第79話 精霊王は、お祖父ちゃん?
「アナ、話は聞いた。フェアランブルの王家から親書が届いたらしいな」
私とカーミラ王女殿下が話をしている所に、旦那様がやって来た。
相変わらず肩にはイルノと、今日は手にはコマローを抱っこしている。いいなぁ!
「はい。旦那様が来られてから一緒にと思いまして、まだ中身の確認はしていないのですが……」
「ああ、待たせてすまない。早速内容を確認しよう」
フェアランブル王家からの手紙とあって、旦那様も警戒気味だ。
王女殿下の侍女からペーパーナイフを借りて丁寧に親書を開封すると、旦那様と一緒に中身を確認する。
…………。
これは……!!
むしろ凄く好意的??
手紙に目を通した私は、思わず首を傾げてしまった。
手紙には、最近の私のフェアランブル国内での活躍を素晴らしいと思っている。アウストブルクから帰国したら、是非その話も聞かせて欲しい。裁判についても応援している。私と旦那様はベストカップルだ! といった内容がツラツラと熱く書かれていたのだ。
なんか、思ってたんと違う……。
確かにこれは王家からの正式な手紙というより、セレスティア王女殿下個人からの親書だ。一六歳の少女が書いたお手紙って感じが凄くする。
ふと隣を見れば、旦那様にとっても手紙は予想外の内容だった様で、何とも腑に落ちない表情をしていた。
「どうしたの? アナ?」
「いえ、それが……予想外に好意的なお手紙でして、逆に戸惑ってしまったというか……」
王女殿下にお見せしても問題ない様な内容だったので、そのまま手紙を渡す。
手紙に目を通した王女殿下は顔を上げると言葉を選びながら話し始めた。
「これは……まるでファンレターね? セレスティア殿下とは何度かお会いした事があるの。そんな腹芸が得意なタイプの方では無かったから、恐らく本心だとは思うのだけど……」
え、王家の人間ならある程度の腹芸は出来た方が良くない?
いまいち心配だな、フェアランブル王家。
「セレスティア王女殿下直々に会いたいと言われればお断りなんて出来ませんし、一度はお会いする事になると思います。先程王女殿下が言われていた様に、精霊について相談するには丁度良いかもしれないですね」
「そうね、フェアランブル王家自体が精霊についてどう考えているのか、私も知っておきたいわ」
「王女殿下は、やはり精霊の存在を広くフェアランブルの民に認めさせたいというお考えですか?」
「そうね。とはいえ、すぐには考えを改められないでしょうし、精霊の存在を認知するのが必ずしも良い事だけではないのが難しいところなのよね。幸いアウストブルクは精霊と良い関係を保っているけど、それでも精霊を悪用しようとする人間を完全に無くす事は出来ないわ。人々が精霊の存在を認めるという事は、そういう危険性も孕んでいるのよ」
そうか、その存在を知らなければ、そもそも利用しようなんていう発想自体が湧かないもんね。
しかも、フェアランブルには過去に散々やらかした前科がある訳だし……確かに心配かも。
「ただ、それでもやはり人間が自然の恩恵に与っている以上、正しく知って感謝をする事は必要だと思うわ。そこから先は上に立つ者の責任ね。まぁ、まずはフェアランブルの国民に精霊の存在を認知させる為の手段を何か見つけなければ、これもただの杞憂になってしまうけれど……」
「確かに、そもそもその手段がなければお話になりませんよね」
そう言って、私と王女殿下が頭をひねっていると、それまで静かに話を聞いていた旦那様がこう言った。
「ふむ、実際に姿が見えれば理解が早いのだがな。私もそうだったが、姿が見えて話も出来るとなれば存在を認めるしかあるまい」
……なるほど。
旦那様の精霊に対する寛容性はちょっと規格外だったから置いておくとしても、一般的にも姿が見えた方が理解しやすいのは確かだろう。
しかし、そうは言っても精霊は見せようと思って見せられるものではないしなぁ。
……いや、待てよ?
もうずいぶん昔の事の様に感じるが、契約前の精霊トリオに、何故旦那様に精霊が見える様になったのか尋ねた事がある。
その時精霊トリオは『人間に見える様にしたり、見えない様にしたりは、自分達の意思で変えられる』『でもルールを決めるのは精霊王様だから、それを破ると体が小さくなって消えてしまう』という様な事を話していた。
それはつまり、精霊王の許可があれば人間の前に姿を表しても良いって事なのではなかろうか。
『精霊王様にお願いする』なんて発想は今までなかったけど、よく考えると精霊王ってお母さんのお父さんなんだよね?
もしかして、頼めば何とかなるのでは?
ちなみにこの場合、血縁上の関係は無いとは思うのだが、精霊王様は私のお祖父ちゃんという事にもなるのだろうか??
うーん、状況が特殊過ぎてちょっとよく分からないや……。
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