双子の聖少女

「さーさー、次は『剣と魔法の世界』のミッションだよー! 緊急度3、重要度3、難易度3! お値打ち価格からのスタートだよ! 早い者勝ち、早い者勝ちだよー!」

「クリスさん、それは誰も落札してくれないですよ……」

 クリスがハイテンションでミッションの説明をするも、たまさんが冷めた態度で諭す。

「人間は良くも悪くも慣れる生き物です。そうであれば刺激が必要かと思いまして……」

「これでやる気にはなんねーだろ」

 クリスの言い分にかずやんが返す。


「そうだね、クリスたそ。刺激が欲しいよね! おれと熱いキスをー!」

 余りにも唐突にひっちが唇を前に押し出し、突撃し始めた。

 しかし、クリスの顔面をひっちが捉えることはなかった。

「ごっちーん」

 クリス余裕の回避。

 クリスの身のこなしに追いつけなかったひっちの唇が地面に突き刺さる。

 あわれひっちは地面と熱いキスを交わすことになってしまった。


「ちなみに依頼主は王様です」

「王様か、久しぶりだな……」

「今回はババアじゃないんだな」

 依頼主が王様であることを聞き、だーいしとひっちが思い思いの感想を語った。

「そして、今回はなんと双子の美少女の救出らしいですよ!」

「のわあああにいいいいい!」

 クリスの一言でひっちのハートに火が付いた。

「行くぞみんな! 多分巨乳のカワイ子ちゃんだ! おれは今、猛烈に燃えているううううっ!」

「根拠あるのひっち?」

「ない!」

「やっぱしかー」

 ひっちが一人で勝手に盛り上がっているのを見て、たまさんが冷静にいなしている。


「全く、急に一人で盛り上がって。ひっちらしいな……」

「だーいしも人のこと言えない件について」

 ひっちの様子を隣で眺めているだーいしに対して、かずやんがさり気なく一言添えた。

「よし、そうと決まれば行こうぜ! ひっち過激団出撃だ!」

「「「おー!」」」

 こうして、ひっち過激団は『剣と魔法の世界』へと向かって行った。

「うーむ、これは『マネジメント』と『ユーモア』のアップデートが必要かもしれませんね……」

 ひっち過激団を見送ったクリスが先ほどの反省をしていた。

 こちらはこちらで抜かりなくやっているようだ。


「皆よく来てくれた」

「「「「お世話になりまーす」」」」

 王様の前にたどり着いたひっち過激団。

 そばには王妃とミリアム姫の姿もある。

 あと、さり気なく大臣の姿もあった。

「愛しい姫! おはよー! チュッ(笑)。もうおれと姫は既に運命共同体となっておりますので、どうか最後までお付き合いください(笑)」

「急にそんなん言われてもみんな困るよひっち」

「いつも通りじゃあれだから、ちょっとしたスパイスがないとね」

「いらないんだよそんなもん!」

 ミリアム姫の前で急に変なことを言い始めるひっちを、たまさんが何とかして押さえようとしている。


「相変わらずお元気なこと」

「フフフ、そうだね」

 王妃とミリアム姫の反応が存外によかったりするのは奇跡と言える。

 その奥で大臣が血走った目でひっち過激団を見ていた。

 軽くホラーである。

「コホン、それで本題なのだが……」

「聖少女救出の件だな……」

 王様が咳払いをしだしたので、だーいしがすかさず答えてみせた。

「そうだ。彼女たちはこのアスプル王国でも屈指の魔力を有していると言われている。そんな彼女たちが今存在を狙われていてな。彼女たちの救出が最優先だが、もし相手の存在が分かるようであれば、是非突き止めて欲しいのだ」

 王様が今回のミッションについて熱弁していた。

 ひっち過激団もついつい聞き入ってしまう。


「ねねね、双子の聖少女って巨乳? 可愛い?」

「ひっちは相変わらずだな」

「私が会ったのは彼女たちが幼い時だったが、可愛らしい子たちではあった。今は十歳くらいだろう」

「すごく可愛い、それは間違いないよ」

 ひっちが突拍子もないことを口にし始めるものの、王様が丁寧に質問に答える。

 ミリアム姫も王様に続いて一言添えた。

 ひっちをやる気にさせたいのかもしれない。

「十歳、チキショー!」

「ひっちキレすぎだろ!」

 ひっちが急にキレだしたので、かずやんがツッコむ。

 ここまで来ると理不尽もいいところだろう。


「待てよ、双子ってことはハイジとニーナ!? ハイジとニーナ!?」

「ひっちのエッチ」

 何を思ったのか、ひっちの言葉にたまさんが反応していた。

「その双子ってのはどんな姿をしているんだ?」

「金髪ツインテールでシスター服を着ている」

「「その話乗った!」」

 かずやんとだーいしがやたら乗り気だ。

 かずやんが金髪ツインテール、だーいしがシスター服とそれぞれ異なる部分に惹かれているようだ。

「あーあ、勝手に決めちゃったよ」

「僕らが口をはさむ余地すらなかったね」

 これにはひっちとたまさんも一言言わずにはいられなかった。


「まあでも、こういう依頼ってRPGっぽいよね」

「そうだね」

「おれ聞いたことあるぞ、夜のお店でドラ〇エの話をするとぱふぱふしてもらえる説というのがあるって」

「ひっち、それどこ情報?」

「いとこの兄ちゃん!」

 ひっちがまたどこから仕入れたのか分からないような情報を話し始めた。

「ついに夜の店って言っちゃったよ」

「やはりそうこうことか、ひっち……」

 それを聞いたかずやんとだーいしがある意味納得の表情を見せる。

 こうして、ひっち過激団は双子の聖少女を救出すべく、目的地へと向かうこととなった。


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