第17話 初めてのダンジョン ⚪︎

「ここがランドベリーの街か! 人が多いなぁ!?」


【おお、そこら中に美人さんがいるぞ! おっ!? あそこに色っぽい服を着たお姉さんが! ライト、右だ! 右を向け!】


 ランドベリーの街は、ビスターナのギルドで聞いた通りにとにかく人が多かった。大きさこそビスターナと同じくらいだが、人の数は倍以上いるのではないだろうか。

 特に、冒険者ギルドは大勢の冒険者で賑わっており、この街の北にある地下迷宮ダンジョンの人気ぶりがうかがえた。


 レイも人の多さ、というより女性の多さに大興奮だ。




「ようこそ、ランドベリーの冒険者ギルドへ! えーっと、冒険者登録ですか?」


 僕がギルドの受付に行くと、その見た目のせいか、冒険者登録に来た子どもだと思われたようだ。いや、実際に子どもだから、この受付のお姉さんの判断は間違ってないんだけど。


「いえ、もう冒険者登録は済ませているので大丈夫です。それより、未完成の迷宮ラビリンスへの入り方を教えていただけませんか?」


 僕は冒険者カードを見せて、地下迷宮ダンジョンへの入り方を聞いた。


「これは、失礼いたしました。この街の北にある未完成の迷宮ラビリンスは、冒険者カードを持っていれば入り口にいる衛兵に見せるだけで、自由に入ることができます。ただ、下の階を目指すのであればパーティーで挑戦することをお勧めします」


 どうやら地下迷宮ダンジョンに入るのは大丈夫そうだ。受付のお姉さんは僕のジョブを見たからだろうか、パーティーを進めてくる。そりゃ、結界師はサポートジョブだろうから仕方ないけど、僕は最初はソロで挑戦すると決めているのだ。


 僕もパーティーがいいと思っていたのだが、ここ最近の戦闘で感じたことがある。それは――


(ひとりでもやっていけるんじゃない?)


 ということだった。


 だって、今のところ僕の結界が破られたことは一度もない。レイとも相談してみたけど、この調子ならひとりで倒すことも可能だという結論に達した。

 ひとりで倒せるなら経験値も素材も独り占めできる。余程、強い魔物を狙うなら当然パーティーの方がいいのだろうけど、レベル上げとお金稼ぎに関しては、ひとりの方が効率がよさそうだと僕は学んだのだ。

 レベルが40になるまで、この地下迷宮ダンジョンを利用させてもらうとしよう。


 ということで、受付のお姉さんにお礼を言い、ひとり北の地下迷宮ダンジョンへと向かった。




▽▽▽




 未完成の迷宮ラビリンスの入り口は大きな門でできており、奥には下に続く階段が見えた。その門の横に、門番だと思われる槍を持った衛兵が二人立っている。


地下迷宮ダンジョンに入るのは構わないが、お前さんひとりで入るつもりか?」


 僕がギルドカードを見せて地下迷宮ダンジョンへ入ろうとすると、衛兵のひとりにそう声をかけられた。


「あ、はい。とりあえずひとりで行けるとことまで行ってみようかと思いまして」


 ここで止められたら元も子もないので、あくまで低層でのレベル上げの雰囲気を出してみた。


「それにしても、結界師の単独挑戦など見たことないな。防御の方はまあいいとして、どうやって魔物を倒すんだ? まさかその剣で倒すわけじゃないよな?」


 確かに自分の恰好をよく見てみると、青いローブに身を包み右手には安物の杖、腰には護身用の剣を差している。確かに僕が衛兵でも心配で声をかけちゃうくらい、怪しげな恰好だ。


【だから剣は隠しておけって言ったのに……】


 僕がレイの忠告を無視したので、ぶつぶつ文句を言っているようだ。


「えーと、とりあえず低層にどんな魔物がいるか見てみます。危なくなったら、すぐ戻って来ますので」


 その文句は軽く聞き流し、苦しい言い訳をすると、衛兵も『一応忠告はしたからな』とだけ言って通してくれた。




▽▽▽




 階段を降りると、土とも金属とも言えない不思議な素材でできた床や壁が目に入る。そして、幅五メートル、高さ六メートルほどの通路が奥まで続いていた。まずはその一本道を一歩一歩、歩いて行く。壁や床自体が淡く発光しているので、暗くて見えないと言うことはない。その一本道を少し進むと、左右に分かれるT字路となっていた。


「なるほど、迷宮ラビリンスとはよく言ったもんだ」


 この地下迷宮ダンジョン自体が大きな迷路になっているようだ。この地下迷宮ダンジョンを攻略しようと思ったら、魔物や罠に加え、この迷路の様な作りが大きな障害になるのだろう。


 ただ、僕には探知があるので、半径一キロメートルの様子は何となくわかるし、曲がり角からの魔物の奇襲は防ぐことができそうだ。


「よし、左にいくか!」


 自分で選んだソロでの挑戦だが、ちょっぴり寂しいので独り言でごまかしてみる。


【いや、ひとりったって俺がいるだろう?】


(あっ、そうなんだけど……レイは一心同体というか、何というか……)


