原罪

消しゴム

0.目覚め

 深い深い場所から意識が浮かび上がってくる。自分という存在がやがて形を成し、そして自ずと瞼が開く。

 私は目を覚ました。

 視界に広がる見慣れない天井。

 私は、見知らぬ部屋の、見知らぬベッドの中にいた。

 なぜこんな場所で寝ているのか思い出そうとしてみるが、頭の中は清々しいほどに空っぽで、何も思い出せなかった。

 そんな私へと向けて横から声が飛んできた。

「目が覚めましたか?」

 私は声がした方へと目を向ける。

 そこには一人の女性が立っていた。綺麗に結われた金色の髪、色白な肌、整った顔立ち、赤い唇。すらりとしたとても美しい女性だった。そしてその女性は、黒色の簡素な服に白色のエプロンという使用人のような恰好をしていた。

 女性は少し腰を屈めると私の顔を覗き込んでくる。

「お体の具合はい逢がですか? 起き上がれそうですか?」

 その女性もまた、見覚えの無い、見知らぬ人だった。

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