第4話 ハメ撮りあるけど見るか?

 まさかのセフレ。つまり、僕と英さんは将来ただの爛れた肉体関係を持つだけの仲になるということだ。


『ハメ撮りあるけど見るか?』

「見るか! 何を見せようとしてるんだよ、お前は!」


 ちょっと見たい気持ちがあったのは内緒である。


『じゃあ、ほれ。ゲーセンで遊んだときの写真』


 そう言ってクロは未来では当たり前に普及しているらしいスマートフォンを操作し、画面を見せてきた。

 そこには英さんとのツーショット写真が何枚もあった。

 未来の英さんは長かった髪をバッサリと切っており、アッシュパープルのインナーカラーが入った黒髪のショートウルフというさっぱりとした髪型になっていた。


「ショートウルフにするだけで随分と雰囲気違うね」

『あー、違う違う。これ単純に髪が痛んで千切れまくった結果だよ』

「えっ」

『まあ、ある程度俺が直してそれっぽくしてやったんだが、この長さが限界だったな』


 よく見てみれば未来の英さんの髪には艶がなくパサパサしていた。

 ピアスもバチバチに空いており、何というか……清純派美少女の堕ちた姿というイメージを抱いてしまった。いや、美人なのには変わりないんだけども。


「というか、携帯普通に使えるんだな……」

『死んだときに身に着けてた物は据え置きみてぇだ。おかげで無限にヤニ吸えて最高だぜ』


 そう言うとクロは徐にタバコに火をつけて一服しだした。

 幽霊で実体はないとはいえ、勝手に自分の部屋でタバコを吸っている姿は見ていて気持ちの良いものじゃない。


「僕の部屋で喫煙するなよ」

『地面があるところは須らく俺の灰皿だ』

「お前みたいなのがいたから世間は喫煙者への当たりがキツイんだろうなぁ」


 駐車場とかにバカみたいに捨てられている吸殻もこういうマナーのなってない奴がポイ捨てしていった結果なのだろう。非常に腹立たしい限りである。


「それで、未来の英さんはどんな仕事してたんだ?」

「ああ、コンカフェ嬢だ」

「コンカフェ? 婚活するカフェとか?」

「あー、この時代じゃコンカフェわからねぇのか。コンセプトカフェの略だ。メイドカフェのメイドだけじゃないバージョンって言えばわかるか?」


 クロ曰く、コンカフェとは特定のコンセプトを持ったカフェのことで、未来では幽霊カフェ、忍者カフェ、マーメイドカフェ、海賊カフェなどがあるらしい。

 日本の未来は明るいな。


『まあ、本人は定期的にアラサーでコンカフェ嬢やってていいのかって複雑そうな顔してたけどな。ちなみに、紅百合の働いてた店は魔法少女がコンセプトの店だ』

「未来の英さんも苦労してるんだなぁ……」

『あとこれ。店のイベントで制服姿の紅百合』

「キッ……」


 クロが見せてきた制服姿の英さん(アラサー)は想像以上にキツかった。

 さきほど見たばかりの制服姿で、美人であることに変わりないのに何故かキツさが拭えない。制服の素材が安っぽくてコスプレ感が強いからだろうか。


『ははっ、俺はそっちのが興奮するって言って、処分予定の衣装使ってホテルで着衣のままヤったけどな!』


 こいつ無敵かよ。


『それにしても、高校のときは猫被ってたって本当だったんだな』

「やっぱり、あれって演技なのか?」

『らしいぞ。昔から猫被って周りにいい顔ばっかしてたら疲れて病んだーってよく酒飲んでるときに愚痴ってた』


 どうやら、僕が思っていたよりも英さんの闇は深そうだ。

 未来では僕と爛れた肉体関係を築いているみたいだが、最低の人間になり下がった僕とそんな関係にある時点で英さんと関わっていいことはないだろう。


 僕はこんなどうしようもない未来ではなく、清く正しく生きて幸せな毎日を過ごしたいのだ。できることならば、英さんとは関わり合いになりたくない。

 心からそう思うのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る