエル
それはまだ、ETOが世間に認知される少し前‥‥
まだ真新しい青葉大附属高校の制服のリエルは事あるごとに丹羽さんに連絡を取りアユを紹介してくれと頼み込んでいた
この日もVisionに連絡を入れ丹羽さんに連絡をした所だ‥
リエルはとにかく活発で行動力があり絶対音感とモノマネの才能で大ファンであるアユのコピーでVision動画に現れると瞬く間に有名になり小さい頃からテレビにも出ていた‥
ただ‥‥モノマネと言うジャンルには歌に関して否定的な声も多くリエルは次第にモノマネより自分の曲にシフトしていった
高級マンションの1室
「はぁ〜?!!」
スマホを見て怒り狂うリエル
「どうしたんです?リエル様?」
びっくりした女性スタッフ達
「何これ!!」
リエルはすぐさまスマホで電話するも相手は留守電に繋がる。
スマホをソファーに投げつけ顔を両手で覆い隠し
「待って‥ムリ‥だれ!ETOって!!」
リエルはソファーにうつ伏せて動かなくなった‥‥しばらく無言が続きリエルが
「今日は帰っていいわよアンタ達‥」
スタッフの一人が
「今日の撮影は‥」
「‥無し‥」
もう一人のスタッフが小声で
「午後からワンダードールとのコラボ‥」
「ワンドルにキャンセル入れて‥」
スタッフは、またかよ‥と言う様な顔で下を向く。しばらくするとスタッフ達は
「失礼します。」
小声でリエルに挨拶しながら次々と帰って行った。
その日の夜
リエルのスマホが鳴る。リエルはぐったりした感じでスマホを耳に当てた‥電話の向こうから
「リエルか?さっきは電話出られなくて悪かった!」
丹羽さんだった。
リエルは何も答え無い。丹羽さんは何かを察したかのようにため息をつくと
「‥‥お前、ETOの曲はまだ聴くなよ?」
リエルは小声で「もう遅い‥‥」とだけ答えた。丹羽さんはまた溜め息をついた。
「今から行くから待ってろ!」
10分後
丹羽さんがリエルの家に着きリビングの扉を開けるパソコンと熱帯魚の水槽の明かりだけが付いていてソファーにはリエルがうつ伏せていた
丹羽さんはリビングの明かりを付け頭を掻きながら
「また派手にやったなぁ‥」
床には割れたグラス、画面の割れたパソコンが1台転がっていた。丹羽さんは割れたグラスを片付けながら
「アユの件‥悪かった‥俺の責任だ‥」
「‥‥」
ガラスを片付ける音だけが響く
「‥‥うの‥‥‥‥‥‥‥違うの!」
リエルは急に大声で
「私でも分かるもん!‥どうあがいてもETOには勝てない‥」
「私がアユでもETOを選ぶもん!!」
リエルの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。
「私が一番でなきゃヤダ!!」
「一番だったもん!!」
丹羽さんは黙ってリエルにハンカチを渡した。ハンカチをバッっと受け取り涙を拭くリエル
「‥‥誰もお前とETOを比べちゃいない。」
‥‥‥‥‥‥‥‥
「それに俺はお前がアユに負けてるとは思っちゃいない‥」
「ウソ!」
「話を反らさないで!!ねぇ!ETOって誰?」
「‥‥‥‥‥‥‥」
「‥私ダサ過ぎる‥自信なくなっちゃった‥‥辞める」
しばらく沈黙が続き丹羽さんは立ち上がった
「もう辞めろ!辞めろ!それだけ元気があれば大丈夫だ!!」
丹羽さんはリエルの頭に手を置き
「もう気が済んだろ?いつまでも俺を茶番に突き合わせるな!」
‥‥‥
「え〜〜!!またダメ〜?」
リエルは丹羽さんに抱きつく‥丹羽さんはリエルの頭をグイグイ押しながら
「毎回、毎回拗ねる度に手の込んだ演技しやがる!」
「わざわざご丁寧にパソコンまで壊しやがって!!」
「それ、小道具です〜!」
とノートパソコンを持ち上げた
‥‥‥‥
「あ‥でも今回はマジ凹んだ‥この鋼のメンタルでもね‥‥‥‥ETOの声はマジで反則だわ‥」
丹羽さんはリエルを見ずにガラスの入った袋を結んでいた。
翌朝
どこからともなく聞こえETOの曲
「リエル様!リエル様!」
起きて下さい!スタッフがリエルを起こす。リエルは寝ぼけて抱き枕に向かって
「ETO様〜♡」
としがみついている。目が覚めた。リエルは顔が真っ赤なり寝室を飛び出し
「だれ!朝からETOを流してる人!」
スタッフのほとんどがETOを聴いていた。リエルは真っ赤のまま
「今日からウチはETO禁止〜!!」
‥‥‥‥リエルは性格こそトゲがあり、あまり好かれるタイプではないが、歌に関しては素直でアユやETOのように努力では得られない神がかった才能に対して惚れやすい依存性質を持つ事が逆にモチベーションの低下につながっているようだった
歌コンの時、一時的にモチベーションが上がるもやはりETOに会えなかった事でグランプリもあまり意味をなさなかった
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