HiGH&LOW THE 戦国〜刺激満載のライブエンターテインメント
LDHがドラマ・映画等で重層的に展開しているシリーズ『HiGH&LOW』。
初の戦国を舞台にした『HiGH&LOW THE 戦国』が新宿のTHEATER MIRANO-Zaで上演された。
舞台版としては宝塚歌劇団宙組での上演に続き、2作目である。
最初のテレビシリーズを踏襲し、5つの国からなる世界を舞台にした物語である。
劇中でも語られるが、複数の世界が存在するメタワールドの世界観で、我々の時間軸とは異なる世界ということが、冒頭、登場人部の1人が織田信長と夢で重なることで示される。
今回の舞台は、5つの国のうち3国がぶつかる物語となっている。
この見せ方が面白い。
本作はライブエンターテインメントと銘打たれているが、まさにあの手この手で客を楽しませ、ノせてくる。
まず3国が砂の国、火の国、水の国とRPG形式で3つの異なる性格が与えられ、それが衣装にも反映され、視覚的にも分かり易いようにされている。
ここは、宝塚歌劇団で大勢の組子さんの衣装を担当している有村淳ならではの手腕である。
三国の衣装を国毎のテイストを持たせ、スタイリッシュにデザインすると同時に、宝塚よろしくトップ(それぞれの国のリーダー)、2番手、そして、その国の人々と、デザイン、布、飾りなどで階層を表すあたり、お手のものだし、観ていて美しい。
そして、その三国の性格も物語上、別れている。
GENERATIONSのボーカル、片寄涼太がリーダーを勤める白の須和国は、作品の中で大きな物語を進める芝居パートを担っている。
2番手は、宝塚歌劇団の瀬央ゆりあ。
その男役としての存在感が見事。
この2人の対比のビジュアルが美しい。
今回初舞台となる片寄涼太だけれど、見事なスタイルで宝塚的な表現をするならフェアリータイプである。
ちょうど少女マンガのイケメンが具現化したような印象。
男役としての瀬尾ゆりあの存在感も見事なので、2人が並んだ時に、不思議な空気が醸し出されるのである。
そして、その下に劇団EXILEの小野塚勇人、劇団4ドル50セントのうえきやサトシを配し、この2人が物語全体のコメディリリーフの役割を担っている。
最近、舞台での活躍が目立つ小野塚とうえきやの掛け合いが客席をなごます。
私は初日すぐと、リセールで買った中盤に観たのだが、舞台は生き物という通り、回数を重ねて2回目の観劇時は笑わせてもらった。
他の出演者達のパフォーマンスもこなれてきていたので、もう一回観たいと思ったら、最初は出ていたリセールが中盤には出てなくて残念。
人気が出たということだろう。
続いて、THE RAMPAGE のボーカルRIKU率いる赤の尊武国は、ダンス・アクションのショーパート担当というのだろうか、派手で雄壮なパフォーマンスをみせる。
特に鍛治達の荒々しくパワフルなパフォーマンス(RAG POUNDを中心とした男性ダンサー)で度肝を抜き、続いたRIKUのハイトーンで力強いボーカル、そして浦川翔平(THE RAMPAGE)のラップが重なる場面の迫力は見事で新しいライブエンターテインメントの始まりに相応しい。
これまで『天使について』と『フィーダッシュタント』という小劇場系のミュージカルに出演してRIKUはその歌声とタッパのあるスタイルが見事で、もっと大きな舞台に出てもいいのに、、、と思っていたのだが、本作では見事にその魅力を出していた。
浦川翔平も『フィーダッシュタント』で好演しており、また、ライブでもその身体能力を披露していてミュージカルにもっと進出して欲しいと人の1人だったので、今回、ラップをはじめとして実力を発揮していたのが嬉しい。
そして宝塚歌劇団から参加の水美舞斗の率いる青の乃伎国は、大人の繊細な抑えた雰囲気で、ロマンティックなパートを担当している。
