教師近藤vs生徒たち

 近藤が勤務している中学校で、一日の授業が終わり、部に所属している生徒はそれぞれのところで活動する時間になりました。

 そのなかの一つの柔道部でも部員が集まって練習が始まった、間もないときのことでした。

「たのもー」

 そう言って、近藤がやってきました。

「あれ? 近藤先生、どうしたんですか?」

 近藤のクラスではありませんが、彼をよく知っている、たまたま近くにいた男子生徒が尋ねました。近藤は柔道部の顧問ではありませんし、今口にした言葉だと道場破りのようですが、格好はいつものスーツ姿です。

「ちょっと訊きたいんだが、部活動を行っている生徒諸君、特にきみら柔道部を含む運動部のコたちは、それにばかり時間を割き、力を注いでいるんじゃないかね? 学生の本分は勉強のはずだけれども」

「……はあ」

 近藤の口からそんな真面目な言葉が出てくるとはという驚きもありましたし、どう答えたら良いものかと、その生徒は返事に困りました。

「私がここに来たのは、だからちゃんと学習にも取り組んでいるのかチェックするために、持ってきた学力テストをやってもらおうと思ったからなんだ。悪いけど部員全員に受けてもらって、平均で六十点を上回らなかった場合は、お灸をすえるではないけれども、今後はそれくらいはクリアできるようしっかり勉強する気になるように、きみらの部費の二十パーセントを没収させていただこうと考えているんだが、よろしいかね?」

「ええ? いや……」

 近藤の唐突な申し出に、男子生徒は一層困惑しました。この教師に戸惑わされるのは慣れっこだったものの、普段とは勝手が違っており、動揺はかなりの大きさでした。

「そんなの、いいわけないでしょう」

 聞こえてくる二人の会話に耳を傾けていた、近藤と話している生徒の先輩にあたる男子が、近寄ってきて言いました。

 教師なので当然ともいえますが、上背があって見るからに強そうであり、なおかつ敵意すら感じさせるその生徒の態度にもひるむことはなく、近藤は目の前の彼らに向かって話を続けました。

「だが六十点を超えられた暁には、反対に部費の二十パーセント分のお金を私の財布から柔道部に寄付しようじゃないか。それに、今すぐではなく数日間の試験勉強を行う時間を与えるし、テストの中身は学年ごとにレベルに合ったものを用意するよ。試験が終わったら問題用紙を持って帰っていいから、難し過ぎたりなど良くない部分がなかったか検証してくれて構わない」

「それでもやりません」

 そう即答したのは、さらに近藤のもとにやってきた、柔道部のキャプテンの額賀太輔でした。彼のみならず、もう柔道部の部員全員が近藤たちのやりとりに気づいて話を聴いていて、状況の推移を見守っています。

「部費が少なくて困っているわけではないのでお金をいただいても仕方がないですし、たとえ試験勉強とテストをやるので合わせて数日程度でも、そのぶん柔道の練習ができなくなるのはもったいないですからね。生徒の勉強への取り組みが十分でないのならば、今提案された方法などではなく、先生方が授業を工夫したりすることでやるようにさせてくださいよ」

 最初に話に加わった生徒同様に強そうであり、また、それ以上に人間としてたくましく、キャプテンの資質が備わっている印象の太輔がビシッと言ってくれたことで、近藤とはいえ教師による突然のリスクを伴う学力検査の申し出に不安な空気に包まれていた柔道部員たちでしたが、落ち着きを取り戻し、声には出しませんでしたけれども、皆、太輔の意見に賛同しました。

 ところがです。

「ほう、言ってることは立派だが、要は逃げるわけかい」

 近藤が挑発する感じでそう口にすると、練習をやるから話は終わりといった態度で近藤に背を向けかけていた太輔が、ビクッと反応しました。

「はあ?」

 彼は人が変わったように鋭い目つきになって、そのように言葉を吐くと、素早く続けました。

「わかりました。その勝負、受けて立ちますよ!」

「あちゃー」

 部員たちは頭を抱えました。太輔は、「逃げるのか」というワードを浴びせられると、カッとなってしまうのです。

 とはいっても、いくら主将でも部に関係することのすべてを独断で決められるまでの権限は与えられていませんし、一度やると宣言したら撤回してはいけないなどという話になっていたわけでもありませんので、近藤の誘いを改めて拒もうと思えばできたでしょう。

