第22話 その人を知りたければ 伍
「まあ、気にしないでおくれ、
そう言って
「……ほんと? 冗談なのよね? さっきの話。」
水仙が青蓮に
「……せ、青蓮? ねぇ? 嘘だったのよね?」
「水仙。私は生まれてこのかた、
水仙は青蓮の言葉を聞くと、絶望した様子で、すでに下がり切っていたと思われた肩が、さらに一段下がった気がした。
「ふふ、冗談さ。嘘をついたことはもちろん無いが、さしもの私でも冗談くらいは口にするよ。」
「ほ、ほんと?」
水仙は疑いを拭い切れない様子。それもそうだ。なぜなら。
「……嘘と冗談って、なにが違うんです?」
と、いうことだ。同じだろう。『優しくい嘘』でさえ嘘には違いないのに、なぜ冗談が『嘘では無い』と言るだろうか。いや、ない。
「違うさ。まず字が違う。」
「そういうことなんすですか!?」
「ふふっ、今のが『冗談』さ。」
……なるほど、と素直に納得はできない。し、したくない。
「『冗談』は『冗』……つまり、ムダな『談』話のこと。
「……そうですか。」
『冗談』に『嘘』が
『似て非なる』とはまさにこのことか。『冗談』と『嘘』、重なっている部分があるようで、その
「まあ、良いじゃないか~。冗談でも、嘘でも
「『なぜ』というところだよ、重要なのはね~。その『怒り』の源を知ることが、つまりは青蓮くんを知ることに繋がるわけだね~。」
「……そうですね。
俺も、俺について議論なされると思っていたのだが、それを切り捨てたのは紛れもなくこの青蓮である。
「『水仙くんのドジの後始末』と言ったね~。それは『なに』についての怒りなのか、ということだね~。『ドジ』に対する怒りかい~? 『水仙くんのドジ』? それとも『他人の後始末』?」
「そうですねぇ……。」
青蓮が再び眉を寄せて考え始めると、水仙は、不安そうに、しかし食い入るように彼女を見ていた。
「強いて言えば、最後のものでしょうか。」
「そうか~、そうだよね~。自分のお尻は自分で拭うのが『責任』というものだよね~。」
水仙は「うぐ」と潰されたカエルのように声を漏らした。
しかし、『強いて言えば』とわざわざ頭につけるくらいだから、やはり『水仙のドジの後始末』に怒りを覚える、というのが最も適当なのだろう。
「し、仕方ないじゃない……。あたしだって好きで巻き込んでんじゃないっての……。」
「まあ、水仙の不幸体質については情状酌量だが、私がそれによってストレスを与えられることは別問題だからね。」
「ごめんて!!!」
水仙は
「ふ~む。では、佐々田くんがドジをしたらどうだい? あるいは煤牛くんがしたら?」
先生は立て続けに質問を繰り出す。彼女は青蓮の感情の根っこを探るように、パターンで検証を試みているようだ。
「……とくに怒りは感じませんね。」
「ちょっと!?」
青蓮の回答に、テーブルを手で打ち鳴らしながら、再び吼える水仙。
「というより、夏瑪くんや煤牛くんがドジをして、さらには私に後始末を手伝わせているような
「なるほど~。」
……これは、俺たちが青蓮に評価されている、と思って良いのだろうか。テーブルに
煤牛が彼女に対して敬意を持っていたのは確かだが、褒められて嬉しくなるほどのものだとは思ってもみなかった。
俺も、
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