勇者を召喚したらステ振りミスって変なのが来た!

@nekomaruko

第1話

 私の名はラウル・バートランド。若干ながらも、グラント王国の筆頭魔術師という重責を担っている


 名高い召喚術師の一族に生まれ、歴史にその名を刻むほどの天才として、魔力を極限まで引き上げたのだ!


 彼の目は燃えるような野心で輝いていた。


「この召喚の儀により、最強の勇者をこの世に呼び寄せる。そうすれば、私の名声は更なる高みへと昇り詰める!」


 心の中で、彼は勝ち誇るように高笑いした。


 ラウルの足元には、複雑な模様が刻まれた巨大な魔法陣が広がっていた。その周囲で、六人の魔術師が絶え間なく呪文を唱え続けている。重厚な王座には王とその側近たちが座り、彼らは緊張した面持ちでこの場を見守っていた。


「クク・・・・クククッ・・・・くはははははぁーーー!」


 ラウル・バートランドの狂気じみた高笑いが、重厚な部屋に響き渡る。


「やはりそうか!」


 心の中で勝利を確信に変えながら、彼は手元の石板を見つめていた。光の文字が浮かび上がる。


「『ステータスを割り振ってください』」


 と示されていた。


 各ステータスが列記されており、最下部には


『残り60ポイント』


 との表示。彼の心は得意げに躍る。


「先代筆頭魔術師の祖父でさえ25ポイント・・・・私は60ポイント。魔力量に全てを賭けた甲斐があった・・・・これだけのポイントがあれば、どんな勇者だろうと最強にできる・・・・しかし、先日の会議で今回も魔術師タイプと決められたからな…」


 彼の口元に狡猾な笑みが浮かぶ。


「ただの魔術師で終わるわけにはいかないがな・・・・」


「まずは力・・・・日常生活程度だな・・・・」


 魔力を込めた指で石板に2ポイントを入力。


「素早さは2でいい、耐久力も魔法でなんとかなるから2と・・・・信仰心は4か・・・・低すぎると暗黒面に落ちるからな・・・・」


 次々とステータスを入力していく。


「きたぞ・・・・」


 ラウルはうすら笑いを浮かべる。


「知識…残り50ポイントか・・・・他の3個ステータスには9ポイントで十分・・・・知識に41ポイントを・・・・」


 彼の指が石板上で軽快に動く。


「ふふふ・・・・見よ、未だかつてない魔術師の誕生だ・・・・!」


 知識のステータスが急上昇する様子を見ながら、彼の心は高揚し、内心で高笑いする。


「この偉業・・・・グラント王国で、いや、世界でも類を見ない・・・・いや、いるはずがない・・・・」


 突如、システム音が響く。


「ピコーん。ステータスの割り振りが完了しました」


「ちょっと待て・・・・」


 ラウルが慌てる。


「まだ他のステータスを・・・・」


「召喚を開始します」


 システム音が断固として言い渡す。


「待て待て!早すぎる!他のステータスに・・・・!」


 彼の言葉は、魔法陣が放つ眩い光によってかき消される。その光景を見ていた王は、期待に目を輝かせていた。



 魔法陣は、静寂を破るかのように活発に輝き、周囲の空気を振動させる。複雑な符号と古代文字が絡み合い、光と影の幻想的な舞を繰り広げる。その中心で、エネルギーが強烈な光として渦巻き、異世界への扉を開こうとしていた。


「まずい、これは本当にまずい・・・・」


 ラウルの顔色は青ざめ、心の中で悲鳴をあげる。彼の目は不安と計算づくの冷静さで揺れ動いていた。


「止めるわけにはいかない・・・・次の召喚まで数十年は待たなければ・・・・そんなことになれば、私の立場が・・・・」


 彼の手は震え、咄嗟の決断を迫られていた。


「誤魔化すしかない・・・・」


 ラウルは王の方を見る。王は、煌びやかな王座に座り、召喚の結果をじっと見守っていた。その顔は、期待と好奇心に満ちており、ラウルはその表情から一筋の望みを見出す。


「王はまだ何も気づいていない・・・・これは私のチャンスだ・・・・」


 部屋は期待と緊張で満ちており、他の召喚術師たちも石板に注目していた。彼らの中には、ラウルの成功を願う者もいれば、失敗を期待する者もいた。空気は重く、静まり返った部屋にはただ魔法陣の光がひたすらに輝き続けていた。これなら、何とか誤魔化せるかもしれない。ラウル・バートランドは、自分自身に言い聞かせる。


「失敗したような雰囲気は絶対に出してはいけない・・・・自信を持て、ラウル・バートランド!これまでのすべては、この瞬間のためにあったのだから!」


 彼は同門の者たちが休息を取り、恋愛に夢中になっている間も、一心不乱に魔法の研鑽に励んできた。彼らが遊びや愛に身を投じている間、ラウルはただひたすらに魔力を高めることに専念していた。彼の心はその昔を思い出し、眉をひそめた。あの日々の努力が、今、この瞬間のためだったのだ。


「はあはあ・・・・まあ、まんざらミスってるわけじゃないし・・・・」


 ラウルは自分に言い聞かせるように呟く。


「何とか形にはなっているはずだ・・・・」

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