第26話 vsナンバー

「邪魔しないで欲しいんすけど? 私達は不良派閥と銃探しで忙しいんすよ」


「銃ってこれの事か?」


 お探しの物であろうアサルトライフルをナンバーに投げ渡す。


「へー……こんなとこにあったんすね」


「マヤ先生が盗ってきたんだよ。風紀委員が暴れるキッカケを作るためにって」

 

「私達は巻き込まれただけなんです。どうか引き下がってくれませんか?」


「ふむふむ、なるほど……」


 メイの丁寧な対応をナンバーは速攻で無視し、俺達に銃口を突きつける。

 周りの風紀委員達もセシリーの派閥を放置して、俺達へと敵対する体制を取った。


「困るんすよねー。セシリーだけでなく、マヤ先生まで庇われたら」


「やっぱそーいう解釈になるのね」

  

 でっち上げで人を襲うような連中だから、察してはいたけどよ。

 マヤ先生はこうなる事を予想して、風紀委員のヘイトを俺達に向けさせた。


 この学園に来てから揉め事に巻き込まれてばっかだよなぁ……やれやれ。


(しかも、あんまり状況もよくないしな)


 数はナンバー含めて十二人。

 魔法の銃は寮の二階にいる俺達の方まで余裕で届く。

 

 高低差があるとはいえ、こちらが有利という訳ではない。


「ご主人様、ここは」


「あぁ、やるしかない」


 暴力には暴力を。

 この学園の校風がなんとなく分かってきたよ。


「き、貴様……何故私を」


「勘違いすんな。リリィの悲しい顔を見たくなかっただけだ」


「……だろうな」


 剣を抜きナンバーに突きつける。

 セシリーの事はライムに任せるとして、俺達はヤクザ風紀委員の相手だ。


「お姉ちゃんをこんな目に合わせるなんて、絶対許せない!!」


「ご主人様の敵は、私が全て排除します」


 二人ともやる気満々だが、数は圧倒的に不利。

 おまけにナンバーはAランクのセシリーを一方的に叩きのめした脅威。


「よーし……」


 だったらやることは


「最初から盛らせてもらうぜ」


 一撃必殺の離脱戦法だ。


「「がぁああああああああ!?」」


「っ!! 分身がもう近くに!?」


「本体も行くぜ!! おらああああああああ!!」

 

 俺の声を合図に、忍ばせておいた分身二体が風紀委員を攻撃する。

 思わぬ奇襲に動揺している所を見逃さず、俺もすかさず突撃。


 一瞬で近づくことが出来た。


「こ、この!!」


「遅い!!」


 ガァン!! と突き立てられた銃を蹴りで飛ばす。


 こいつは銃を持っていないから後回しでいい。

 最初に倒すべきなのはボスではなく、有象無象の風紀委員達だ。


 遠くから銃を乱射されるだけで厄介なこいつらは、残せば残すほど厄介になるだろう。


 だ・か・ら


「”多重・黒影連斬”!!」


 全員まとめて叩き潰す!!


「うわあああああっ!?」


「こ、こいつ!! 本当にBランクか!?」


「強すぎる!!」


 ”黒影連斬”により周囲の風紀委員がまとめて吹き飛ばされ、戦闘不能になる。

 次から次へと繰り出される攻撃の数々に、連中も動揺で身動きが取れないらしい。


 だが、


「遅いっすねー」


 その中に一人、俺の動きに全く動じていない人物がいた。

 すかさず俺の移動ルートに銃口を向け、ババババババッ!!と弾丸を放つ。


「あっぶね……と、見せかけて”シャドーシュート”!!」


 一応、攻撃が来ることは予想しており、弾丸をかわしながらお返しに影魔法の弾を発射する。


 あの判断力と正確さは流石隊長格といった所か。

 いくつもの奇襲に対して冷静に対処できる姿を見て、セシリーがやられてしまうのも納得した。


「へぇ……じゃあ少し本気でも出そうかな」


 だが俺は知っていた。

 ナンバーは奥の手を隠していると。


「”雷速”」


「っ!?」


 瞬間、ナンバーの姿が消えた。 


 ナンバーがいた位置には砂埃とバチバチッと電気のようなものが舞っており、影も形も無い。


 電気?


 そして消えただけなのに、砂埃の量がやけに多い。






 ……まさか!!


「リリィ!! 加速しろ!!」


「へっ!? う、うん!!」


 俺の呼びかけに反応し、リリィが光魔法でダッシュをかける。


 それから数秒後だ。 

 リリィがいた場所で蹴り上げるナンバーの姿がハッキリ見えた。


「あー……かわされちゃったっすねぇ」


「嘘!? まだ移動したばっかなのに!!」


「”ボルティックシューズ”か……トップクラスのスピードで戦場を駆ける雷属性の武器だな」


「あったりー、流石ゼクスくんすねー」 


 ナンバー両足からバチバチと電気が流れている。

 

 ”ボルティックシューズ”


 雷属性の靴で装備した者にとんでもない加速力を与える武器だ。

 雷属性はそれなりの火力で凄まじいスピードを持つ属性でそこに武器で更なる加速力を得たって感じ。


 やっている事は単純だが、あまりの速さに初見殺しの鬼なんて言われてたな。

 

 上級者になるとキャラコンを極めて更に意味わかんない動きをしてくるから、余計に対処を難しくしていた。


「どうっすかー? 追いつけないっすよねー」


「そーだな……」


 確かに速いのは強い。

 そのスピードをもっと影魔法にもよこせって何度もSNSで愚痴ってたのを覚えている。


「でも速いだけじゃ勝てないぜ?」


 スクスロはそんな甘いゲームじゃない。

 どんなに加速されようが対処はいくらでも出来る。


 上級者のプレイってのを見せてやるよ、

 クソ風紀委員さん。


◇◇◇


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