第7話 大河と大森林
「すっげぇ……」
乗り慣れない馬上でバランスを取りながら、前方に見える景色に感嘆の声を漏らした。
「王弟殿下、これを見るのは初めてですかな?」
「あぁ……!まさに絶景だ……」
大将軍ファバードの問い掛けに、感情を込めながら返事をする。
天才軍師・エルジスが住むヤングルの森へ向かっていた俺(クファシル)達。将軍二人を含む精鋭達と移動中、突如として雄大な水の流れが現れた。
ヴェルス国最大の大河・リーリラ川だ。
漫画の世界で幾度も見てきた川。当然初めて見る本物に、思わず感動してしまった。
「この川を渡ると、いよいよヤングルの森は目と鼻の先になりますぞ」
「おぉ、結構近いんだね」
もう少し長い距離の移動かと思っていたが、案外早く着きそうだ。
「王弟殿下、ここで採れる魚は非常に美味で御座います。儂のおすすめは『岩塩焼き』ですなぁ!」
食についてのアドバイスもくれる大将軍ファバード。そういえばこの世界に来てから、魚は食べた事無い事に気が付いた。
「へぇ〜それは興味湧くなぁ。今度捕まえに行こうか」
「ほっほっほ、
「自分で捕った方が美味しいでしょ!」
「それはそうですがなぁ」
他愛も無い話をしながら、大河に架かる大橋を渡る。今度は目の前に緑の大群が見えてきた。
「あぁ殿下、前に見えますあの森こそ『ヤングルの森』で御座います」
「あれが……!」
風に揺られた木々と共に、自然の声が鳴り響く。鳥達が羽ばたく音も聞こえ、緑は深く奥まで続いているようだ。
「このまま道通りに行けばエルフィンの街、我らの目的地はこちらでございます」
木と木の間にある細い抜け道に入り先導するファバード。まさに隠れ家を探しているようで心が踊る。天才軍師と出会えるまで、あと少しだ。
◇◆
「ほぉ。意外と速かったじゃないか……」
「言っていたお客人ですか?」
比較的小柄な鷹を肩に休ませ珈琲を楽しむ一人の男に、少年が問い掛けた。
「あぁ、お前にも是非会わせたかった御人だ。ここへ案内してやりなさい、イグル」
「了解しました。エルジス様」
イグルと呼ばれた少年は、短く返事をしながら森の中へ駆け出した。
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