 けれども、足りなくはないにしても部費がそれだけ増えたら喜ばしいに決まっていますし、頭に血が昇った太輔に限らず、他の部員たちも柔道という格闘系の競技をやっているだけあって、挑まれた勝負ともいえるその申し出をそんなにも避けるのは情けないといった意識があり、学力テストはやりたくないとの意見のコも少なからずいましたが、話し合った結果受けることになりました。

 その後、部の活動をできるだけ削りたくない生徒側と、あまり事前に勉強できると通常の学力を測れなくなってしまう近藤サイドの望む方向が一致していたために、揉めることなく、試験勉強は二日間で、その翌日にテストを行うという日程でまとまりました。短いながらも突入した試験勉強の期間に、柔道部の部員たちは稽古を休んで、学校の定期テストのとき以上に学習に励みました。

 そして実施されたテストの結果は——

「平均は、五十八・二点だ」

 近藤がそう発表しました。

「あー」

 柔道部の生徒たちは肩を落としました。

「みんな、すまん。俺が勝負を受けると口にしてしまったばっかりに」

 太輔が皆に頭を下げました。

「いえ、最後はやるというので全員納得しましたし、みんなで合わせた力が十分ではなかったわけですから、自分も含め、誰の責任だとか言うのはよしましょう」

 一人の生徒が声をあげ、他の面々も同じ考えだというのを表情や軽いうなずきで太輔に伝えました。

 それを目にした近藤がしゃべりました。

「ふむ。この部の団結力は目を見張るものがあるようだね。しかも今回のテストで一段と強固になったと見える。それだけでもやった甲斐があるってもんだ。しかし、テストのために頑張ったであろう勉強はこれからもしっかり取り組まなければいけないよ。柔道によって学べることもたくさんあるだろうが、長い人生それだけしていればいいというものではないのだからね。その点をきちんと肝に銘じてもらうために、心苦しくもあるが、約束通り部費の二割をいただこうと思うけれども、異存はないかな?」

「ええ、決めたことですから。待ったなど許されない戦いを常にしている自分たちは特に、ここで情けをかけられたりしたら、むしろ気分が良くありませんので。そうだよな? みんな」

 代表して返事をした太輔が、部員たちにも確認の声かけをしました。

「はい」

 生徒たちは揃ってうなずきました。

「了解。じゃあ、お邪魔したね。きみたちが柔道も勉強も、そして人間的にも、さらに力をつけていくのを楽しみにしているよ」

 こうして、何のボケもオチもない、いつもとは別人を思わせる言動のまま立ち去っていった近藤ですが、その振る舞いはそこで終わりではありませんでした。次は剣道部、それからサッカー部、野球部と、他の部のところにも立て続けに現れては、柔道部に対してと同様の申し出を行ったのです。

 その際、剣道部には「柔道部は逃げずにテストを受けたけどね」と言い、野球部にも「サッカー部は断らなかったけどさ」とライバル関係にある部の名前を出すなど、それぞれがその気になる言葉を巧みに使ってテストをやることを承諾させました。そして、いずれの部も近藤が設定した平均六十点の合格ラインを上回れなかったのですけれども、すると彼がそれまでのように誘導せずとも、敗れ去った部の生徒たちが、これから近藤が来るであろう部のもとに自分たちのかたきを討ってくれとばかりに激励に訪れ、実際にやってきたら応援しにいくようになったので、申し出を拒否する選択肢はなくなった格好となりました。

