第16話 危うくハッスル
「王女殿下、私も……精霊使いになる事は出来ますか?」
旦那様のその言葉を聞いて、私だけでなくお義兄様もカーミラ王女殿下も驚いた顔で旦那様を見た。
「ハミルトン伯爵が? ……それは、考えた事無かったわね」
王女殿下はそう言うと真剣な表情で考え込む。
私もそんな発想すらなかったが、考えてみれば旦那様は精霊達と十分過ぎる程のコミュニケーションが取れている。
自分基準で考えていたのでそれも普通に受け入れていたけれど、私と婚姻を結んだからといって、ここまで自在に精霊と意思疎通がとれて精霊からも好かれているというのは実は
フェイラー辺境伯家の血が流れる旦那様は、実はフェイヤームの民の末裔で、しかも『精霊の巫女』の血族だとかいう話もあったし。
結局精霊の巫女というのが何なのかイマイチよく分かってない感もあるのだが、取り敢えずなんか凄そうではある。
……あれ? むしろ私より旦那様の方が精霊使いの素質あるっぽくない??
私のお母さんも辺境伯家……ひいてはフェイヤームと何らかの関係があるのではないかと思われてるけど、その辺りはまだまだ謎だ。
「ハッキリ言って盲点だったわ。実は精霊使いって歴史を遡ってみても圧倒的に女性が多いの。それでハミルトン伯爵が精霊使いに、っていう発想そのものが無かったけれど……。そうよね、どう考えても適正はあるわよね」
カーミラ王女殿下も私と同じ考えに至ったらしい。
「……魔力も一定以上は必要なのだけれど、ハミルトン伯爵の魔力量について尋ねてもいいかしら?」
「貴族全体の平均位ですね。高位貴族としてはやや少ないと思います」
そうなんだ。何となくだけど旦那様は魔力も高いイメージがあった。意外だな。
私が意外そうにしていたのに気付いたのだろうか。旦那様は苦笑いしながら言った。
「母はかなりの高魔力保持者だったのですが、父は魔力が少なかったのです。私は、足して2で割られた様ですね」
「そうなのね。貴族としての平均があるなら大丈夫かしら? 精霊と契約したり、その契約を維持するには結構魔力を使うのよ」
そうなんだ。
「だからね、実はアナみたいに一度に三人の精霊と契約を結んでるのって例が無いの。今のうちに言っておくと、アウストブルクでも凄く珍しがられると思うわ」
そうなんだ!
「私自身には、特に魔力を使っているという意識も無かったのですが……自覚せずに魔力を消費してたのでしょうか?」
「三人の精霊を常に呼び出している状態でしょう? 普通に考えると相当な魔力を常に消費してるはずなのよ。最初見た時は驚いたもの。恐らくアナは尋常じゃない程魔力が高いと思うわよ?」
そうなんだ!??
『アナの魔力はいっぱいだよ!』
『後は多分、変換率の良さだね。僕たちとアナの魔力相性がいいのと、良い信頼関係が築けてるからだと思う』
『僕たちとアナは仲良しだからねー』
私の焼いたクッキーを、リアちゃんと一緒にニコニコ食べていた精霊トリオがそう話す。
くっ、
「まぁ! 魔力変換の法則性には相性や信頼関係が影響していたの!?」
『そうだよ!』
『弱い魔力でも、好きな魔力で好きな人間となら契約出来るんだー』
『逆に、凄い魔力で押さえ付けられたら、無理矢理契約させられる事もあり得るんだけどね』
「!!?」
え!? 何それ、怖っ!
王女殿下も初めて聞く話に驚愕の表情を浮かべている。
「り、リア! これは聞いてもいい話なのかしら?」
『限りなくアウトですわ。この子達は制約外にいる子達だから、何でもアリなのね……』
制約……?
「王女殿下、その制約というのは?」
「そうね。さっき
私と旦那様が頷くと、王女殿下は話を続ける。
「アナとこの子達は直接契約を結んだみたいだけど、実は私とリアはそうではないの。……というか、精霊と直接契約を結んでいるのなんて、アナくらいだと思うわ」
え? 私、そんな特殊な事やらかしちゃいましたか?
『アナは魔力量がすっごいからね。もしあの時僕たちが拒否しても、『うるさい、お前はハッスルだー!』ってゴリ押されてたら、僕ハッスルになるとこだったよ!』
「ハッ……スル??」
キョトンとした顔の王女殿下が首を傾げる。
ギャーーーー!!
やめてやめて、王女殿下の前で私のネーミングセンスを晒さないでーー!?
『どうも、マッスルです』
「ぶふっ!?」
調子に乗ったフォスが、王女殿下の眼前で『ムキッ』と変なマッチョポーズをかます。
堪え切れず吐き出す王女殿下に、隣で肩をプルプルと震わせている旦那様。
うわーーん! みんな意地悪ーー!!
『ねぇ? これって僕もノッた方がいい感じ?』
『精霊にもキャラってあるもの。無理しなくても良いんじゃないかしら?』
「みんな、楽しそうだなー……」
『………アレクサンダー、可哀想だね』
『こっそり早めに籍だけ入れちゃいましょうか?』
『アリだね』
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