アルテリアの誕生とフィクサーダンサー

倉村 観

第1話 宇天町へ

2028 年 日本 愛円市 宇天町


それは、現代の日本に置いて、唯一隔離された街。


ここは、閉鎖されている事もあって、現代の日本と言うには、あまりにも、異質で荒んだ街だった。


 

 街の天空は常に、ピンポイントで、青黒い雲に包まれていて、道行く道は、正体不明の汚物にまみれ、まるで廃墟のような古びた建物ばかりで、本来居住することが、不可能なその廃墟の中には、夥しい人が身を寄せ合って生きている。


 そして一番のこの街の以上なところは、そこに住まう人だ。この街の住人は殆ど子供で、そして道行く人は皆、ガスマスクを向けていることだ。


 その街の異様っぷりは、まるで隔離の外の日本とは、全く別の国、別の世界とまで言っていいほどだった。


 そんな街のあるとおりを、ガスマスクをつけずに歩いている少年がいた。


 少年の名前は『御手洗みたらし 御善ごぜん

 

 齢は10歳で、つややかな金髪が特徴的な少年だ。 


ゴゼンはガスマスクを付けていない変わりに、雨も降っていないのに、傘を指していた。


ゴゼンは傘を指していたせいで、前が見えないこともあり、ガコン! と音を立てて、自身の肩と人の腕がぶつかった。


 相手は自分よりも、年が5つは上であろう、男の五人の集団で、タンクトップから露出した肌は筋肉質な肉体だったが、それはボディービルダーというより、引き締められ、極限まで、絞られた、野生動物そのものだった。


「おい!!」


 

 ゴゼンは、軽く会釈をしてから、その集団を通り過ぎようとするが、張り上げられた怒声によって阻止させられてしまった。 この街は、他県では当たり前の法、秩序から外れた街、暴力が物を言うこの街では、ひ弱で小さな少年が、でかい顔してあるけるほど甘くはない。


「おい!! テメェ誰に方ぶつけてんだクソガキィ!!」


 ゴゼンは肩がぶつかった体格の良い、少年に因縁をつけられ、胸ぐらを捕まれ、素早くナイフを眼の前に突きつけられた。


「おい…コイツ! マスクしてね〜やん! 馬鹿じゃね? 死にてえじゃねぇのか?」


「ギャハハハ濃霧にやられて死にてぇんじゃか!!」


「…どけ。」


集団のうちの四人は、ゴゼンの顔を見ていた嘲り笑う、しかしその四人の集団の後ろに、唯一人だけ笑っていなかった奴がいる。ソイツはあとの集団を避けて険しい顔でゴゼンの様子を見た。


 「おい藤四郎!! 何だよ急に」


嗤っていた集団は、深刻な顔をする男を藤四郎と呼び、困惑しら声をかける。 それに対して、今まで一言も喋っていなかった藤四郎はその口を開いた。


 「馬鹿野郎!! テメェらこの街の住人がガスマスク着けずに、外ほっつき歩くわけねーだろうが!!【エルゲージ濃霧】を知らねえんだ!!」


「「「ッ!!」」」


藤四郎の言葉を聞いた、他の四人は目の色を変え、先程とは、別人のように顔と空気に尋常じゃない緊張が走った。


外来者よそもの…。」


 四人の内の一人がそう呟くと、皆、急に無表情になったかと思えば、みな腰のベルトに隠してある、ナイフや、メリケンサックなどの小型の武器を各々が取り出して、ゴゼンを囲んだ。


「おい…ガキィ…。テメェ今から、なにされるかわかるか?」



藤四郎が低い声で尋ねる。


そのただならぬ気配、自らに向けられた。覚悟をはらむ【殺気】をゴゼン自身は、感じていたが、ゴゼンはなお、冷や汗一つかかずに初めて、その口を開き、藤四郎に返答した。


「あぁ……この街の情報をオレが他県に漏らさぬよう、ここできっちり暴力でカタにはめるつもりだろぅ?」


ゴゼンの返答を聞いた。藤四郎は、懐からナイフを抜きゴゼンを睨む。


「あぁ……そのとおりだ…だが一つだけ違うなぁ…カタにはめるんじゃねぇ…。もっと確実な方法がある。」


「ん?」


「お前…ここ【宇天町】をせいぜい、危険を隔離するだけの都道府県だとでも思ってんだろ?なにか勘違いしてね〜か…」


「……。」



ゴゼンの舐め腐った態度を気にも止めず、藤四郎はファイティングポーズを取りながら言葉を続ける。他の四人も、ゴゼンをいつでも襲えるように、陣形を組む。


「ここはなぁ、そもそも日本じゃねぇ、ワケありと見捨てられた奴の自治国だ……。 ここじゃ日本の法は適用されねぇ。 てめぇをぶっ殺して口封じするのが、1番のノーリスクハイリターンの最善手なんだよ……。」


「そうか……それは奇遇だなぁ……。」


「んだと……。」


座った目のまま、ゴゼンはポキポキと拳を慣らしながら、今度は藤四郎を睨み返す。


「俺もなぁ……アニキに、言われてんだよ……。 絡んでくる宇天町のクズどもなら、ぶっ殺しても良いってな……。」


「はぁ? テメェチビのクソガキのクセに俺たちに勝てると思ってんのか? 」


「あぁ……すくなくとも俺が言うのはなんだが、こんなオレみたいな小学生1人に寄ってたかろうとするヤツらなんぞなら、余裕だな。」


それを聞いた藤四郎の頭に血が上る。


「上等だ……。 おいテメェら手加減は要らねぇこのガキぶっ殺すぞ!!」







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