第2話

「おかしいな、絶対にこの辺にあるはずなんだけど」


 ブツブツと呟きながら、リリアは今日も太郎の部屋の大捜索をしている。リリアが太郎の部屋に来てからもう4日が経っていた。

 太郎の部屋はそれほど大きい訳では無いが、体の小さなリリアにとっては捜索はとても大変なことだ。

 太郎が学校に行っている間も好きなように探していいと、太郎はリリアに伝えた。ただし、両親には見つからないように。

 こんなに小さな子供がいるなんて知ったら、両親はびっくりしてしまうに違いないと太郎は考えたのだ。どうやら太郎の言葉をリリアは分かっているようだった。


「ねぇ、なんでリリアはそんなにちっちゃいの?」


 夜になると、リリアは太郎のベッドで一緒に眠った。リリアがいつも寝ているベッドと太郎のベッドは違うようで、リリアは楽しそうにピョンピョン跳ねて遊んだりしていた。

 リリアがいつも寝ているベッドはカプセル状で、ピョンピョン跳ねて遊ぶことはできないらしい。


「あたしね、太郎たちが地球って呼んでいるこの星からうんと離れた星に住んでるの。今は旅行でお父さんとお母さんと一緒にここに来ているんだよ。あたしたちの星ではね、子供はみんなあたしと同じくらいの大きさ。これが普通なの。それでね、大人になると地球の大人と同じ大きさくらいになるの。いいなぁ、太郎は。子供なのにもうこんなに大きくて」


 夜眠る前のひととき。

 太郎はリリアからたくさんの話を聞いた。

 今、地球にはリリアと同じように旅行に訪れている無数の宇宙船がやってきていること。リリアの星では食べ物は配給制で、栄養のバランスの取れた固形物を食べていること。各家には学習設備が備え付けられていて、地球でいう学校という施設は無いとのこと。その代わり、同年代の子どもたちが自由に連絡を取れるシステムがあり、会いたいと思えばいつでも誰にでも会えること。大人になるとみんな、星を守るための仕事につくことなど。


「この旅行もね、お父さんのお仕事が半分。地球という星の観察なんだって。うちの星を攻撃しようとしていないかどうかの確認。でも、今の所まだ大丈夫そうだよね。地球人同士でケンカばっかりしてるくらいだから」


 太郎もこの地球上で絶えず戦争が起こっていることは、学校で習ったりニュースで見たりして知っていた。リリアの星では戦争など起こっていないという。太郎は悲しくなって小さくうなずく。

 するとリリアが小さな手で太郎の頬に触れた。


「地球のケンカが終わってもう誰もケンカしなくなったら、あたしの星と地球が仲良くなれればいいね。そうしたらあたし、いつでも太郎に会いに来られるし」

「うん、そうだね。でもその前に靴を見つけないと。明日は学校が早く終わるから俺も一緒に探すよ。ねぇリリア、リリアの靴ってどんな形?どんな色?」


 リリアを潰してしまわないようにゆっくりと横を向き、太郎はリリアに聞いた。

 すると、リリアは少し困った顔をして答えた。


「うーん、よその星で靴脱いだこと無いからわからないんだけど、多分ね、ふたつがくっついて丸くなってると思うの。それでね、きれいな色に光ってると思う」


 リリアの言葉に、太郎の頭には、ジャンパーのホックにくっついた虹色の丸い石が思い浮かんだ。

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