第2話


 俺は、酒場で聞いた情報をもとに町外れにある奴隷商に来ていた。


 見た目は、普通の家みたいだったが、隣接された大きなテント小屋みたいなのが気になってしまい。


 そちらに足を向けると、ちょうど中から無精ひげを生やし痩せた中年の男が出てくるところだった。


 目には生気がなく、やる気のカケラも見えない。


 それでもと思い。


「あの~。こちらで奴隷が買えると聞いてやってきた者ですが?」


「あ、はぁ……。お客さん⁉ もしかしてお客さんですか⁉」


 男は、猫背になった背中を伸ばし、目を輝かせていた。


 酒場で聞いた通りだ。


 あまり繫盛していないのだろう。


 俺以外に客が居ないのもうなずける。


「はい、客としてきました。性奴隷を買いに来たのですが、ありますかね?」


「へ? 戦闘奴隷ではなく? ……性奴隷ですか?」


「戦闘奴隷なんて買ってどうするんですか?」


「いえ、だってその首飾り……勇者様ですよね?」


 男は、俺の首にかけられた銀色のプレートと俺の目を交互に見ながら言った。


「まぁ、一応勇者様の端くれですね」


「でしたら、娼館にでも行かれた方が安上がりかと思われますが?」


「いやね、聞いたところ娼館に俺好みの女の子がいるとは思えないんですよね。それでここまで足をのばしてやって来たという話なんですよ」


「う~む。娼館に行ってもお眼鏡にかなうお相手が居ないとなれば、うちでは厳しいかもしれませんよ」


「いや、こういってはなんですが、俺。ロリコンなんですよ」


 俺が、頭をかきながら言うと、おっさんは何のことか意味が分からないらしく?マークを浮かべていた。


「えぇと、ですね。つまり、幼女を買いに来たってことなんです!」


 言ってやった!


 ついに、現代日本では逮捕案件な言葉を堂々と言ってやった!


 それなのに、おっさんは釣れない。


「ん~。申し訳ございませんが、今は、ご期待にそえる奴隷は居ませんね……」


 おっさんは、がくりと肩を落とし、とても残念そうな表情を浮かべる。


 だが、おかしい。

 

 酒場で聞いた話では、幼い見た目をした奴隷が居ると確かに聞いたのだ。


 もしかすると、このおっさんは嘘を言っているのかもしれない。


 なにせ、勇者様割引ってのは破格の安値での取引を成立させてしまうものだからだ。


 なにせ9割引きである!


 それは、どんな取引でも成立する。


 娼館に行って遊ぼうが、酒場で飲み食いしようが全て9割引きなのだから!


 つまり、奴隷を9割引きで買われて損をするのが嫌だから嘘を言っていると言う可能性があるのだ!


 だから俺は、


「まぁ、こうして来たのも何かの縁。せめて性奴隷と言うのを見せてはもらえないでしょうか?」


 そう言って笑みを浮かべて見せた。


「はぁ……。勇者様がそうおっしゃるのでしたら……。ですが、うちは規模も小さく品揃えもあまり良い方ではないので期待だけはしないでくださいね」


 おっさんは、猫背になりながらとぼとぼと、テント小屋の中へと入って行く。


 それに、ついて行く形で俺も中に入ると――!


 先ず目に入ったのは、屈強な男達だった。


 檻に入っているわけでもなく手枷や足枷等も見られないから、ここの見張り役なのかとも思ったが。


 足元には、値札の代わりに木の板で金貨30枚と書かれていた。


「あの~。もしかしてですが、彼らが戦闘奴隷と言うものでしょうか?」


「あ、はい! もしかして気が変わって買われるようでしたらお安くしますよ!」


 なぜか、おっさんは、目を輝かせていた。


 仕入れるのにも相応のお金がかかっているだろうに……


「あの~、見たところ一押しの商品に見えるですけど俺なんかに売っちゃってもいいんですか?」


「良いも悪いも勇者様に貢献すれば、その分国からの補助を受けれますので我々に損はないんですよ!」


 なるほど、それで食ったり飲んだりしても嫌がられなかったわけか……


 じゃぁ、このおっさんはいったい何を隠しているんだ?


「いえ、俺、男には興味ないんで、当初の予定通り性奴隷を見せて下さい」


「そうですか……」


 おっさんは、肩を落とすと、とぼとぼと奥に進み始めた。


 そこで見た、女性達はどれも綺麗と言うには及ばず。


 どこにでも居る普通の女性が化粧をして色っぽい服を着ているだけだった。


 当然、俺のムスコが反応するはずもない。


「あの~。これで、全部でしょうか?」


「あ、商品としてだけなら、この奥にまだ二人居ますが……一応見ていかれますか?」


「はいっ! せっかくなので!」


 ふふふ。


 おそらくは、その二人ってのが当たりなのだろう。


 戦闘奴隷が金貨30枚。


 性奴隷が金貨10枚だった。


 さて、残り物には福があると言うが……


 俺は、もう――この奥に居るであろう二人を買うつもりで財布の中身を確認していた。


 ――すると!


 居たのだ!


 推定年齢10歳前後の二人が!


 彼女達は、薄汚れた白い布を羽織っているだけだった。


「すいません! この二人まとめていくらですか⁉」


「へ? あ、いや、こちらは勇者様がおっしゃいました条件に該当しない商品でして」


「俺は、いくらか? と聞いているんだ⁉」 


「で、ですが、彼女達には、何も教えていませんし、日常生活を補佐する役目すら果たせないような品でして!」


「俺は、いくらか? と聞いているんだが⁉」


 さすがに二度も同じことを言ったのだからこれで売ってもらえるだろう。


「分かりました。では、少しお待ちください」


 おっさんは、ものすっごく申し訳なさそうな顔をしながら彼女達に歩み寄り。


 膝を折ってしゃがみこむと、なにやらひそひそと内緒話をしていた。


 すると、女の子二人は見つめ合ってから頷き合うと立ち上がり俺の前へと歩み寄ってきた。


「私達、二人合わせて銀貨50枚になりますがよろしいでしょうか?」


「よし! 買った!」


 そう言って俺は、財布の中から金貨1枚を取り出しておっさんに手渡した。


「え、あの、勇者様! これは、いったい⁉」


「今後、似たような娘が入荷したら真っ先に俺に知らせてほしいんですよ。その手間賃込みですが、少なかったですかね?」


「いえ、そのようなお話であれば喜んで受け取らせて頂きます!」


 おっさんは、目をキラキラと輝かせて喜んでいた。


 まったく、喜びたいのはこちらだと言うのに。


 薄汚れているが、磨けば光る存在になると確信するほどのポテンシャルを秘めた娘を二人もゲットできたのだから。


 先ずは、宿屋に戻って風呂に入るとしよう。


 もちろん三人一緒にだ!

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