閑話 Side A ①
アリスは現実主義者だ。
だから、必要以上に期待はしない。
アリスはため息を吐いた。
創神教の信者数が少ない大陸の東側への聖地巡礼。見かけない顔ばかりで構成された聖騎士団。聖女を護衛するにしては安い報酬で集められた低級冒険者達。
そして、連絡が途絶えた数少ない仲間達。
間違いなく、今回はアリスの番だ。
精一杯抗うつもりではいたが、生き残ることは難しいだろうことも覚悟していた。
アリスは理想主義者だった。
目的に向って努力すれば、必ず願いは叶うと信じていた。
「本当に……何でこうなったんでしょう」
アリスが創神教の裏側を知ったのはいつ位前だったか。
いつからかアリスは創神教による被害者を増やさまいと密かに活動をするようになっていた。そして、気が付くと、仲間も増えていた。
このままいけば、悪しき創神教を抜け出し、その悪事を世に晒し、創神教を正すことすら可能だと思っていた。
しかし、現実は甘くなかった。
数前程前から、そんな夢を共に抱いた仲間達の負傷や死が増えていった。
それに合わせるようにして、若く序列も下の聖女であったアリスの行動に制限がかかるようになり、自由が無くなった。
そして、身動きが取れないまま、気が付いた時には手遅れで、仲間達は全員姿を消し、その終幕として、アリスは大陸最東端にある、聞いたこともない聖地を巡礼することを命じられたのだ。
「……本当に生き延びることに意味があるんでしょうか」
アリスが仲間の全滅を知ってから、今日に至るまで随分と猶予があった。
若輩で知名度も低いとはいえ、仮にも「聖女」であるアリスを殺すにはそれなりの準備が必要であったのだろう。
もしくは、アリスをそれほど脅威に思っていなかったのかもしれない。それとも、アリスを精神的に苦しめるためにわざと時間を空けたのかもしれない。
ただ、苦しめるつもりであったのなら、その選択肢は正解だった。
いつ訪れるか分からない「死」の恐怖と先に逝ったであろう仲間達への心苦しさ、そして一人残った孤独感。
強い後悔の中で理想を捨てるのには時間はかからなかった。
まだ生きて居たい自分と、もう諦めて楽になりたい自分。
そんな二律背反の中、アリスは最後の旅路で、歪な愛を込められた祝福《呪い》を背負った人物に出会うこととなった。
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