水美の歌に乗せ2番手の藤原樹(THE RAMPAGE)がダンスする場面は幻想的だった。
円盤化されるようなのでネタバレは避けるが、後半の流れが美しく繊細なものとなったのは、水美•藤原の2人が持つ上品な艶気のおかげだろう。
そして、ここに須和国の小野塚、うえきやと共に、物語を動かす櫻井佑樹が加わる。
この3国に加え、黒幕として阿部亮平演じる黒の盗賊の一味が登場。
“全員主役”がテーマのシリーズらしく、それぞれの出演者の見せ場が用意され、舞台が進んでいく。
本作を観ていて、やはり歌、ダンス、芝居、殺陣と様々なパフォーマンス要素を詰め込める戦国時代は“ライブエンターテインメント”によく合うのだなぁ、、、と思った。
劇団☆新感線にも通じるのだが、動と静、諍いと和解などの見せ場がテンポ良く出てくるのだ。
そして、戦国時代という非日常の世界のため、客席にいて難しいことに頭を巡らせず、舞台を楽しむことが出来る。
また、登場人物がみな華があるのが良い。
特に、リーダーの3人が全く異なる魅力のオーラを放っているので、場面が変わり国も変わると舞台上の空気がガラッと変わるのだ。
GENERATIONS、THE RAMPAGE、宝塚歌劇団という錚々たるメンバーなのだから当然と言えば当然なのだが、登場してリーダーですと紹介されれば、こちらもあっさりと頷けるオーラなのだ。
また、宝塚歌劇団の男役が男性に混じり歌う時、ネックとなるのが歌のキーなのであるが、片寄、RIKUが澄んだハイトーンボイスなので、水美の歌声と見事にマッチしていた。
この3人の歌唱は聞き応えがあった。
そして、それぞれが歌、ダンス、殺陣、演技と次々に力を披露していくのだから贅沢だ。
しかも3国が三つ巴となるクライマックスの前には、中詰めのように各国のリーダーと2番手のナンバーが一曲ずつ用意され、背景には歌詞も浮かぶという丁寧さ。
観客のツボを押さえた作りになっていてお見事である。
そして、この作品ではダンスパフォーマーも多く出演していて、彼らのダンスが見事だった。
例えば合戦の場面で、迫力のある殺陣と同時に、それぞれの国のテーストに合わせた振りでダンスバトルを行うのである。
その迫力といったら。
また、私が好きだったのは、この作品の軸となる龍の存在を、両腕が金、それ以外が黒のダンサー達が絡まり腕で龍を表現するところ。
これは、観ていて引き込まれた。
また、俳優、男役、ボーカル、パフォーマーとそれぞれの出自のメンバー達が舞台上でぶつかる異種格闘技のような面白さもある。
長年、宝塚歌劇を観てきたものとしては、現役のジェンヌ2人が違和感なく、作品に溶け込んでいたのも嬉しかった。
『ポーの一族』、演舞場版『るろうに剣心』のようにOGが男役として主演するケースも出てきているが、本作のように現役男役が男として評価され、出演するということは嬉しい。
(昔話になるが、樹里咲穂が現役時代に帝国劇場の『SHOCK!』(まだタイトルにEndlessが付いておらず、物語も違っていた頃)は、確か主人公の義理の姉で主人公を心配して男装し別人になりすますという形で男装を披露していた)
やはり、立ち姿の姿勢•殺陣•芝居やダンス時の見栄の切り方は、音楽学校時代から精進してきただけあって、宝塚の男役には一日の長があり、その美しさ、迫力を外部の舞台でも披露して欲しいと思うからである。
また、灰色の階段を模した周り舞台を効果的に使ったセットと、プロジェクションマッピングの相性も良かった。
約2時間半、休憩なしでテンポよく進む舞台に適したセットと映像だった。
円盤化と共に、続編製作が、今日、発表された。
次はどのような世界を見せてくれるのか、楽しみなシリーズである。
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