 やがて、文化系の部も、また大きい部だけでなく小さい部も、近藤の挑戦を受けてテストを行ったのですが、なんとそれらもすべて敗北を喫する成績に終わったのでした。

「どうもおかしいな、あのテストの結果」

 すでに部費削減の憂き目に遭った吹奏楽部の一員である秦野佐知枝が、同じ部で友人の女子生徒相手につぶやきました。

「ねー。もう多分うちの学校にある部の半分以上が挑んだのに、まさかその全部が負けちゃうなんて」

「それもだけどさ。見てよ、この各部のテストの点数」

 佐知枝は今回の近藤によるテストを行った部の結果を一覧にまとめた用紙を友人に見せました。

「五十八・六でしょ。それから五十九・一。五十七・九に五十九・三……。どこも六十点までほんのわずかで、五十五点を下回ったところはたったの二つ。その二つも五十五点にはあとちょっとだし、すべてがこんなに近い成績になるなんて変だよ」

「ほんとだー。勉強ができる人が多い部と、そうじゃない部があるだろうにね」

 紙をよく見てそう口にした友人の女子は、顔を佐知枝に向けて訊きました。

「でも、テストの中身に問題はなかったんだよね?」

 近藤が最初の柔道部から構わないと言っていた問題内容のチェックを、佐知枝は自らの吹奏楽部の後で、他の部のものも気になってやっていたのでした。

「うん。ただ、先生がそれぞれの部の学力を考慮した感じでテストの難易度は違いがあったから、平均点が近くなったのは妥当ではあるんだけど、それにしても、ほぼ全部が目標の六十点にギリギリ届かないなんて、やっぱりうまくいき過ぎで、引っかかるよ。きっとこうなるだけの何か秘密がある」

 佐知枝は近藤が担任を務めるクラスの隣の組の生徒で、その疑問点を他の部のコたちにも話して、近藤の周辺を協力して嗅ぎ回ったりしました。

 けれども目ぼしいものを発見するには至りませんでしたし、そもそも職員室に頻繁に出入りするのは難しいなど、生徒と教師の間の壁が厚くて調査自体あまりできなかったので、考えた彼女は、近藤や念のため他の人にも聞かれないように気をつけつつ、自身の担任教師である先崎まり香にそれまでの経緯を含めてしゃべりました。

「ふーん。確かに不思議だね。なんでだろう?」

 まり香は二十代と若く、温和な性格で、多くの生徒にとって話しやすく、信頼されているのでした。

「だから先生、申し訳ありませんけど、その原因を探ってくれませんか?」

「え? そう言われても、具体的にどうすればいいのかな?」

「そうですね、例えば近藤先生を誘惑して、それとなく聞きだすとか」

「ええ? ちょっと待ってよ」

 まり香は動揺しました。

「嘘です。それは冗談ですけど」

「よかった」

 何の手掛かりもつかめないでいた佐知枝としては、本当にそうしてもらえたらありがたいくらいの心境でしたが、さすがに本気でお願いする内容ではないと理性が働き、優しいまり香はほっと胸をなで下ろしました。

「協力してあげたい気持ちもあるんだけど、近藤先生ににらまれるようなことになるのは、ちょっと勘弁してもらいたいんだ」

「そうですよね……」

 佐知枝は、迷惑をかけずにまり香に頼めることや、近藤を調べる良い方法が浮かばないものかと、その場で少しの間頭をひねりました。

「ああ、そういえば思いだしたけど、前に近藤先生に、うちのクラスの生徒たちの勉強に関する資料を少し見せてほしいって言われて、貸したんだったよ」

 まり香が言い、佐知枝が返しました。

「本当ですか。そんなところだろうと思ってましたけど、やっぱり」

 改めて同じ立場の教師のほうが近藤の情報を得られそうだと感じた佐知枝は、言葉を続けました。

「じゃあ先生、できる範囲でいいので近藤先生のことを注意するようにして、気になった点があったら私に教えるのだけでもしていただけませんか? そんな神経質になるほどはやらなくていいですし、聞かせてくださった内容が全然役に立たなかったとしても構いませんから」

