第24話 バレた!え?祝福の子!?

ふう、バレずに買い物出来るといいな……

ん?なんだか騒がしいな

バレたか?

いや、これは……


「「「キャー!」」」


「祝福の子様よ!」


おお、あれが祝福の子一行か。


「お兄ちゃん……?」


誰だ?俺には弟なんて居ないぞ?


「ねぇ、サウロンお兄ちゃんでしょ?」


あぁ、獣人の街にいた子か

この様子じゃあ俺の正体には気づいちゃいないらしい

これはぁ……使えそうだなぁ


「やあ、久しぶ―――」


「お前、呪いの子だろ」


誰だ?この天使

俺のことを知っているみたいだが、心当たりが全く無いぞ?


「貴様ァ!よもや、スケアクロウを!姉達を!殺した事を忘れたとは云うまいな!」


あぁ、あの時の天使の一人か。

こうも声高に暴露されるとカラザーは利用出来ないか……?


準備も足りないし、ここで戦いたくはないが


「お兄ちゃんは……そんなことする人じゃない!」


お、まだ信じているのか?じゃあ乗っておこうかね


「なぁ、人違いじゃないか?俺はそんなことしてないぞ」


「こんな子が?」


「天使様、間違いじゃないんですか?」


「そのような惨いことをするようには見えないが……」


お、このまま逃げ切れるか?


「おい!ウェルナーが死んでいるぞ!」


クソ、おっちゃんの死体が見つかったか

やばいかもな


「おい、さっきの小僧……ウェルナーの家の方から来ていなかったか?」


「やっぱりあいつが……」


「ねぇ、嘘だよね……?お兄ちゃん……!」


風向きが変わったな。

それも悪い方に


これはこのまま逃げ切れるとは思えないし、主人公に精神攻撃だけでもしとこうかね


神罰執行ジャッジメント・アクティベーション……」


「はぁ……呪いの子サウロンが命ずる、《拘束しろバインド》」


「「「ッ!」」」


「体が……動かない!?」


「貴様ァ!何をした!」


「俺はさぁ……襲ってきた奴を撃退しただけなんだ……なあ、祝福の子主人公、このまま俺を放って置いてくれないか?静かに暮らさせてくれないか?」


「お兄ちゃん……」


「耳を貸すなぁ!ビルボ!!」


「君も……被害者なのかい?」


こいつ……チョロくないか?


「僕はやっぱり君がそんな事をするような人には見えない」


「この世界の歪みの、被害者のように思えるんだ」


「ビルボ!騙されないで!」


説得を続行する事にしようか。



ゲーム内:祝福の子主人公視点


どうやら、モルデンガイネンの文字盤の情報で、呪いの子の生存とその大まかな所在がわかったらしい。


で、今まで呪いの子が死んだと高を括っていた国の上層部無能共が泡を食っていると云う訳だ。


僕の提言を散々無視しておいて今更慌てて本格的な対策を始め出した。


……全く。

検問だけで捕らえられる訳が無いと云うのに。


お陰で僕ら聖伐隊の仕事が増えた訳だが……

全員が志願兵とはいえ、活動限界はあるんだぞ?


にしても、これまで何をしていたんだ?

物凄い力を持っていることは確定してはいるが、被害報告は大きいものが3件、そのうち2つは状況証拠による断定、中小規模のものでさえ指で数えられる程だ。


伝説の悪逆の限りを尽くしていた呪いの子のイメージとはかなり乖離している……


どう云うことだ?


最近、この事ばかり考えている……

まあ、気にしていてもわからない事だな

会ってみてから考えればいいか。


お、街が見えてきたな


「魔力の提示を!」


魔力検査か、ここはしっかりとやっているみたいだな


「貴様ァ!火力持ちだな!死ねぇ!」


なんだ?衛兵が人を斬ったぞ


「なぁ、アイリス。あれって許可されてたか?」


「いいえ、切り捨てていいのはあのクズだけよ」


クズ……やっぱりアイリスは家族の仇である事もあって頑に呪いの子と融和する事を認めそうに無いな


「そこの衛兵!」


「聖伐隊の皆様ですね!お目に掛かり光栄でございます!」


「うむ。所でその検問、誰の指示で火力持ちを殺しているのだ?」


「ハッ!領主様でございます!」


あぁぁぁ……こう云う奴がいるから、レジスタンスやらが生まれて国内が混乱するんだよ!


クソッ!有能な敵呪いの子より得てしてこう云う無能な味方アホ領主の方が面倒なんだよ!


「はぁ……カラザー、領主の館に向かう」


「りょーかい。全く……お人好しなんだから」


「今月で4度目よ?これ」


「そんなんじゃないって、今この状況で国内が混乱しているのは好ましく無いからさ」


「謙遜しなくていいんだぞ?」


まただ。祝福が与えられてから、何をしても好意的に受け止められる。


怖いからやってないけど、多分そんな罪を犯したって、褒め称えられるんだろうなと思う。


それが嫌な訳じゃ無いけど、どことなく不気味で怖い。


…………


「―――それでは領主よ、魔力検査の事だが……」


「えぇ、あの穢らわしい火力持ちを殺しておきました!」


「気色悪い彼奴等がいないので、この街は空気が綺麗なのですよ!」


「聖伐隊の皆様や国の上層部の方々は様々なしがらみがあるでしょうが、私達にはそんな物はありませんので、このような大胆な改革を―――」


「もういい。連れて行けデッカード」


「なッ!辞めて下さい!何をするんですか!?」


「私は!只々国のことを思って!」


「……それが迷惑なんだよ」


「行こうか、皆」


………


その後領主の命に逆らってこっそり火力持ちを街に入れていたウェルナーという人に会った。


金を取っていたことは関心しないが、それでも領主の命に従わなかった事は勇気ある行動だと思う。

彼のお陰で沢山の火力持ちが救われただろうし、治安も守られた。


彼の様な有能な味方が増えてくれると、もっと楽なんだがなぁ……



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る