第3話:浴衣の君。
めでたく京町さんからいい返事をもらって、今のところ順風満帆に
付き合ってる僕たち。
で、もう商店街の土曜夜市は、はじまっているわけで、
だから京町さんに今週の土曜、夜祭りに行こうよってデートに誘った。
もちろん彼女は快く承諾してくれた。
その土曜日の夕方、僕は自転車を走らせて京町さんの家まで彼女を迎えに
行った。
玄関から出てきた京町さんを見て僕は一瞬固まった。
なんと彼女は浴衣を着てたんだ。
そして手に持ってたピ◯チューのイラストが入ったウチワを僕に向けて振った。
京町さん、めちゃ綺麗だし可愛いし・・・。
「いらっしゃい、中野君・・・芳樹」
僕の呼び方が中野くんから芳樹に変わった瞬間だった。
「あのさ・・・あの〜僕も美都ちゃんって呼んでいいかな?」
「いいよ・・・」
「その浴衣、すごく似合っててめちゃ綺麗・・・だし可愛い」
「ありがとう芳樹、私の可愛い彼のために頑張ってみたのさ」
いつもは閑散としてる商店街も土曜の祭りと言うこともあって家族連れ、
カップル、たくさんの人で賑わっていた。
その中に僕たちもいた。
北から南へ続く小さな商店街の入り口で僕は彼女にさりげなく手を差し出した。
手を繋ぎたかったからね。
恋人同士なら誰しもがするコミュニケーションでしょ。
彼女はたしかに付き合ってもいいよって言ってくれたけど僕たちまだ恋人同士
じゃないんだよな。
よく言う友達以上、恋人未満?。
でも、手くらいつないだっていいよね
大切な僕の美都ちゃんが人並みに押されて見失わないように・・・。
僕たちは、たわいもない話でけっこう盛り上がった。
出店で金魚すくいもしたし、綿あめも、りんご飴も買った。
あと、カラフルに着色されたヒヨコがピヨピヨいて可愛かった。
「あのさ、子供のころ色がついたヒヨコが欲しくて駄々をこねて買って
もらったんだけど、ヒヨコが大きくなるにつれ色が取れてきてね、
すごくショップだったこと覚えてる」
「しかもこういう出店で売ってるヒヨコって雄でしょ・・・卵産まないよね」
「だからね、卵は産まないは早朝、大きな声で鳴くわで近所迷惑この上ない
んだよね」
「でさ、結局お父さんが養鶏場のおじさんちにその鶏持って行ちゃったんだ」
「そか・・・その鶏、きっとブロイラー行きになちゃったんだろうね」
「え〜まじで?」
「卵、産めないんじゃッブロイラーしかないでしょ」
「そうなんだ・・・」
「そんなに落ち込まなくていいの、芳樹のせいじゃないって」
「実際、芳樹だって鶏肉食べてるでしょうが・・・」
「牛肉だって豚肉だって・・・可哀想なんて言ってたら食べられないよ」
「そうか・・・そうだよね・・・」
そう言われて妙に納得してしまった。
夜祭りから帰ってくると美都ちゃんは家に上がってく?って僕を誘った。
ご両親がいらっしゃるだろうからって断ろうと思ったら、彼女の
ご両親はお父さんの実家にお呼ばれに行っていて今夜は泊まってくるから
帰って来ないんだって・・・。
だから少しだけねって僕は美都ちゃんの家にお邪魔した。
「ゆっくりして・・・私、浴衣着替えてくるから・・・」
僕は、もう少し美都ちゃんの浴衣姿を見てたいって思いながら
彼女の着替えが終わるまでソファーに座って待っていた、
つづく。
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