とある辺境貴族の三男に転生。ランクマッチが存在する魔術学園で最下層に追いやられたが、何故か付いてきたDLC特典で成り上がろうと思います
早乙女らいか
一章
第1話 転生したらゲームの世界でした
「こんな無能な息子は始めてだ!! 出ていけ!!」
「へ? は、はいぃ!!」
目を開けた瞬間、突然目の前に現れたヒゲの男に怒鳴られ慌てて扉の外に出る。
何だ何だ!?
あいつは誰だ!?
俺は何故怒られている!?
というかここは一体……
ピキーン!!
「思い、出した……?」
脳内に流れていくこの身体の持ち主と思われる者の記憶。
ゼクス・ローエン
どうやら俺の名前らしい。
ローエン家という辺境貴族の三男として産まれたが、跡継ぎとしての価値も才能もない俺は家族に嫌われ、肩身の狭い思いをしてるのだとか。
そしてさっき俺にブチぎれてたのはハリス・ローエン。
俺の親父だ。
という事は転生した?
知らない世界と単語から察するに間違いないと思う。
で、何の才能がないかっていうと魔法の適正らしい。
魔法が存在する世界?
ていうかなーんか見たことある風景が外に……
っ!! また頭が……!!
「適正魔法は……影? まさかスクスロの世界か!?」
適正魔法というものが無意識に頭に浮かび、同時にこの世界がスクスロというゲームの世界という事も理解した。
スクール・スロッカーズ
世界最大の魔術学園を舞台に、生徒達と死闘を繰り広げる学園ファンタジー対戦ゲームだ。
よくあるファンタジー的な世界観だが、最大の特徴は全世界のプレイヤーと競い合うランクマッチが存在する点。
俺はそのランクマッチにガチでのめり込んでいた。
で、掴み取ったのが最高ランクのSS。
超嬉しかったなあ。
最高ランクに到達した時は身内や知り合い、めっちゃ可愛い女性Vtuberさんに褒められて嬉しかった。
ま、転生してその地位も実力も全て失ったわけだけど。
(しかも影魔法っていうのも最悪なんだよなぁ)
スクスロにはキャラ一人一人に適性属性が存在し、その適正によって武器を決めていく。
当然、各属性限定の武器もあるのだが、この影魔法というのは適正武器が”最初は”存在しなかった。
影魔法は影で敵の視界を塞いだり、影でテレポートしたり、僅かな時間だけ無敵になれるのが特徴。
だが、決定打となる魔法が存在しない。
このゲームは基本1vs1の戦いが基本だ。
自分で決定打が作れなければいつまでたっても相手は倒れない。
その結果、先に高火力が出せる炎属性や光属性等にボコボコにされ、ランクマッチのティア表では最下位のDランクを付けられた……
どうやら俺の認識はこの世界でも間違っていないらしい。
(あーあ、追加DLCで貰える”あの武器”があれば……)
あの武器さえあれば影魔法は環境レベルで強くなれるのに。
DLCなんて概念、現実とかしたこの世界で祈っても仕方ないけど。
「多分だけど、そのうち捨てられるよな」
役立たずの息子をいなかった事にする、なんて事はファンタジー世界だとよくある事。
俺はこのゲームについてよく知っている。
成長の方法も各属性へのメタもある程度理解しているつもりだ。
だがそれらは時間があればの話。
何もない状態でいきなり放り出されたら流石に積む気がする。
まずはゼクスのアイテムを見てみよう。
何かいい物でも入っているかもしれない。
アイテムはゲーム内だとボタンをポチポチして開いていたけど……
「お、これかな」
頭の中でインベントリと念じると、ブオンとウィンドウが開き、インベントリの中にあるアイテムを表示してくれた。
どれどれ。
ポーション×3
普通のナイフ
簡易爆弾×2
初心者の盾
初心者の弓……
うーん、以下にも初期装備って感じの中身。
才能が無いからロクな物が与えられてない。
これじゃあ影魔法を極めることは不可能だなぁ……
…
……
…………
”影竜の刃”
「あれ?」
これ、DLC特典の武器じゃね?
