🪷【この世に理想郷が生まれた由縁】🪷やがて、解き明かされる真実。この物語の始まりは、ある人物が残した備忘録から始まった……。

🍀みゆき🍀

一章 生天編【この世に理想郷が生まれた由縁】

第1話 はじまりの大地

 ――ここは何処までも永遠に続く果てしない大地、名は極楽の荘厳ごくらくのそうごんという。


 そこには無数に連なる池が点在しており、周辺一帯へ蓮華が美しく咲き乱れる。その浄化された水面みなもには、鏡のように晴天の空が青々と映し出され心を魅了する。


 そんな美しき大地の中心に、虚空山こくうさんと呼ばれた大きくそびえ立つ山がある。その天にもとどきそうな聖なる領域には、邪悪なけがれから守るように大陸が存在したという。


 これらを含め、果てしなく広がりを見せる極楽の荘厳。この場所で人徳をよりいっそう高めるため、幾千もの修行僧達が日々過酷な修練に明け暮れる。こうした偉大なる聖天を目指す者達だけに、この場所は存在していた。


 その大地はそれぞれが、二つの大陸に区分されていたという。


 一つ、虚空山の大陸付近へ、隔離された地底のような場所があるのではないか。そう噂されるも存在は不明であり、不確かな内容。とはいえ、幾人かの帰還した者によれば、地獄のような光景だという。


 二つ、全ての衆生人々が安らぎを覚えるような、美しく咲き乱れた緑豊かな極楽の荘厳。周りは海で囲まれ、遥かなる大陸が何処までも続く。


 まるでその情景は、天空を漂う雲のよう。人々からは天に浮かぶ理想郷楽園。このようにたとえられていた。



 ――ところが、その一つの大陸で重大な問題が起きようとする……。


 その場所は空へと高く聳える虚空山の頂点。天帝とうたわれた聖王が住み、風情ある七堂伽藍僧侶の住む寺院堂の建物が所狭しと建ち並ぶ。こうした聖なる場所に、突如として現れる一人の人物。


 並々ならぬ雰囲気から察するに、その人物は聖なる人物であろうか。もしくは邪を宿した存在か。状況は掴めぬまま突然、声高らかに掌を握りしめ襲い掛かる――!!

 

『お前だけは、――お前だけは絶対に許さない!! この手で俺が、調伏消滅してやる』

『何をたわけたことを、はたしてお前に倒せるのか? だが私も、そこまで鬼といった訳ではない。もし許しを請いたいと願うなら、見逃してやらん事もないぞ』


『――誰がお前になど、上等だ!!』

『やれやれ、余り気乗りはしないが仕方ない。望みとあるならば、息の根を止めてやろうではないか!』


 強く握る拳を大きく振りかぶり、両者は闘気を放ち激突する。


「――――――――――――――――――――――――――!!!!」


 瞬刻の如く、お互いに激しくぶつかり合う拳。響き渡る衝撃の波動は、風圧と共に周辺一帯へ駆け抜ける。その煌びやかに輝く光、黒く染まる闇の気鋭オーラ。2人の力は同等であるかのように、暫く均衡は保たれる。


 ――こうして両者は想いを拳に込め、眼前で睨みあう…………。

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