第127話 謝罪
あたしはリラに向き直ると、思いっきり頭を下げた。
「リラ、ごめん」
「えっ」
突然のあたしの行動にリラは驚いたように声を上げる。
「あんたがあたしの鞄に財布を仕込もうとしたアレ。あたしが全部仕組んでたの」
自分のしてしまったことを包み隠さず打ち明ける。
それはあたしとリラが友達になった日にできなかったこと。
自分を守るのはもうやめだ。
『しっかりと今までのこと謝って本音でぶつかってみなよ。友達ってそういうもんでしょ』
純がリラへ告げた言葉が頭を過ぎる。
本当にその通りだ。
今までのあたしは嫌われないように小賢しく立ち回ってばかりだった。
それは社会という側面から見れば正しいのかもしれない。
けれど、心から友達になりたいと思った人にいつまでもその態度を続けるのは良くなかったのだ。
「そっか」
あたしの独白を静かに聞いていたリラが呟く。
「クユリ、顔を上げなよ」
恐る恐る顔を上げてみると、そこには困ったような笑顔を浮かべているリラがいた。
「クユリ、サンキューな」
「へ?」
謝られることはあってもお礼を言われるようなことではない。
そんな思いが顔に出ていたのだろう。リラはあたしの顔を見てクスリと笑うと言葉を続ける。
「だって、ちゃんと本音でぶつかってきてくれたじゃん」
「えっ、いや、だって……」
「ウチだってクユリの事情知らずに酷いことたくさんしたんだから謝られることなんてないよ。だけど、そうやって本音を話してくれたのは本当に嬉しかった。だから、サンキューな」
「リラ……」
その一言に救われた気がした。
そして、こんな真っすぐな子が歪んでしまったことに胸が痛んだ。
「凛桜ちゃん! 良かったら今日は泊っていったらどうかしら?」
ちょうどいいタイミングでお母さんが笑顔でやってきた。
「お母さんには話をつけておくから」
「あ、ありがとうございます!」
ウィンクをするお母さんに、リラは目を輝かせる。
相変わらず、頼りになる自慢の母親だ。
それからお母さんはリラの家に電話をかけた。
いろいろ言われているだろうに、お母さんは終始笑顔を浮かべたまま対応していた。
たぶん、あれうまいことリラを預かってもいいかどうかの言質取ってるな……。
「クユリのお母さん、マジぱねぇ……」
「でしょ?」
お母さんの手腕にリラは感服している。あたしも将来はあんな人になりたいものだ。
しかし、そこで終わらないのがリラの母親だった。
「ひっ……」
着信音が鳴り響き、リラが悲鳴を上げる。
なるほど、リラを泊める言質を取られたから、直接リラを脅して自発的に帰るようにしたってわけね。
本当にやり方が卑劣で反吐が出る。
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