第2話 北条氏綱

「さてさて、まずはあの北条氏綱を騙さなくてはなりませぬ。」


雪斎の策である。

だが……。


「あの平和好きの氏綱が今川領に内乱を起こすために我らに味方するかね。」

「人というのは必ずや欲というものがございます。氏綱が一番欲しがっているものといえば?」

「河越城か。」


承芳が答える。


「左様です。いま現在は武田領ですがな。」

「それをどうやって明け渡すのだ。」

「この雪斎、武田晴信殿と書状を交わしておりますゆえ、それを持って氏綱を騙すのです。」

「ほぅ…。」


確かに武田晴信との書状なら信憑性があり、あの氏綱でも引くに引けないだろう。

だが問題なのはその晴信が当主ではないことである。


「当主でもない若い少年の言葉を二つ返事で氏綱が了承するか?」

「ならば確固たる証拠を提示いただければよいのです。」


雪斎の策の披露はこの後も続いた。


一方、駿府館…。


「寿桂尼様?」

「越前。そなたはどうしても承芳を討つ思案ですか?」

「寿桂尼様まずはまずは。」


越前は寿桂尼を一つの空き部屋に追いやった。


「おお!これはこれは恵探様!お待ちしておりましたぞ。」

「そなた……。」


恵探の目が猜疑に満ちる。


「いやはや、武装しておられるとは話が早くて助かりますな~!そう!これからあなた様は梅岳承芳を討っていただきます。躊躇はありませぬな?」

「……。」

「そうですかそうですか!ご協力ありがたいことです!あなた達が殺し合えばいずれあなた様の天下でござます!それをこの越前が身を持ってご案内いたす所存でございます!……。お楽しみを。」


福島越前は家臣団のもとに発った。


玄広恵探は何者かに書状を書く。


梅岳承芳は北条氏綱のもとに書状を送った。


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