元奴隷のオレ、元奴隷の女の子と同じ屋根の下

野口マッハ剛(ごう)

第1話

 オレはマスターの呼びかけで目を覚ます。いつもの木造の天井が見える。頭が冴えるまでベッドの上で目をこするオレ。着ている服は上下が布のもので出来ている。


 マスターは何て言うか、全身が赤い。赤い頭髪、赤い眉毛、赤い瞳、赤い髭、赤い服装。とにかくマスターは赤い。


 オレは元奴隷である。ゴブリンたちに捕らえられていた人間の子ども。ゴブリンたちは野蛮だ。あの醜い見た目は行動にも表れる。そんなゴブリンの奴隷だったオレをマスターは買い取って保護してくれた。


 オレはマスターの元で暖かい食事や生活に安心している。ここはマスターたちの街。人族の街である。


 扉が開いた。マスターは誰かを呼びかけている。そこには奴隷と思われる女の子がボロボロで立っている。かろうじて。


 どうやら、マスターはゴブリンたちの奴隷をもう一人買い取って保護するようだ。


 元奴隷のオレは名前がない。たぶん、いま来た奴隷の女の子も名前がないだろう。


 元奴隷同士のオレたちはマスターに拾われて同じ屋根の下で暮らすことになる。

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