【5】ヴァンさんのために絶対にお仕置きしちゃうぞ!
リリアのストーカー被害に悩むヴァンさんのために、僕はお仕置き作戦を実行しようとした。
だけど作戦その一は何も知らないアリサの手によって阻止されてしまう。
代わりになぜかナイスガイの商人コブラさんがレッドスライムの餌食となり、丸裸にされちゃったんだ。もうレッドスライムから服を取り戻すのが大変だったよ。
そんなこんなでどうにかトラブルを乗り越え、僕達はダンジョンに向かって進み始める。
でもみんなのテンションは激落ちしていた。コブラさんの丸裸を見たせいだろうか。特に女子達のテンションが低い。
アリサやエリーゼさんに関しては何かをヒソヒソ話している始末だ。
「男の人のあれって、あんなに大きいんだ。じゃあヴァンさんもおっきいにかな……でも、でも、さすがに……」
隣りにいるリリアさんは何やら危ないことをブツブツと呟いている。なんでかヴァンさんをチラチラ見ているけど、敢えて気づかないふりをしておこう。
何はともあれ、作戦失敗だ。せっかく思いついたいい作戦だったのに。
でも、アリサの戦闘力を考慮しなかった僕が悪いか。
まあいい。次の作戦は絶対に失敗しない。なぜなら、食事の時に一服を盛るからね!
「お、見えてきたぞ!」
コブラさんの声を聞き、僕達は遠くを見ると台座があった。
ダンジョンの出入り口であるゲートだ。確かに話によると、真ん中に設置されている水晶に触れるとダンジョンへ入るらしい。
本来ならこのまま突入したいところだけど、僕はそうならないようにある提案をする。
「あ、みなさん。ここで少し休みませんか?」
「あら、お疲れですかレイン様?」
「うん、ちょっとだけね。ダメかな?」
「そんな訳ありません! アリサ、喜んで休みます!!!」
「そうね、ここから先は少し長いし休みましょうか」
「長いんですか? じゃあ賛成です」
「んじゃここらで休もうか。そうだな、今回は俺の奢りで水を提供してやるぜ」
「いいのかおっさん? それ補充品じゃ――」
「細かいことは気にするな。どうせまた来る」
よし、これでみんな休む雰囲気になったぞ。しかも都合よく水をもらえるし。
にしし、それじゃあ僕はコブラさんが分けてくれた水を渡していこう。
今回やる作戦は、水だと思ったらお酒作戦だ。ビックリして吐き出しちゃうかとしれないし、頑張って飲むかもしれない一品にするのだ。
でもリリアさんなら頑張って飲んじゃうかもね。そうなったら僕の作戦勝ち。
酔っ払ったリリアさんは哀れのない姿を見せ、ヴァンさんに見られる。そして正気に戻った時に「あんな姿を見られた、恥ずかしい」と思わせるのがこの作戦の肝だ。
しかもヴァンさん以外にもギャラリーがいるから恥ずかしさ激増さ。
「あ、コブラさん。水運び手伝います」
「お、ありがとよ坊主」
よし、作戦の第一段階はクリア。
あとはこの水をお酒に入れ替えてっと。
あれ? お酒がない。おかしいな、確かビン酒を一つポーチに入れていたはずなんだけど。
うーん、これじゃあお仕置きができないなぁー。うん、なんか妙にどす黒いきのみがある。
これ、さすがに毒が入っていそう。エキスでも入れたら死んじゃうかも。
そこまでしたい訳じゃないし。うーん、仕方ない。せっかくの作戦だけど中止だ。
僕は肩を落としながらみんなの元へ向かう。
そして何事もなかったかのように水が入った木のコップを配り、何事もなかったかのようにアリサの隣に座った。
「どうしましたか、レイン様?」
「なんでもないよ。あーあ」
せっかくのいい作戦だったのに。まあ仕方ない。打つ手がなくなったんだから静かに休憩しよう。
そういえば美味しそうなジャーキーを買ったんだった。せっかくだから食べようか。
「あ、それ」
「ふぃに?」
「それ、私が作ったジャーキーです」
「ふおなの?」
「はい。今回は新しい試みもしたんですが」
へぇー、リリアさんってジャーキー作れるんだ。でも新しい試みってなんだろ?
僕が気になっていると突然身体が熱くなり始める。なんだかわからないけど、バクバクと心臓が蠢き、暴れていた。
あ、あれ、なんだこれ? なんでこんなに身体が熱くなっているんだ!?
「うぐぅー!」
「レイン様? 大丈夫ですかレイン様!?」
あ、ヤバい。意識が飛ぶ。
う、うぅ、苦しい。こんな思いをするのは転生前の時ぐらいだ。
僕の意識は闇に飲まれる。そして、そのまま気絶したのだった。
★★★★★
う、ここは……あれ、僕は生きてる?
「あ、レイン様! よかった、目を覚ましてくれて」
「アリサ……僕、どのくらい寝てた?」
「一時間ほどです」
「結構寝てたんだね。すぐに出発しなきゃ」
「あ、まだ寝てたほうがいいです」
「そうもいかないよ。早くクエストを達成しなきゃ」
僕はアリサを退かし、身体を起こして動こうとする。だけどすぐに異変に気づく。
なんだか手が小さい。アリサを見ると、なんだかアリサが大きくなった気がした。
というか、なんだか僕の視線が低くなった気がする。あれ、これは何が起きたんだろう?
「えっと、アリサ。僕ってどうなってるの?」
「その、かわいくなってます」
「はい?」
「小さくなってて、ホントかわいらしくなってて、ぐへへ」
小さくなってるって、えー!!?
僕は慌てて自分の姿が見られる何かを探した。すると、いい感じに立てかけられている鏡を発見。
そして自分の姿を確認すると、アリサが言っていた通りに身体が小さくなっていた。
これは、おそらく十歳ぐらいの僕だ。うわ、なんで幼くなっているんだ。
「ああ、ああ、ああ! かわいい、レイン様かわいい!!!」
「どうして、こんなことに。というかなんで幼くなってるんだ……」
「レイン様、レイン様、レイン様! あの、あの、あの! ギュッてしてもいいですか!!?」
「え? いや、今そんなことしている場合じゃあ――」
「ガマンできません! 抱っこさせてくださ〜い!!!」
幼くなったことに気が向いていたせいか、アリサの暴走スイッチが入っていることに気づいてなかった。
これヤバいぞ。このまま捕まったら何されるかわからない。
逃げなきゃ。ここからどうにかして逃げなきゃやられる!
「レイン様、抱っこさせてぇ〜!!!!!」
「ひゃ、ひゃあぁぁああぁぁぁあああぁぁぁぁぁ!!!!!」
母様、ごめんなさい。
僕はアリサにやられました。ああ、あんなことやこんなことをやられるだなんて。
もう僕は、立派な男になれません……
う、うぅ、屈辱だぁぁぁぁぁ!!!!!
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