「私達の百合プレイをたくさん見たいなら、私達の彼氏になってよ!」 百合妄想してた女子二人と付き合うことになった。
田中京
第1話 尊い彼女たち
毎日何度も思ってしまう。
彼女たち二人が尊すぎると。
ぼく、笹山(ささやま)のクラスでの席は窓際一番後ろだ。
外の風景を見れる。授業中、先生に指をさされにくいなどで有名な窓際一番後ろの席 だが、僕にとっては尊い存在を一番近くで眺めることができる特等席だ。
朝の登校時間、教室に入り席に座ると、かばんからハードカバーの小説を取り出し、読書にふける。
それが高校生としての僕の姿だ。
周りからは大人しい読書少年と思われてるが、実態はそれとは大きくかけ離れてる。 僕は本の文字を追うふりをして、ばれないように彼女たち-前の席の涼城さんとその右 隣の席にいる飯島さん-をそっと見やる。
「でさー、コンビニの新しいアイスがめっちゃうまくてさー」
涼城(すずしろ)さんはあいかわらず、楽しそうな顔をしていてる。
天使が笑ってる。そう思ってしまうのは外見が黒髪ロングの超絶美人だからだろう。
「へー、そうなん……」
飯島(いいじま)さんはあいかわらず、だるそうにほおずえをついてる。
こっちは黒髪じゃなくて金髪の超絶美人。だからか、覇気のない表情でもすごく絵になってしまう。
僕は二人の様子に、微笑ましさを感じ、思わず笑みをこぼす。
そして、耳をそばたて、二人の会話を盗み聞く。
悪いことだと思っていても、やめられなかった、
これは僕の日課だから。
「てかあれ、目元ちょっと赤くない? なんか、あったの?」
「あー、それな。実は昨日好きだったバンドが解散したんだよ。それがショックで泣いちゃったんだよ」
「それは悲しいね。よしじゃあ、元気が出るように、ハグでもするか」
「恥ずかしいからいいわ」
「えー、じゃあ私のおっぱいでも触る?」
「なんでだよ!? 誰が触るか、アホ」
「えーじゃあ仕方ない。私が愛の口づけを」
「しまいにはぶん殴るぞ、お前」
怒ってるというより、呆れた様子で、飯塚さんがため息をつくと、涼城さんが、おどけた様子で言う。
「ひえー、暴力反対」
「なんかバンドロスの悲しみがどっかいったわ。お前のバカすぎる発言聞いてたら。せっかく、悲しみに浸ってたのに、どうしてくれるバカ」
「バカバカ言わないでよ! でも元気でたなら良かったよ。飯塚が元気ないと、私も元気でないもん。」
「お前、よくそんな恥ずかしいこと言えるな」
「だって、本心だもん」
「あーそう、まぁなんだ、ありがとな、励ましてくれて」
「あはは、どういたしまして」
照れくさそうに飯塚さんは、頬をかくと、涼城さんは無邪気に笑った。
その光景を見て思ってしまう。
ああなんて、尊いんだ。
飯塚さんを思いやる涼城さん。涼城さんに素直じゃないながらも心を許してる飯塚さん。
そんな二人の関係は見ていて、心が洗われる。
もう付き合っちゃえよ。キスしちゃえよ。
僕は二次元の百合もの(女の子同士の恋愛もの)が好きだ。
普段からそういった創作物を摂取し、癒されている。
その影響か、涼城さんと飯塚さんを百合的な目で見てしまう。
だからといって、他の三次元の女の子同士がイチャイチャしてても、何も思わない。
彼女たちだげだ、そういう目で見てしまうのは二人の関係がどこまでも純粋で強いつながりを感じるからだろう。
ああ、彼女たちと同じクラスになってよかった。隣の席になれてよかった。
一年間最初から最後までずっと同じ席で、席替えがないクラスでよかった。
おかげで、進級するまでは身近で拝むことができる。彼女たちの尊い営みを。
喜びにうちひしかれていると、隣の席の涼城がうーんと、首をかしげてきた。
「どうした笹山くん? さっきから、すげぇにやけてるけど」
急に涼城さんに名前を呼ばれ、ドキッとする。
しまった。
普段は涼城さんたちを見ては、毎回心の中でにやにやしてた(不審に思われないように)が、今日の彼女たちはあまりにも尊すぎた。
それでつい、表情に出てしまったのだ。
どうしよう、何と答えるべきか、正直に答えるわけにはいかないし。
というかああっ、涼城さんがこっちをじっと見てる。
尊い存在の視界に入ってる。
普段僕は涼城さんたちの会話を覗き見ているが、自分ごとぎが尊い存在に気安く話かけてはいけないという心理から、自分から声をかけることは一度もなかった。
とはいっても、隣の席だから、相手の方から話しかけられて、あたりさわりのない会話をすることが何回かある。
だから免疫は多少あるが、やっぱり相手は尊い存在。何回話しても、緊張してしまう。
僕は上擦った声で、質問に答えた。
「いやっ、涼城さんと飯塚さん、すごく仲良いなーって、見てて微笑ましい気持ちになってさ……」
百合的な妄想をしてましたとはさずかに言えない。
それくらいの分別はさすがにある。
なので、事実を一部伏せて答えることにする。
「あはは、嬉しいこと言ってくれるね。飯塚、私達仲良しだってさ」
「そう? 普通じゃない?」
涼城さんが飯塚さんの肩をばんばんと強く叩くと、飯塚さんは素っ気なく答える。
でも、彼女の頬はうっすらと赤く染まっていて、それがポーカーフェイスだとわかる。
ああ、尊い。
「あはは、照れてる照れてる」
「うるさい馬鹿、」
「ちょっ、足蹴りやめろし、痛い痛いし。ごめんごめんからかって悪かった」
「ふんっ」
飯塚さんがそっぽをむくと、涼城さんがやれやれと、ため息をついた。
子猫のじゃれあいみたいな光景にまた微笑ましくなる。
「ねぇ、笹山くん、今度の日曜予定ある?」
「ないけど、どうして?」
「その日、飯塚と駅前のデパートでショッピングするんだけどさ、笹山くんも一緒にどうかなって。なんていうか、三人なら楽しそうだし」
「えっ……」
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