夜の追撃戦
空はもう日が暮れそうになっていた。
ここから先の時間は視界が悪くなる一方なので、襲撃など考えにくい。
そのはずだった。
しかし、相手はそんなこともお構いなしのようだ。
馬の足音と共に、家畜荒らしが突如としてやって来た。
目が慣れているのだろうか。
「マジかよ! あれ家畜荒らしの奴らなんじゃ……。おい、オリヴィエ! あいつらがそうなんだよな?」
「ういー、ひっく。ああ、あれあれ」
「完全に酔っぱらってやがる……」
かずやんがオリヴィエに確認を取るも、酔っぱらったオリヴィエから適当な返事が返ってくるだけだった。
「これより迎撃態勢を取る!」
「「「了解!」」」
ひっち過激団の隣では、サルビアが指示を出していた。
流星歌劇団のメンバーもそれに呼応している。
「オリヴィエたそをお守りするのだ!」
「こちらもやる気にはなったようだ。相変わらずだが……」
ひっちもひっちでとりあえずやる気にはなったようだ。
その様子を見ただーいしがポツリと呟く。
流星歌劇団がサルビアとマーガレットで弾幕を張り始めた。
それに合わせてひっちとたまさんも射撃を行い、弾幕を形成していった。
家畜荒らしの方も負けじと応戦してくるのだが、予想よりも反撃がぬるく感じられた。
本気で荒らしに来ていないのだろうか。
「このまま奴らを押し込むのだ!」
「「「了解!」」」
流星歌劇団が、サルビアの号令で徐々に戦線を押し上げ始めた。
ひっち過激団もそれに遅れまいと追従する。
「おれ、お尻派じゃなくておっぱい派なんだけど……」
「言ってる場合か!」
ひっちがしょうもないことを言い始めたので、たまさんがツッコんでいる。
「おーい。ひっち、たまさん、明かりを取って来たぜ」
「少々遅れてしまった、かたじけない」
後ろからかずやんとだーいしがたいまつを持って来た。
先にパンジーとカモミールにたいまつを渡していたのか、彼女たちもたいまつを持っている。
次第に家畜荒らし側の弾幕が弱まっていき、ついに彼らは撤退してしまった。
そんなタイミングで、オリヴィエが後ろからヘロヘロの状態で手綱を持っている。
はっきり言って飲酒運転ではないだろうか。
「みんな、迷惑かけたね。ひっく」
「こりゃダメダメだあ」
オリヴィエの様子を見てかずやんが言いきってしまう。
「このままでは同じことがまた起きるだけだ。追撃を許可して頂きたい」
「待ち伏せされている可能性が高いのでは?」
サルビアがオリヴィエに追撃を提案するも、だーいしから当然の疑問が返ってくる。
夜が明けてからの方が安全ではあるが、家畜荒らしの拠点が分かっていないので、すぐにでも撃退するなら追撃しかないだろう。
「あたしの提案が飲めねえってのかよ!」
「そんなお酒みたいに言わないで下さい。あと提案したのはサルビアさんです」
オリヴィエが声を荒げるので、たまさんが冷静にツッコミを入れた。
こうして、急ぎで追撃の準備を整え、出向くこととなった。
流石に道中は薄暗く、明かりがなければ何があるのか分かったものではなかった。
しかし、家畜荒らしは少々薄暗い程度では全く動きに乱れがなかったので、ひょっとしたら暗闇でも見えてしまうのではないかと思ってしまう。
「この辺りは馬の足跡が残っているね」
「しかも、まだ新しい」
カモミールとだーいしが道中の馬の足跡を見ながら感想を語っていた。
まだ見失うほど離れてはいない、そう思いたいところだ。
そんな時だった。
銃声と共に馬の鳴き声が聞こえた。
カモミールが乗馬している馬が撃たれた。
カモミールは急いで降りる。
ひっち過激団と流星歌劇団は運よく見つけた近くの岩陰に身を潜めた。
「やっぱ待ち伏せかよ」
「ここからじゃよく見えないね。マーガレット、どうにか出来る?」
かずやんが岩陰から何とかして覗こうとするも、たいまつの明かりからは随分と離れた位置に家畜荒らしがいるようだ。
パンジーがマーガレットに助けを求めていた。
「私が撃っている間に奴らがどこにいるか確認して、そのまま砲撃して頂けるかしら?」
「言われてるよひっち」
「おーおれか、分かったぜ」
マーガレットの提案にたまさんが気づいたので、ひっちに理解を求めた。
ひっちが分かっているのかいないのか微妙な返事をしていた。
マーガレットがセイントロザリオから光弾を連射し始める。
光弾の通り道から、相手が隠れている岩陰の位置を確認するひっち。
そして、ひっちがセイントキャノンを構え始めた。
「ひっち榴弾砲発射! ぼっかーん、ぼっかーん!」
ひっちがセイントキャノンから放物線を描く榴弾を放った。
放たれた弾は見事に岩陰を超え、家畜荒らしにクリーンヒットした。
遠くから聞こえる叫び声からして、大打撃を与えたのは間違いないだろう。
「今度はこちらの番だ」
サルビアがセイントバズーカを構え、一発撃ち放った。
慌てて前に出てきた家畜荒らしたちに散弾が容赦なく襲い掛かった。
大きな炸裂音と悲鳴が辺りを
ここまで来れば形勢逆転だ。
後は掃討戦といったところだろう。
「皆さんお疲れ様です。無事ミッションを達成できたようですね」
「クリスたそ、こういう時に便利な道具ってないの?」
「申し訳ございませんが、セイントウエポン以外は現地調達ですので……」
クリスの声が聞こえてきたので、ひっちが思わずクリスに本音をぶつけてしまった。
いくらセイントウエポンと言えども万能ではない。
ひっち過激団は現実を思い知らされながら、帰還することとなった。
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