第4話:初キスの味。

で、上下ジャージに着替えた美都ちゃんは飲み物とお菓子を持ってやってきた。

美都ちゃんの家に彼女と僕とふたりっきり。

だからなのか、なんとなく感じるぎこちない雰囲気・・・。


で、ふたりでテレビ見て・・・

ふたりっきりの時間ってのが、この妙な緊張感を誘うのかな?


それは美都ちゃんも感じてたみたい。

だからか美都ちゃんは一度も僕を見ない。

僕から少し離れた位置のソファーに座ってポテチをパリパリ頬張りながら

普通にテレビなんかを見ているふりをしてる。


お笑い番組なんか見て、めちゃ笑ってる・・・ふりをしてる。

それでも沈黙が続くのが嫌なのか美都ちゃんは俺を、ちらっと見るとニコッと

笑って僕に言った。


「ポテチ食べる?」


「ありがとう・・・でも僕、普段からスナック菓子は食べないんだ」


「そう」


って言って、また美都ちゃんはテレビに夢中になったふりをした。


「あのさ・・・美都ちゃん・・・」


「ん?な〜に?」


美都ちゃんはテレビの方を向いたまた返事した。


「あのさ・・・あのね・・・」


「なに?言いたいことあったらはっきり言って・・・」


「あの・・・あの・・・まださ、ちょっと早いお願いかもしれない

んだけど、その・・・キスとかって、してもいいかな?・・・

いきなりだけど・・・」


クチにポテチも持っていったまま美都ちゃんはこっちを向いた。


(まだ早すぎるだろ)


絶対断られるって思った。

そして美都ちゃんはポテチを口に入れてパリパリ頬張ると言った。


「いいよ・・・」


「え?いいの?・・・キスだよ・・・していいの?」


そう言うと美都ちゃんは、しばらく僕を見てて、いきなり僕のそばまで

寄って来たと思ったら僕のクチビルにチュッてした。


で、離れるとすぐにまたテレビに夢中になったふりをした。


「えっ?・・・まじで・・・今キスした?」

「絶対、断られると思ったんだけど・・・」


美都ちゃんはテレビのほうを向いたまま言った。


「なに?・・・チューしたかったんでしょ?」


「う、うん」


僕は女の子とチューなんかしたのはこれが初めてだった・・・でも

ドキドキする間もなかった。


「付き合ってるんだからチューだってするでしょ?」

「だけど、チューさせてってよく言ったね・・・偉いぞ、芳樹」


美都ちゃんはなんのてらいもなくそう言った。


「ど、どういたしまして・・・」


僕はめっちゃ嬉しかった・・・なんかこれからしますよってんじゃ

なくて、ごくあたりまえみたいにさりげなくチュッて・・・。


そしたら、さらなるオマケが待っていた。


「おいで芳樹・・・ハグしてあげる」


女の子とのハグも初めて・・・おいおい・・・僕、美都ちゃんに抱かれてる。

美都ちゃんの温もり・・・そしてとってもいい匂い・・・ずっと抱かれて

いたかった。


ハグもめちゃ嬉しかったけど、やっぱりキス。

美都ちゃんのクチビルは思ったより柔らかかった。

初キスってチェリー味がするって聞いてたけど僕の初キスはポテチ味だった。


つづく。


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