第46話 08話 クズ

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「転移魔法って最高。愛してるわ。王都までの長旅が一瞬で住むんだもの」

「そこまでか」

 帝国からの呼び出しが来てから、ずっと不機嫌だった姉さん。

 それが転移魔法で一瞬で帝国王都内へ。

 これには姉さんもご機嫌だった。

「大丈夫、一番愛してるのはレイジだから」

「ふふっ、ありがと」

 組んでいた腕をぎゅっと抱きしめる姉さん。


 今回帝都へ来たのは、俺と姉さんの2人きり。

 向こうさんのご氏名だった、何故か俺も。


「貴様ら、私を無視するな!!」

「「あぁ?」」

 俺と姉さんが声の方へ睨みつけると、周囲を兵士たちに囲まれていることに気がついた。

 兵士たちは、俺と姉さんに脅えていた。

「で、俺たちに何かようか?」

「それは私の台詞だ! いきなり城門の前に現れたかと思えば、2人でイチャイチャと。貴様らこそ、何用でここへ来た?」

「ああ、悪い。つい2人の世界に入ってた。俺たちは、ここの王様にようがあってきた」

「姫巫女が来たと伝えなさい」

『姫巫女様!?』

 兵士は慌てて走り出した。すると、中から文官らしき男が。

「姫巫女様、ようこそいらっしゃいました。英雄様、初めまして。私は……」

「挨拶はいらないわ。さっさと用件を言いなさい」

「それは王よりお話になられます。どうぞ、こちらへ」

 長い廊下を歩かされて案内されたのは、謁見の間ではなく、テーブル並んだの大広間だった。


「おぅ、よく来たチハヤ。それと英雄よ。そこに座れ、お茶にする」

 そこで待っていたのは、両脇に首輪をつけた女を侍らせ、ぶくぶくに肥え太った男だった。

 こいつが王様かよ……。

「来やすく名前で呼ばないで。それと私たち、長居する気ないんだけど……」

「そう急かさんでも、今回はそちの勧誘ではない。ようがあるのは英雄の方よ」

 姉さんではなく、俺によう?

「そち、名前は?」

「私の旦那のレイジよ!」

「そちには聞いておらん」

 ドヤる姉さんは、王の睨みをスルーしていた。

「それでレイジよ。我の家臣となれ。金も女も全て用意しよう」

「いや要らねぇけど」

「ふぅ、そちもチハヤと同じか……。金も名誉も異性もいらない。人として狂っておる。何が望みか、言え。大抵のことは何とかしてやる」

「これおいしいわよ、はい」

「ん、うまいな。姉さん、お返し」

「ん、おいし」

「貴様ら話を聞かんか! 我は王だぞ! 人前でイチャつくでない!!」

 俺は姉さんと、お菓子を食べさせあっていた。


「用件はそれだけか? 帰るぞ?」

「待て。もともとこちらの件は本題ではない。そちの持ってる技術をよこせ」

「技術?」

「エデンで広めている技術全てだ。もちろん転移装置もな」

「別に構わんぞ」

「へ?」

 王は気の抜けた声を上げた。

「レイジ、いいの?」

「もともと、その予定だったから」

 これからメイド部隊に普及させるってところでの呼び出しだったからな。

「あぁ、ただし、設置場所とかいろいいろ条件とかあるから、全面的にこっちの指示に従ってもらうがな」

「その程度のこと構わん。して、代金は?」

 王は俺を睨んでくる。

「いらない。無料だ、無料」

「ただほど怖いものはない、何か言え」

「強いて言うなら……、もう、エデンに近づくな」

「は?」

「帝国からの密偵がうっとうしい。いったい何人よこすつもりだ。エデンでは戸籍、1人1人を管理している。管理外の人間でも魔力を登録して、身分を作ってる。同じ魔力の人間が身分を偽造とか出来ないんだよ。まぁ、あえてこっちは泳がせといたが」

「何のことか知らんが……、仮にそうだとして、何故泳がせた?」

「簡単なことだ、あんたに1度会っておきたかった。1度顔拝んで、どんな人物か知って起きたかった」

「で、感想は?」

「どうしようもないほど…………クズだ」

「ふふっ」

 俺はこいつのような奴の目を知ってる。

 俺の家の、〝姉さんの実の両親〟を含む分家の連中だ。

 金や自分の命しか興味がなく、他人をおとしいれ喜ぶ、常に自分が一番でないと許せない人間。

 姉さんは退魔の力があったため、本家に引き取られた。なので俺の両親を実の両親のように慕っていた。

 だからこそ、この王とは根本から合わない。

 俺たちは、何があってもぶつかるしかない。


「んじゃ、帰るわ。お茶ごちそうさん、王様」

「〝またな〟、英雄殿」

 俺は姉さんを抱き寄せ、エデンに転移した。


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