第15話「悪役令嬢、蹂躙ス」
今回ちょっとグロいです、苦手な方はご注意下さい。
バオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
音と光とで華々しくも騒々しく、広間の天井近くに登場した俺様を見て王族貴族連中はあっけにとられた後、大騒ぎになった。
「な、何だこいつは!?」
「金属製の、巨大な箱のようにも見えるが、一体何だあれは!?」
「裏面はまるで内臓だぞ、生物なのか?」
「あんな生物があるか!魔物だとしても見た事が無い!」
「衛兵を呼べ! 早く!」
「どけどけ! どけやオラああああああああああ!! 踏み潰されたいかああああああああああ!!」
「しゃべった!? 本当に何だあれは!?」
「おい下がれ! 降りてくるぞ!」
ムカつく奴らとはいえ、人を踏み潰したく無かった俺様は、大声で下にいる連中に警告を促した。デコトラは安全第一なのだ。
本来重さはどうとでもなるようだが、だからと言って床が抜けても困るので俺様はそっと、重量感を感じさせるように着地した。ズン、という振動が広間に広がる。
「俺様を呼んだか主ぃいいいいいいいいいい! こいつらを皆殺しにすれば良いのかぁああああああああ!?」
いい加減腹が立っていた俺様は、周囲を威圧すべく思い切り叫んだ。
ん? リアが「やれ」って言ったらどうしょう。まぁリアの性格から言ってそんな事は言ったりしない、と思う。言わないよな?勢いで言っちゃったけど俺様人を1人殺すのだって嫌だよ?言わないよね?
「そうしよっかぁ……、もう、こんな人達、どうなっても良いなぁ……」
言いそうだー! やばい! 時と場合を考えるべきだった、今のリアはかなりヤバめの精神状態だぞ。とにかく今はリアを安全な所に避難させないと。
「と、とにかく何をするにしてもだ、まずは俺様に乗れええええええええええええええ!」
慌てて俺様は運転席のドアを開いて階段を出し、リアに乗るように促した。リアは言われるままにすぐ上の席にさっさと乗り込んで来てくれた。
「何だ!? 怪物の体内に入ったぞ?」
「あれは、ゴーレムとかそういった類のものなのか?」
「だとしてもあんなものは見た事無いのには変わらんぞ?」
周辺は大騒ぎで俺様達を見ているが手を出してくる様子は無い。なら安全な所にさっさと逃げてしまえばこっちのものだ……あれ? 身体が動かない?
ガオォォォ……、ガオォォォ……、と俺様の身体から音がする。
リアがいつの間にかアクセルの踏み心地を確認するかのように空ぶかししているのだ、この間とは違って繊細なアクセルワークをしている。クラッチもいつの間にか覚えていたらしい。
まずい! この状態だと俺様は自分の身体を思うようにできない!
「リア! やめろ!周辺には人がいる! こんなでかい物が走り回ったら大怪我じゃ済まないぞ!」
「良いじゃない、もうみーんな
やばい、リアが完全にブチ切れて目が据わってる。
このままじゃ俺様を使って大量虐殺が始まるぞ、そうなったらもう取り返しがつかない。
俺様が『罪憑き』になるのはともかく、リアにそんな事をさせるわけにはいかん!
【ご案内します。良いじゃないですか、もうこのさいまとめて駆除しましょう】
「お、【ガイドさん】、話わかるねー」
「【ガイドさん】までー!? 駄目だからね? 俺様は人殺しの道具じゃないからね!? 頼むから【ガイドさん】もリアを止めて!」
【ご案内します。私の判断基準ではこの周辺には『人』は限りなく少ないようですが? 人じゃないものを撥ねても人殺しにはならないでしょう?】
「それ、こいつらみんな人でなしって事!? いや俺様もちょっとそう思うけど! 駄目なものは駄目だから! お願いだから何とかして!」
【ご案内します。ちっ、仕方無いですねぇ、では只今より行動の最適化をいたします。
『スキル:
「え!? 良いの!? はーい!」
【ガイドさん】が渋々と言った感じで何かをした後リアを
「やめてええええぇぇ!」
俺様が止める声も聞かず、車体はすごい勢いで人々に突っ込んでいった。周辺の人々は俺様達が特に動く事も無かったので徐々に徐々に近づいて来ていたのがまずかった。
リアはその中に思い切り俺様を飛び込ませたのだ。
「何だ!?動いた!」
「にげろおおおおおおお!!」
「きゃああああああああ!!」
当然、人々は悲鳴を上げて逃げまどい、逃げる暇も無い人々はまともに俺様に跳ね飛ばされていった、ああ、終わった……。フロントガラス一面に赤い花が咲く。人の命の華だ。
「あははははははははははははははは!!」
リアはアクセルを吹かし、見事なハンドルさばきで次々に人を血祭りに上げていく。
ああ、もう駄目だ、もう何十人が犠牲になったか……。もう俺様のフロントガラスや車体は赤黒い花びらでペイントされてしまっている。
【ご案内します、前が見にくいかと思いますので綺麗にさせていただきますね】
【ガイドさん】がウインドウォッシャーとワイパーを操作してフロントガラスを綺麗にしてるけど、そういう事をしてる場合じゃないよね?
