第9話 デッキ相性
自分を見つめ直すきっかけを得た
その夜。
明日に向けてデッキを作成する花織と
違う空間にありながら、
これは
なぜなら、元を
そう、全ては
新たなデッキとは、こうして生まれる。
花織も
そして約十分後、両者はデッキを組み終えた。
ホッと一安心し、表情を
明日を楽しみに
それぞれの思いを胸に、二人は眠りについた。
そして翌日。
すぐにはそのドアを開けず、勝利のイメージを
高鳴る
店内の視線が
客は一か所に固まっており、その全員が昨日の問題児の信者。
異様な
一歩ずつ
たった一人で
そうしてまっすぐに標的の向かい側へと着いた
「よぉ……。
開口一番、
対し、相手は苦笑を返した。
「白々しいことを……。昨日、来ていただろう? 逃げたのか?」
一見すると、ただの
だが、単なる
相手は探ろうとしている。
どこまで
対策されていないか確認するための
だが、
「あー、悪かったな。急に帰ってこいって言われてさ。そんなに待ち遠しかったのか。そりゃあ悪いことをしたな。その分たっぷり
高飛車な
「変だな。どこぞの誰かに負かされて落ち
「ああん? 何だそのガセネタ。この
「そうか。じゃあ早速バトルしようか」
「ああ、そうだな……」
堂々とした受け答えにより、信じ
相手はそうとも知らず、デッキをシャッフルし山札の位置に置いた。
それを見届けた上で、
「
「
「お前が思ってる以上におかしいから安心しろ。最高に面白いジョークだと思うぜ?
そして先攻後攻が決まり、ゲームが始まった。
「さてと、それじゃあまずは天界の修道女を
「ッ!? 何だと!?」
最初に場へ出されたカードを目にし、相手の表情が激変した。
その向かい側には腹を抱えて笑う
全てを
「
「バカ言ってんじゃねえよ! 勝負はもう始まってんだ。それに、一体何がおかしいんだよ? バトルを始める前から相手のデッキがわかるわけねえだろ」
そこへ
「戦いの
論破された相手は小さく
当然、バトルも
「
「させるか! カウンター発動、ネゲイション!」
必死に抵抗する相手。
だが、速度で完全に負けている。
しかも、事あるごとに飛んでくる
「残念だったなあ? 本当だったらそのカウンターで、この
響く高笑い。
終始、この調子。
言うまでもなく、
同じ
彼はただ、今この
と、その対面で相手が突然笑い出した。
「……いや、これでいい。オレの言った通りだ! これではっきりした。やっぱりカードゲームなんてただのじゃんけん。下らない。相性のいいデッキが勝つ、それだけだ!」
負け惜しみを連ねる相手。
そして、振り向きざまに
「いつか本物の化け物が目の前に現れるぜ。気をつけな?」
と、別れの
もちろん、その化け物とは
が、ここにいる人には伝わるはずもない。
去り行く
「放っておけ。むしろ、オレの考えに間違いがなかったと証明してくれたようなものだ。感謝したいくらいだね」
そう吐き捨て、無理やり自分を納得させた。
――と、ここまでがこの日の出来事。
そして、ここからは少し先の日の話。
何の
そして、
「ちょっといい?
「何だいきなり? オレを誰だと思って……。 ん? お前は……」
男子はその容姿を見てすぐに気付いた。
この特徴からピンと来ないゲーマーはいない。
「誰かと思えば、お前あの天才と名高い
機嫌を損ねる男子。
しかしその直後、不意にその口元が
「
横暴な提案をされ、
「悪いんだけど、これ本名なんだよね……」
「そんなことはどうでもいい。
その
「怖いのは勝つ方なんだけどな……」
「はあ? 何を言ってるんだか……。勝つのが怖い奴なんているかよ。しかもお前、相手のデッキを盗み見て勝ってるくせに……」
「何か勘違いしているようだね。いいよ、僕が使うデッキは先に中身を見せてあげる。それなら文句ない?」
「何を言い出すかと思ったら。その条件でいいんだな? よし、乗った」
こうして
加えて、相手には信者がいる。
手札を盗み見ることなど造作もない。
誰もが自分たちの勝利を信じて疑わなかった。
だが、試合は不可思議な進行を
普通なら
しかも、その全てが
明らかに何かがおかしい。
それに気付いた相手の表情が
「……おかしい、さっきから全部。まるで手札を
「人聞きが悪い。僕は不正が大嫌いなんだ。だから本当は、こうやって君たちが盗み見てくるのも気分悪いんだけど、今回は仕方ないと割り切っているところだよ」
「オレが盗み見てるだと? 証拠はあるのか?」
「証拠として出せないけど、見えるんだよ。後ろで合図を送っている動作が、音として聞こえることで……映像になるんだ」
「……は?」
言ってる意味がわからず、相手は思わず聞き返した。
対し、
手で送るサインは、指の本数、動作、速度などを正確に
その合図の意味も添えて。
さらには、対戦開始時から今に
これにより、信者の半数程が
それでもなお、鏡など何かしらの
そんな
疑う者など、もう一人もいない。
なぜなら、それらのデッキは誰にも明かしていなかったから。
信者が一人一人個別に指示を受け、
今だって当然、それらはケースの中。
それをさらに見えないように隠し持っている。
デッキを持っていることすら、信者たちを見ただけではわかるはずがない。
それを、背中を向けたまま見てすらいない
その場にいる全員がみるみる
「化け物だ……!」
誰かが
「待って、忘れ物!」
呼びかける
しかし、その行動はさらなるパニックを生む。
「来るなあああ! いらない! そんなものいらない! くれてやる、だから
他の人も同様。
ただ一人、
仕方なく
「あ、
そう言って通話を切ると、
「勝ったら伝言してくれる約束だったのに……。あの様子だと、あの子もゲームやめちゃうのかな……。やめないでほしいな……」
そう
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