ワタシは猫よ、吾輩だなんて言わないよ(事実は小説より奇なり②)

🗡🐺狼駄

第1話 私の名前はお空の白い雲

 私は白くてフワッフワッの猫。

 名前は『くう』って言うのよ。白い毛並みがお空の雲みたいだからってことで、ご主人の娘さんがこの名前にしてくれたの。


 ……どぅ、素敵な名前でしょ? だから吾輩は猫である名前は、まだない何て寂しいお話にはならないわ。


 くうちゃんとか、くうやま? とか、くうたろう!? 何て呼ばれることもあるわ。


 …………可愛い女の子なのに。


 私がこの家にやって来たのはじゅ……やだ、女の子が歳バレするようなことしたくないわね。


 確か雨が降っていた。

 とにかくひもじくてどうにかして欲しいと思った私は精一杯鳴いていたの。雨を凌げる木陰の下で。


 そしたらご主人の奥様が気づいてくれて私を家まで運んでくれた。濡れたくないから隠れていたわ。

 だから声は聞こえど姿が見えぬという感じだったのに一生懸命探してくれた。


 招かれた家、それはもう暖かくて大きな場所だった。


 要するのにこの頃は『名前はまだない』っていういわゆる野良猫。やせっぽっちで声も余り出なかった。


 今さら思い出したくもないのだけれど、どうやら私、お腹の中に蟲が居たみたいでね。

 まあ食べるものがなかったから取り合えず食べられそうなの食べていたからいけなかったのでしょうね。


 ご主人の奥様は私をわざわざ病院に連れて行ってくれたのよ。蟲をくだすのは大変でなかなか時間がかかったけれど、お陰さまで元気になれたわ。


 ただここには既に同居猫がいたの。やたら目が大きくてありがちなキジトラ猫ね。

 去勢された…………そう去勢ってことでコイツの性別は伝わるわよね?


 何かにつけて喧嘩をしてくるから、猫パンチでやり返してやったわ。

 ま、遊べる相手がいるって思ったら悪くはなかったわね。


 美味しいご飯も毎日食べられ、雨が降っても気にならない家の中……。

 外にいた時を思えばそれはそれは天国だった。


 でもね……こんな名前だったからなのか? それとも元々野良だったからなのか?

 ベランダから見える空とそこへやってくる鳥が気になって仕方がなかったの……。


 …………ある日、私は『間違い』を犯してしまった。

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