大人になるに連れ
ましろ。
スキとキライ
雨の降る音を聞きながら目を覚ます
古いアパートに
バチバチと屋根が雨を弾く音が響く
寝癖のついた髪をくしゃくしゃとかき分けて洗面台へ重い足取りで向かう
スウェット姿で寝癖を直す自身の姿を見ながら
なんとも言えない気持ちになった
好きな珈琲豆を手に取り
珈琲の香りを部屋に充満させる
外から子供を叱る親の声が聞こえカーテンを開ける
どうやら雨なのに傘を放って水溜りに入ってしまったようだ
親からしたら大変なのだろうが
ふと笑ってしまった
雨の休日、どうしてか少し憂鬱だと感じるようになったのはいつからだったのだろうか
子供でいいはずの年齢でも段々と大人になることを押し付け始められる、そんな時期からだった気がした
子供の時は新しく買ってもらった長靴と真っ黄色の傘を手に早く雨が降ればいいのにと
雪の時期に新しい手袋を買ってもらって
片方だけどこかに失くして手が赤くなるまで雪玉を作ったり
そんな気持ちはいつからかどこかへとこぼれ落ちて大人になってしまった
大人になると
大切な人と出かけるから雨は嫌だ、雪は嫌だ
綺麗に格好良く見てもらいたいから
そんな素敵な理由も隠れている
それだとしても少し切なく感じた
子供の無邪気なはしゃぎ声と
それを叱る親の声
雨を弾く屋根の音
珈琲の香りと暖かさに包まれながら
また一つ大人になり
少しだけ子供に戻ってみる
大人になるに連れ ましろ。 @tomoki0316
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