「わかった。それくらいならおやすいご用だよ」

 そうして、ほんのわずかではありますが、近藤がどうやってあんなにもうまい具合の結果を導きだせているのかのヒントをつかめる希望が生まれたのでした。それがわかれば有効な試験勉強のやり方も見つかるかもしれません。佐知枝はこのまま生徒側が全敗となったら、単純に悔しいのと、決してそんなことはないのに、近藤の言うように、部に所属している生徒は揃いも揃って勉強なんかそっちのけであると証明する感じになってしまうのが嫌なのでした。

 しかし、まり香から有力な情報はもたらされず、その間にも近藤は部のもとにやってきては五十点台後半にとどまる成績を勝ち取り続けて、とうとう残ったのは水泳部のみとなってしまいました。

「やあ、水泳部の諸君」

 近藤が現れて、言いました。

「私がここに来た理由はわかっているよね?」

 近藤の呼びかけに、集合している水泳部の先頭にいるキャプテンの男子が代表して答えました。

「はい」

 それまでの経過を踏まえて今日あたりだろうと予測できたため、部費の二割を没収された他の部の生徒たちもすでに応援に駆けつけていました。特に今回は水泳部以外のすべての部から集まってきたので、相当な人数になっています。もちろん佐知枝もそこに足を運んでいました。

 近藤がしゃべりました。

「さて、この一連の訪問も最後になるわけだけれども、きみたちのなかには、どうしてテストを受けたすべての部が、それも判を押したようにわずか数点足りずに、目指していた六十点を超えることができなかったのかが妙で、気になってしょうがないというコもいるんじゃないかね?」

「はい! まさに!」

 試験勉強に活かせるかもしれないので、近藤には気づかれずにその秘密を探り当てたかったわけですが、もはやそんなことはないと取り繕っても仕方がない状況になったのもあって、佐知枝が思わず大きな声で反応しました。

「フフフ、では教えてあげよう。他の先生に見せていただいたりしてきみたちの学力データを集め、それをもとにAIを扱っている会社に勤める知人に頼んで、数日間の試験勉強による伸びを加味したうえで平均が六十点にギリギリ届かない問題を作成してもらった、ということだったんだよ」

「ええ? そんなのずりーよ」

 一人の男子が口にしたその言葉に、多くの生徒が同感だというリアクションを示しました。

「いや、そうとは言いきれないんじゃないかな? AIだって未来を完璧に予測することはできないでしょ。それに、予測以上に試験勉強した人も、特に後のほうにテストをやった部ではたくさんいただろうし」

 佐知枝が言うと、近藤も続けて口を開きました。

「その通りだよ。知らなかったとはいえ、頑張ってAIの計算を上回る成績を残せばよかったんだ。設定した届かない値はたったの数点なのだから、不可能とまではならないはずだよ。とりわけきみたちは将来AIに仕事を奪われるとも言われる世代だし、そういった面でもAIなんかに負けないでほしかったんだ」

 要するに、部活動をしている生徒の勉強の取り組みは十分かというのに、さらにテーマがあったわけであり、今回ずっとおかしな言動が見られなかった近藤ですが、ふざけていないどころかすごくちゃんとしたその話の内容に、生徒たちは茫然として聞き入る感じになりました。

「ゆえに、私が勝ち続けた格好になっていたけれども嬉しくはなかったし、学力テストによる勝負というのは、やってて単純に楽しくなかったな。もう最後で、洗いざらいしゃべってしまったこともあるし、私らしくと言ってはなんだが、勉強はやめにして、きみたち水泳部と多少は関係がある、日焼けで対決なんてのはどうだろう? 私は大人でお金をいっぱい使って日焼けサロン通いもできるから、きみたちの誰か一人でも私以上に肌を黒くできたら勝ちというのでいいよ。そして、水泳部が勝利した場合には、今までもらった部費をすべて、それぞれの部に返還しようじゃないか。いかがだね?」

