カリヨンの鐘 - Sounds of the Bell - ※ジャンル変更しました

池戸葉若

序幕

(0)2005:法廷にて



                ※


           

 法廷の扉が開かれた。

 刑務官に付き添われ、一人の青年が入廷してくる。

 満員の傍聴席。

 誰もが固唾を呑んで、彼の歩みを見つめている。

 証言台の前に青年が立った。

 裁判長は慣例にのっとり、審理の開始を宣言しようとした。しかし、口を半分まで開いたところで何かに気づき、青年に目を凝らす。

 正確には、彼の下ろした腕の先に。

 裁判長は思わず尋ねていた。


「被告人……それは、どうされたのですか」


 次に、同じように見た傍聴席の女性がぽつりといった。


「手、真っ赤」


 そのとき、うつむいていた青年がわずかに面を上げた。

 銃口のようなまなざし。

 その瞳は、冷たい空洞に似ていた。



                ※


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