 確かにレイとは会話が可能だけど、たまには他の人と会話したくなると言うか何というか――


 そんな気持ちを悟られないように、レイと会話しながら先へと進む。


 左の道を少し進むと十字路に出たのだが、そこにはFランクの魔物、スライムがいた。


 ここが森などで水たまりに擬態されていると、不意を突かれてダメージを受けることもあるかもしれないが、無機質な床と壁で隠れるところもない見え見えの場所では、ランク通りの強さでしかない。それ以前に探知に引っかかっているし。


火の玉ファイアーボール


 僕が放った火の玉ファイアーボールは、炎魔法の最弱の魔法……のはずだよね? それなのに僕の目の前に現れたのは直径二メートルはある巨大な火の玉だった。

 一直線に飛んで行った火の玉は、スライムに直撃した途端轟音とともに爆発し、スライムを一瞬で蒸発させ、地下迷宮ダンジョンの壁や床に大きな焦げ跡を残した。


火の玉ファイアーボールってこんなに強かったっけ?)


【うん、今の火の玉ファイアーボールはまあまあだったな。魔法攻撃力が上がってきたから、低レベルの魔法もそれなりの威力になってきたようだ。これからは、少し魔力のコントロールを意識して威力を調整する方法を覚えた方がいいな】


 なるほど。魔力をコントロールすれば威力を調整できるのか。確かに、今のスライムならもっと小さな火の玉でも倒せそうだったな。自分の力を隠すためにも、ぜひとも魔力のコントロールは覚えなくては。


「よし、習熟度は30だからすぐに覚えられるはず!」


 レイ曰く、僕の場合はいきなり習熟度が30になっていたから経験が足りない。裏を返せば、経験さえ積めばすぐにできるようになるということだ。


 スライムがいた十字路を真っ直ぐ進む。この地下迷宮ダンジョンの造りはわからないが、とりあえず北西の方にでも向かって進んでみようと思う。探知にかかる魔物がそっちの方が強くなっている気がするからだ。


 スライムを倒した後も、F、Eランクの魔物が度々姿を現したので、練習も兼ねて魔法で蹴散らしながら進んで行く。地下迷宮ダンジョンに入ってから1時間ほどで、運良く下へと降りる階段を見つけることができた。


 地下二階層からはEランクの魔物が、地下五階層からはDランクの魔物が混じり始めたが、全くもって問題なく突き進んで行く。大体、一階層攻略するのに一時間ほどかかっており、今は七時間ほどかけて地下七層まで来ていた。


「そろそろ、休憩するかな」


【そうだな。余裕があるうちに休んでおくのも、一流の冒険者の勤めだな】


 いつの間にレイが一流の冒険者の勤めを身につけていたのかは知らないけど、言っていることはもっともだと思った。昼頃に地下迷宮ダンジョンに入ったので、外はもう暗くなっているはずだ。お腹も空いたので、持ち込んだサンドイッチを食べ、結界を張って寝ることにした。

 この階層では僕の結界を破れる魔物はいないだろうから、ここで寝ても大丈夫だろう。ちなみにここまで来るのにレベルは2つあがり、25になっていた。結界術もクラスBまで上がっている。


「よし、明日は頑張って十層まで進むぞ!」


 改めて気合いを入れ直し、持ってきた寝袋の中へと潜り込んだ。



名前 :ライト

性別 :男  

種族 :人族

レベル:25

ジョブ:結界師

クラス:B  

職業 :冒険者


体力 :70(528)

魔力 :150(1939)

攻撃力:50(525)

防御力:50(523)

魔法攻撃力:80(2578)

魔法防御力:150(2481)

敏捷 :60(532)

運 :120


(オリジナルギフト:スキルメモリー)


ユニークスキル 

効果持続 Lv6


(無詠唱・並列思考・消費魔力減少・魔力回復速度上昇

攻撃力上昇(中)・防御力上昇(中)・魔力上昇(小)

魔法攻撃力上昇(中)・魔法防御力上昇(中)

敏捷上昇(中)・鑑定 Lv6・探知 Lv8・隠蔽

思考加速 Lv10・集中・獲得経験値倍化・経験値共有

アイテム効果アップ)



ラーニングスキル 

結界術B Lv11


(炎魔法SS Lv30・風魔法SS Lv30・土魔法SS Lv30・雷魔法SS Lv30

水(氷)魔法SS Lv30・闇魔法SS Lv30・光魔法SS Lv30・聖魔法SS Lv30

重力魔法SS Lv30・時魔法SS Lv30・空間魔法SS Lv30・錬金術SS Lv30

剣技D Lv2・槍術D Lv1・斧術D Lv1・弓術D Lv1・拳術D Lv1・盾術D Lv1

暗技D Lv1・短剣術D Lv1・強化魔法D Lv1・加工D Lv1・採集D Lv4

算術D Lv3・裁縫D Lv1・農耕D Lv1・採掘D Lv1)



(それにしても習熟度の上がりが早いな? これも何か補正がかかっているからだろうか?)


【何言ってんだよ? 習熟度が上がりやすいのは賢者の特性だろ】


 ……。さも当たり前のように言われたけど、全く知らなかったです。もっと早くに教えてほしかった……


 疑問に思っていたことの答えがいきなり見つかったので、次は明日以降の戦い方について考えていたら、いつの間にか眠りについていた。

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