「ええ?」

「はあ……」

 突然の、今までとはまったく方向性の違う対決の申し出に、水泳部の生徒たちは戸惑いました。

 一方、部費が戻ってくるうえ、一人でも近藤を上回ればよいとの好条件を耳にしたことで、水泳部同様に拍子抜けした人もいたりで全員ではなかったものの、他の部員たちからぜひそれを受けてくれという声が次々にあがりました。

 水泳部は少々話し合い、再びキャプテンが回答しました。

「わかりました。その勝負、やりましょう」

 ルールは、それから十日後に日焼けで肌をより黒くできた側の勝ちという簡単なものに決まりました。馬鹿げた勝負と見る向きもありましたが、近藤以上に学力テストと比べたらそっちのほうが楽しくて良いというコが多かったですし、他の部からリベンジの期待に加えて部費返還の命運まで託されることとなり、この対決に勝てば今まであまり目立った存在ではなかった自分たちの部がヒーローになれる要素も手伝って、水泳部の部員たちはかなり張りきり、どうすればよく日焼けできるかを力を合わせて調べたり試したりし、肌を焼くのに相当時間を費やすなど、奮闘したのでした。

 そして判定の日を迎えました。

「認めよう。私の負けだ」

 明らかに近藤よりも色の黒くなったコが、それも何人もいて、近藤は潔く白旗を上げました。

「やったー!」

 水泳部、そして周りで見ていた他の部の生徒たちも、喜びを爆発させました。

 その反面、今回の一連の対決の本当の勝者は近藤だという気持ちもありました。彼が当初から言っていたように、部の活動ばかりで勉強がおろそかになっていたことを認めないわけにはいかないコは一部にとどまらないほどおり、将来AIによるマイナスの影響を受けるかもしれないが負けないでほしいと自分たちを思いやる姿や、最後はほとんど勝利をプレゼントしてくれたと言っていいルールを提示するなど、いずれも教師や大人らしく、未熟な中学生とは格が違うと痛感させられるような振る舞いで、見直したという生徒がたくさんいたのです。

 そのようにして、話は綺麗に幕を閉じるかと思われました。

 ところが後日、佐知枝はまり香からこんな話を聞くことになりました。なんでも、職員会議の際に近藤が、そこの中学校のプールには設置されていない流れるプールの機能をつけてほしいと言いだしたのですが、どうやらその要望は以前にも校長ら上層部にはしていたようで、「お金は用意できたのでお願いします」と述べ、しかし校長は「そんな予算はないと言いましたけど、お金があっても駄目です」と却下し、それに対し近藤は「チェッ」とおもちゃを買ってもらえなかった幼児さながらの態度になったとのことで、その出来事は近藤が水泳部を訪れる少し前くらいだったみたいなのです。

「つまり、立派なことを言ってたけど、本当は各部から奪ったお金はその流れるプールのためで、許可されずに必要なくなったから返していいやっていうので、最後の対決のとき、またかっこつけられもする、不利な条件を提案した。それで、なんでその勝負を日焼けなんてものにしたかってところは、あの先生、最近黒くなった自分をすごく気に入っている様子だから、ただ単に肌を焼きたい気分になってたけど、教師という立場上積極的にはやりづらいんで、堂々とできる方法として、対決でというのをひらめいたんじゃないかと思うんだ」

 佐知枝はそう推測し、友人たちに話しました。

 職員会議でされた流れるプールを求めるやりとりの件も、近藤が肌が黒くなったのを楽しんでいる感じなのも、他の教師に訊いたり、近藤を観察したりして、確かなことだとわかり、皆納得しましたし、彼女の考えは実際にすべて当たっていたのでした。

 その後、佐知枝の友人から別の友人へと話は伝わっていき、最終的に、部に所属する生徒の全員が真相を知ることとなりました。

「ピュー、ピュピュー、ピュー」

 近藤が、リズムに乗りながら口笛を吹くという、わかりやす過ぎる上機嫌な態度で、学校の廊下を歩いています。

 その背後には、以前より一層軽蔑した眼差しを注ぐ大勢の生徒がいることも知らないで……。


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