追放編4 アラゴンの嫉妬
「エルリック、貴様余計な真似を.....!」
アラゴンは顔を真っ赤にして怒りをあらわにしている。
「まぁまぁ、気にんすなって。どうせ、セレーネにいいとこ見せたくてカッコつけようとしたんだろ?わかるさ、男ってのはそういう生き物だ」
「っっ.....!貴様ァ!!」
エルリックが胸ぐらを掴もうと俺の襟元に手を伸ばす。それを交わしながらセレーネを探す。
しばらくキョロキョロしていると、少し遠くで怪我をした兵士を回復させているセレーネを発見した。
「おい、アラゴン落ち着けって」
「何!?」
俺は闘牛のようにこちらに襲いかかってくるアラゴンをなんとか宥める。
「セレーネお前のこと見てなかったぞ。良かったじゃねぇか。兵士の回復に必死でお前のことは目に入ってない。たぶんバレてねぇよ」
「.....」
アラゴンは歯を食いしばり悔しそうに俯く。
今まで親に頼めばなんでも手に入ったおぼっちゃまだ。きっとなかなか手に入らないセレーネに戸惑いや苛立ちがあるのだろう。
「まぁまぁ、そんな顔すんなって、そうだ!セレーネのお気に入りの店があるんだ。この前2人で行った時にあいつ喜んでてさ。その店教えてやるからそこにデート誘ってみろって!」
「結構だ!」
そう言ってアラゴンは足早に自分の陣地に去っていった。
「.....頑張れおぼっちゃま。俺はちょびっとだけ応援してるぜ」
アラゴンの背中に向かってそう言うと、俺は再び敵陣に目を向ける。
「さあ!続きと行こう.....か.....ありゃ?」
敵陣に目を向けるとそこにはもう敵の兵士の姿はなく、いたのは数十人の味方の兵とサムズアップをしながらこちらに歩いてくるレイスだけだった。
「敵はもう撤退したぞ!帰ろうか!」
「はぁぁぁぁ!?逃がしたのか!俺たちなら残りの奴らも倒せただろ!」
俺はレイスに詰め寄って抗議する。
「落ち着けエルリック。今回の俺たちの指名は街の守護だ。災は去った。もう戦う必要は無い」
「あいつらまた襲ってくるかもしれないだろ!」
「ここで奴らを全滅させても魔王軍で追加の兵が派遣されるだけだ。どの道敵はくる」
「お前なぁ.....わかってんのか!だいたい――」
「エ、エルリック.....!」
控えめに袖を引っ張られ、思わず振り払ってしまう。
後ろを振り返ると、怯えた顔をした。セレーネが手を抑えていた。
セレーネは恐怖を押し殺し、無理やり笑顔をつくる。
「ど、どうしちゃったんですかエルリック。昔は.....そんな感じじゃなかったじゃないですか.....」
セレーネにそう言われて俺はふと我に返る。
「わ、悪い、セレーネ。レイス、お前の言う通りだ。なんか熱くなっちまった。ちょっと頭冷やしてくる」
俺はそう言って足早に自分の陣地へ戻っていく。
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