インベントリの一番下に表示された武器を見て、俺は驚いた。
影竜の刃とはDLCコンテンツ第二弾で追加された武器だ。
新たな魔法やステージと共に追加された待望の”影魔法専用”の武器で、その性能は今まで冷遇された影魔法のイメージを払拭するには十分な物……
いや、言葉を選ばずに言うけどぶっ壊れだわ。
影竜の刃は固有スキルで【影ノ一撃】と【影分身】を持っている。
まず【影ノ一撃】
これは一定ダメージ以下の影魔法に確定急所を付与するという物。
火力不足を確定急所で補うという中々のパワープレイだなぁと当時は思った。
更にこの【影ノ一撃】、影魔法の連続攻撃を行った場合は一つ一つの攻撃に確定急所が付与される。
流石に上位ランクでゴリ押しは出来なかったけど、メイン火力にするには十分だった。
で、問題がもう一つの【影分身】
その名の通り影で自分の分身を作るのだが……なんとこの分身、プレイヤーの魔力がある限り魔法が使い放題&固有スキルが付与されるというぶっ壊れ性能をしていたのだ。
だって1vs1の戦いが1vs3とかになるんだよ?
分身系の魔法やスキルが他にないスクスロでそれはヤバすぎだって。
一応分身は二体まで、HPは1という制約はあるが、影魔法は元々逃げに強い性能。
分身を生かして敵をかく乱し、隙をついて急所ダメージを与えまくるというイカれた戦法が大流行。
あっという間に環境上位に食い込んだ。
まぁ、炎や光属性も同じくらいぶっ壊れの調整が入って一強ではなかったんだけどね。
スクスロの運営ってあんまりナーフしないんだ。
それでもS~Aティアまでは維持してたと思う。
最弱から最強格へと成り上がらせたあの武器をまさか再び手にするなんて。
これは希望が持てたぞ。
よっしゃあ!!
影魔法を極めてこの世界でも無双しまくるか!!
バンッ!!
「おい!! まだいたのか!!」
「うぉあ!? そりゃまだ数十分しか経ってないし!!」
強く開かれた扉と共に親父の怒号が響き渡る。
「突然だがお前に最後のチャンスをやることにした」
「チャンス?」
「本当は今すぐ放り出したいところだが、その弱さを証明する証拠がない」
やっぱり俺を放り出そうとしてた!!
ただ弱さの証明と言う事は、このゼクスくん今まで何もやってなかったな?
具体的にどういう理由でいなくなったかを説明しなければ貴族社会での立場が悪くなる。
メンツと地位が大事な貴族だ。
俺みたいな落ちこぼれでも扱い方は慎重にしたいんだろう。
で、その最後のチャンスとやらは?
「そこでお前にはランクバトルの存在するフリオニール学園へ行ってもらう」
「え!?」
この世界でまたランクバトルを!?
驚きと興奮が湧き上がる。
あの人生をかけた戦いの日々が。
メタを考え続ける毎日が。
新コンボや戦術を開発したり、身内とワイワイ集まって楽しんだり。
後、可愛い子に「〇〇さんつよーい!!」と褒められる瞬間が。
また味わえるって事か!?
「ここでお前が最弱である事を証明……」
「行きたい行きたい!! 是非行かせてくださいお願いします!!」
「うおぉ!? き、急にやる気になったな……まぁその自信も入学した瞬間打ち砕かれるだろう。せいぜいあがくといい」
困惑した様子で封筒を渡した後、親父は再び扉の奥へと戻った。
また怒られたくないので、封筒の中身は俺の部屋で読むことにしよう。
「へへっ……最高じゃねぇか」
再び訪れるランク生活。
前世の生きがいが戻ってきたことに、俺はニヤケ顔を隠せない。
まずは修行からだ。
DLC武器は強いけど初期状態だと微妙。
色んなステータスの底上げや魔法の習得、後は”影竜の刃”の固有スキルを使いこなさないとな。
さーて、楽しくなってきたぞ~♪
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