ああ、タイヤに無数に嫌な感触が……。ガリって言ってる……ボキって言ってる……。
「あれあれー? みんな隅に逃げちゃったねぇ……」
周辺に(生きている)人がいなくなったのか、リアはホールの中央に俺様を停車させた。ああ、もう辺りは血の海だ。ほんの数十秒のうちに数十人が犠牲となってしまっていた。
周囲の人は壁際にまで逃げてしまい、既に出入り口のドアには人が殺到している。
「【ガイドさん】! 止めろって言っただろ! ああもうどうしたらいいんだよこれ」
【ご案内します。いえ、既に問題は無くなっております。”誰も死んでおりません”から】
俺様が周囲の惨状に茫然としていると、【ガイドさん】が冷静な声でアナウンスしてきた。
「何言ってんの!? こんなに大勢が……、あれ?」
俺様がふと周辺を見ると、死体の山から暖かい色の光が立ち上っていた。周辺の血の海も徐々に徐々に小さくなっている? まるで時間が戻っているようだ。
先程まで倒れていた人達の身体の損傷が次々と修復されてゆき、すでに起き上がっている人もいる。
「え? あれ? 生き返った?」
【ご案内します。その通りです主様。これが『スキル:
ですので、いくら撥ねられようが、轢かれようが完璧に復元・修復されます】
「え? つまり俺様が人にいくらダメージ与えようが無効になるって事?」
ムチャクチャすぎるだろそのスキル。今までの事故を起こしたトラック達から殺意レベルで羨ましがられるなこれ。
【ご案内します。その通りです、スキルのレベルを上げれば与えたダメージ以上の治癒効果を与えられますので、轢かれたり撥ねられたりする程、皆様は健康になれます。
ただし、身体的損傷は直せますが既に失っている手足は復元されません】
「嫌すぎるスキルだな……、もう少し発動条件何とかならないの?」
【ご案内します。その辺は我らの創造主たる神の趣味ですので諦めて下さい。
さて、まだまだ主の鬱憤は溜まっておられるかと思います。
では『スキル:衝突治癒LV1.05』を取得いたしました。これで今からは皆様少しずつ健康になっていきますので思う存分轢き殺す、いえ、轢き生かして下さい】
「【ガイドさん】!? 何その
【ご案内します。ジャバウォック様の前世の言葉にもあるじゃないですか、『バカは死ね』と。
失礼、『バカは死ななきゃ治らない』と、さぁ思う存分バカどもを治癒させて行きましょう】
あ、駄目だ、この人(?)もかなりブチ切れてたみたいだ。多分周囲の人たちにとって最大限の嫌がらせになる事を狙ってこのスキルを選んだみたいだ。
「ガイドさん!?むしろ煽ってるよね!?死ななきゃ何をしても良いというのとは全然違うと思うんだけどなぁ!?」
【ご案内します。ちなみに撥ねられたり轢かれたりする瞬間は普通に痛みを感じますし、治癒が始まるまでの瞬間も普通に痛いので、中途半端だとかえって苦しませるだけです、ひと思いに殺ってあげて下さい】
「へぇ……、んじゃ、次行ってみようかー!」
「やめてええええぇぇ!」
こうして、リアは次の大量虐殺?虐生?を始めた……。もう何がなんだかわかんねーよ。
次回、第16話「悪役令嬢、復讐ス」
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